行政書士 基礎法学 問18:法律用語・対抗・期間計算
法律用語に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア「対抗する」とは、自己の権利・法律効果を第三者に主張することをいい、民法177条における「第三者に対抗することができない」とは、登記をしなければ不動産の物権変動を第三者に主張することができないことを意味する。
- イ「期間」の計算方法について、民法は初日不算入の原則を採用しており、「今日から10日間」という場合、今日(初日)は算入しないで翌日から起算して10日目の終了をもって期間が満了する。
- ウ「期間の末日が日曜日・祝日にあたる場合」は、その日に期間が満了するため、休日だからといって次の平日まで延長されることはない。正答
- エ「既判力」とは、確定した判決の判断(主文中の判断)が、後の訴訟において当事者・裁判所を拘束する効力をいう。
- オ「不服申立て前置主義」とは、行政事件訴訟(取消訴訟等)を提起する前に、あらかじめ行政機関への不服申立て(審査請求等)を行うことを要求する制度のことをいう。
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ウは「期間の末日が日曜日・祝日にあたる場合は延長されない」としていますが、これは誤りです。民法第142条は「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了する」と定めています(一般的な解釈として休日の翌日に満了するとされています)。アは対抗の説明として正確です。イは初日不算入(民法140条)の説明として正確です(ただし午前0時から始まる場合は初日算入・同条但書)。エは既判力の定義として正確です。オは不服申立て前置主義の説明として正確です(行訴法8条参照)。
ウが誤りです。民法第142条は「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了する」と定めています。この規定は法律行為・取引に関する期間(私法上の期間)について、末日が休日の場合に翌日まで期間を延長することを認めており(実務上は「その翌日に満了する」という趣旨で広く適用されています)、「延長されない」とするウは誤りです。なお、行政法の分野でも、行政不服審査法18条の審査請求期間(処分を知った日の翌日から3か月)の末日が休日の場合には翌日に期間が満了するという解釈が取られます。アは民法177条の「対抗」の意義として正確です。対抗(対抗要件)は、有効に成立した権利変動を「第三者に主張できるか」という効力の問題であり、登記(177条)・引渡し(178条)などが対抗要件となります。イは民法140条本文「日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は算入しない」の正確な要約です(但書:初日が午前零時から始まる場合は算入)。エは既判力の定義として正確です。確定判決の主文(「Xの請求を認容する」等)における判断は既判力を持ち、同一事件について再度の訴訟提起が遮断されます(一事不再理)。オは不服申立て前置主義の説明として正確です(行訴法8条1項が原則として審査請求前置を定めない一方、個別法で前置を要求する場合がある)。
【理論的背景:民法の期間計算ルールの体系】
民法の期間計算は、第138条〜第143条が規定する統一的なルールに基づきます。民法の期間計算ルールは私法上の法律行為・権利義務に関する期間に適用されますが、公法(行政法・訴訟法等)の期間計算にも類推・準用されることが多く、基礎法学として重要な知識です。期間計算の基本は①初日不算入の原則(140条本文)と②末日の休日延長(142条)であり、この二つのルールが期間の始期と終期を決定します。
【各選択肢の正誤と論拠】
アは「対抗」の意義として正確です。民法177条「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」における「対抗する」は、「自己の権利変動の効力を第三者に主張(承認)させる」ことを意味します。登記なしでは物権変動の効力を第三者に主張できないため、登記は「物権変動の対抗要件」と呼ばれます。イは民法140条の初日不算入原則を正確に説明しています。「今日から10日間」という場合、今日(初日)を算入せず翌日(1日目)から起算して10日目の終了時(午後12時)に期間が満了します。ただし民法140条但書「その期間が午前零時から始まるときは、前項の規定にかかわらず、初日から起算する」という例外があります。訴訟実務では訴状の提出・申立ての期間計算でこの原則が基本となります。ウが誤りです。民法142条の正確な内容は「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間はその翌日に満了する」です。この規定の趣旨は、末日が休日の場合に当事者が不利益を受けないよう翌日まで期間を延長することにあります。「延長されない」とするウは142条に正面から反します。行政実務・訴訟実務でも、審査請求期間・出訴期間の末日が休日の場合は翌日(次の平日)まで延長されます。エは既判力の定義として正確です。既判力(res judicata)は確定判決の主文中の判断が後の訴訟で争えなくなる効力です。既判力が及ぶ範囲は原則として「主文に包含するもの」(民事訴訟法114条1項)であり、判決理由中の判断には既判力は生じません。オは不服申立て前置主義の説明として正確です。行政事件訴訟法8条1項は「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに処分の取消しの訴えを提起することを妨げない」と定め、原則として審査請求前置を不要としていますが、個別法(税務・社会保険等)で審査請求前置を定めることが認められています(8条1項但書)。
【期間計算の実践的応用:行政法・訴訟実務との連動】
民法の期間計算ルールは行政法・民事訴訟法での期間計算に広く準用されます。行政不服審査法18条の「処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内」という審査請求期間は、初日不算入原則(「知った日の翌日から」という文言自体が初日不算入を表現)と末日休日延長が適用されます。行政事件訴訟法14条の「処分があったことを知った日から6か月以内」という出訴期間についても同様です。民事訴訟法96条は期間の計算について民法の規定を準用すると定めており、訴訟行為の期間(上訴期間・答弁書提出期限等)にも初日不算入・末日休日延長が適用されます。実務上、期間計算の誤りは権利の喪失(審査請求期間を過ぎた・出訴期間を過ぎた)に直結するため、正確な理解が実践的に重要です。
【試験での位置づけと学習ポイント】
期間計算に関する問題では、①初日不算入(翌日から起算)・②末日休日は翌日満了(延長される)という二つのルールを確実に記憶してください。行政書士試験では、審査請求期間(3か月)・出訴期間(6か月)の計算問題にこれらのルールが直接使われます。「末日が休日でも延長されない」という選択肢は民法142条から即座に否定できます。
【根拠条文】
民法 第140条(期間の起算・初日不算入)
民法 第142条(期間の末日が休日の場合の延長)
民法 第177条(不動産物権変動の対抗要件・登記)
行政事件訴訟法 第8条第1項(審査請求前置主義の原則と例外)
【補足】
本問は民法の期間計算規定(初日不算入・末日休日延長)と「対抗」「既判力」等の法律用語の正確な定義を問うもの。「末日が休日でも延長されない」は民法142条と矛盾する誤りの典型。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第140条(初日不算入)・第142条(期間の末日が休日の場合の特則)。行政事件訴訟法 第8条(不服申立て前置)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。