基本情報 平成25年度 春期 問47:テクノロジ系に関する問題
ソフトウェアの分析・設計技法の特徴のうち, データ中心分析・設計技法の特徴と して, 最も適切なものはどれか。
- a機能の詳細化の過程で, モジュールの独立性が高くなるようにプログラムを分割 していく。
- bシステムの開発後の仕様変更は, データ構造や手続を局所的に変更したり追加し たりすることによって, 比較的容易に実現できる。
- c対象業務領域のモデル化に当たって, 情報資源のデータ構造に着目する。正答
- dプログラムが最も効率よくアクセスできるようにデータ構造を設計する。
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答えは c です。
システム設計には大きく2つの考え方があります:
- データ中心:「データの構造から考える」。図書館の本棚を整理してから貸し出し方法を決める感覚
- プロセス中心:「業務の流れから考える」。仕事の手順を先に決める感覚
データ中心は、業務が変わってもデータ構造(本の並び)は安定しやすいので、長く使える設計に向いています。
👉 覚え方:「データ中心=情報資源の構造から設計」。
ほかの選択肢:a/b は機能・プロセス中心の話/d は性能優先の物理設計の話。
なぜこれが正解か
正解は c。データ中心アプローチ(DOA: Data Oriented Approach)は、企業の情報資源(データ)の構造を最重要視し、業務領域のモデル化においてデータ構造を起点にシステム設計を行う手法。データは業務手順より変化が緩やかという前提に基づく。
各選択肢の解説
- a 機能の詳細化でモジュール独立性を高めて分割 → 構造化分析・設計(プロセス中心)。
- b 仕様変更がデータ構造や手続の局所変更で容易に実現 → オブジェクト指向設計の特徴。
- c 情報資源のデータ構造に着目 → データ中心アプローチ(正解)。
- d プログラムが効率よくアクセスできるデータ構造 → 性能優先のプログラム中心設計。
覚え方・ひっかけ注意
設計手法の3分類「プロセス中心(業務の流れ重視・古典)、データ中心(情報資源重視・1980年代に主流)、オブジェクト指向(データと振る舞いをカプセル化・1990年代以降)」。データ中心の代表記法はERD(実体関連図)、データ正規化、データディクショナリ。プロセス中心はDFD(データフロー図)、HIPO、構造化チャート。
理論的背景
データ中心アプローチ(DOA)は1980年代に確立された設計思想で、Peter Chen のER モデル(1976)が基盤理論。データの構造は業務プロセスより安定的という観察から、安定なデータ構造を中核にシステムを構築することで、業務変更時の柔軟性・データ統合性・冗長性排除を実現する。設計手順は (1) 業務調査 → (2) 概念ER モデリング → (3) 論理データモデル(正規化) → (4) 物理データベース設計 → (5) 業務処理設計 の順で、データから機能を導出する。
実務での使われ方
DOAは基幹系業務システム(人事・会計・販売管理・在庫管理)で長年王道。データウェアハウス(DWH)構築、マスタデータ管理(MDM)、エンタープライズデータモデル(EDM)整備の際は必須アプローチ。正規化(1NF〜5NF、BCNF)でデータ重複を排除し、データ品質と一貫性を保証。近年はマイクロサービスアーキテクチャでサービスごとにデータベース分離(Database per Service)する設計もあるが、横断的なデータ統合にはDOA思想が引き継がれる。データレイク・データメッシュなど新しいデータ基盤も、DOAの拡張形態と位置づけられる。
試験での位置づけ
FE・APソフトウェア設計分野で頻出。設計手法分類、ER モデリング、データ正規化、構造化分析・設計(DFD・DD・PSPEC)、オブジェクト指向設計(クラス図・ユースケース図)と関連付けて出題。応用情報・データベーススペシャリストでは詳細な正規化理論(関数従属性、推移従属性、多値従属性)、ER図からの論理スキーマ導出、UMLによるオブジェクト指向設計まで踏み込む。
選択肢の発展補足
構造化分析(a)はDeMarco・Yourdon らが提唱し、トップダウンに機能を分解する手法。「機能の独立性」「結合度・凝集度」概念が中心で、Constantine・Yourdon の設計原則(結合度7段階、凝集度7段階)が古典。オブジェクト指向(b)はSmalltalk・C++・Javaの普及で90年代に主流化、データと振る舞いをカプセル化し、継承・多態性で再利用性を高める。Tom DeMarco はDFDの普及者、James Martin は情報工学(Information Engineering)でDOAを体系化、Grady Booch・James Rumbaugh・Ivar Jacobson はUML・RUPでOO設計を確立、と歴史的人物の関連も応用情報以上では問われる。設計手法は対立するものではなく、現代では用途に応じて使い分けるのが実務的アプローチ。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 基本情報技術者試験 平成25年度 春期 問47/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。