基礎法学20法思想・自然法と実定法・大陸法系と英米法系

行政書士 基礎法学 問20:法思想・自然法と実定法・大陸法系と英米法系

法思想および法系(大陸法系・英米法系)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 自然法とは、人間の理性・本性・神の意思などに基づき、制定法に先立つ普遍的・永遠的な法の存在を想定する思想であり、実定法が自然法に反する場合でも、自然法には法としての効力はない。
  • 実定法主義(法実証主義)とは、実定法の内容が正義に反する場合にはその実定法は当然に法としての効力を失うとする立場であり、自然法論とは法の有効性の判断基準を共有しない点にのみ違いがある。
  • 大陸法系(civil law system)は、ローマ法の継受を基礎とし、成文法典(民法典・刑法典等)による体系的立法を重視する法体系であり、フランス・ドイツが代表的な国として挙げられる。日本も大陸法系に属する。正答
  • 英米法系(common law system)では、成文法(制定法)を全く持たず、判例法(コモン・ロー)のみによって法律関係が規律されている。
  • コモン・ローとは、英米法系諸国において議会が制定した成文法(statute law)の総称をいい、判例によって形成された法(判例法)はコモン・ローには含まれない。
正答:大陸法系(civil law system)は、ローマ法の継受を基礎とし、成文法典(民法典・刑法典等)による体系的立法を重視する法体系であり、フランス・ドイツが代表的な国として挙げられる。日本も大陸法系に属する。

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法には、人間の理性・本性に基づく普遍的な自然法と、権限ある機関が制定した実定法があります。また世界の法体系は大陸法系(成文法主義・フランス・ドイツ・日本等)と英米法系(判例法主義・イギリス・アメリカ等)に大別されます。ウは大陸法系の特徴と日本の帰属を正確に述べており正答です。アは「自然法には法としての効力はない」という自然法論者の立場に反する断定が誤りです(自然法論者は自然法を実定法より上位の法と考えます)。イは「実定法主義では内容が正義に反する実定法は当然に効力を失う」とする点が誤りで、法実証主義はむしろ内容の正義・不正義は法の有効性に影響しないとする立場です。エは英米法系が成文法を「全く持たない」とする点が誤りです(制定法・成文法も存在します)。オは「コモン・ローとは成文法の総称であり判例法は含まない」とする点が誤りで、コモン・ローはまさに判例によって形成された法を指します。よって正答はウのみです。

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ウが正答です。大陸法系(civil law)はローマ法(ユスティニアヌス帝法典)とその継受を基盤とし、法律関係を包括的に規律する成文法典(民法典・刑法典・商法典等)による体系化を特徴とします。フランス(ナポレオン法典・1804年)・ドイツ(BGB・1900年)が代表国であり、日本も明治期にフランス法・ドイツ法を継受した結果、大陸法系に属しています。アは誤りです。自然法思想は、実定法が自然法に反する場合には「実定法の効力を否定しうる」という命題を核心とします(ナチス法への批判として「悪法は法ではない」という自然法論が復活・ラートブルッフ転換)。「自然法には法としての効力はない」というのは自然法論者の立場と正反対です。イは誤りです。法実証主義(legal positivism)は、法の有効性を制定の形式的要件(権限ある機関による制定・手続の適正)で判断し、実定法の内容の正義・不正義は法の有効性に影響しないとする立場です。「内容が正義に反する実定法は当然に効力を失う」とするのはむしろ自然法論(悪法は法ではない)の立場であり、イは法実証主義と自然法論を取り違えた誤りです。エは英米法系が「成文法を全く持たない」という断定が誤りです。英米法系でも議会立法(成文法・制定法・statute law)は存在し、現代では増加傾向にあります。オは誤りです。コモン・ローはイングランド国王裁判所が蓄積した判例によって形成された法であり、議会制定法(statute law)の総称ではありません。判例法をコモン・ローから除外するオの記述はコモン・ローの定義そのものを取り違えています。よって本問の正答はウのみです。

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【理論的背景:自然法論と法実証主義の対立と統合】

法哲学上の根本的な対立の一つは「法の有効性の根拠は何か」という問いをめぐる「自然法論」と「法実証主義(実定法主義)」の対立です。自然法論(natural law theory)は、法の有効性の根拠を「理性・正義・自然・神の意思」など超実定的な基準に求め、実定法がこれに反する場合は「法としての効力を否定しうる」とします。グロティウス・ロック・カントらがこの立場を代表します。法実証主義(legal positivism)は、法の有効性を「権限ある機関による制定・手続の適正」という形式的基準のみで判断し、内容の正義・不正義は法の有効性に影響しないとします(ベンサム・オースティン・ケルゼン・ハートが代表)。20世紀の大量殺戮・独裁政権の合法的法律への対応として、「内容が著しく不正義な法律は法ではない(ラートブルッフ定式)」という命題が提唱され、自然法論が再評価されました。現代の法哲学は両立場を統合する試みが進んでいます。

【各選択肢の正誤と論拠】

アは自然法論の立場に反する断定を含み誤りです。「自然法には法としての効力はない」とするのは法実証主義(実定法のみが法)の立場に近い発言であり、自然法論者はまさに「制定法に先立つ普遍的な自然法こそが本来の法であり、制定法はこれに適合する限りで効力を持つ」と考えます。イは誤りです。法実証主義(legal positivism)の核心は「法の有効性は制定の形式的要件で決まり、内容の正義・不正義は法の有効性に影響しない」という点にあります(ベンサム・オースティン・ケルゼン・ハート)。「内容が正義に反する実定法は当然に効力を失う」とするのは、むしろ自然法論(ラートブルッフ定式「著しく不正義な法は法ではない」)の立場であり、イは両者を取り違えています。ウが正答です。大陸法系の特徴は①ローマ法の継受、②体系的成文法典(民法典・刑法典・商法典等)による包括的立法、③法学者(学説)の法形成への大きな貢献(学説の法源性)、④国家主導の法統一という点にあります。日本の民法・刑法・商法はドイツ・フランス法典の影響を強く受けており、大陸法系に分類されます。エは英米法系が成文法を「全く持たない」とする誤りが含まれます。英米法系の法源は①コモン・ロー(判例法)②エクイティ(衡平法)③制定法(statute law / Acts of Parliament)の三つから構成されます。現代では英国・米国ともに制定法の分量が増加しており(会社法・刑事法・消費者法等の成文化が進んでいる)、「全く成文法を持たない」という断定は完全に誤りです。オは誤りです。コモン・ロー(common law)は12世紀以降のイングランド国王裁判所(コモン・プリーズ・王座部・財務部等)が蓄積した判例を通じて形成された法体系であり、議会が制定した成文法(statute law)の総称ではありません。判例先例拘束原則(stare decisis)によって上位裁判所の判例が下位裁判所を拘束します。エクイティ(衡平法・大法官裁判所が形成)とともに英米法系の主要な判例法を構成し、成文法(statute law)と並ぶ法源です。したがって「コモン・ローは成文法の総称であり判例法は含まない」とするオは、コモン・ローの定義を正反対に取り違えた誤りです。本問の正答はウのみです。

【大陸法系と英米法系の実践的差異】

二つの法系の最も重要な実践的差異は法源の重心にあります。大陸法系では成文法典が主要法源であり、判例は先例としての法的拘束力(stare decisis)を持たないのが建前です(日本でも形式的には判例は法源とされませんが実質的な拘束力を持ちます)。英米法系では判例(コモン・ロー)が主要法源であり、上位裁判所の判例は下位裁判所を法的に拘束します。法教育・法曹養成の方法も異なり、大陸法系は体系的な法学理論の習得(大学での法学教育が中心)を重視し、英米法系はケース・メソッド(判例研究・ロースクール教育)を中心とします。行政書士試験では、日本が大陸法系に属すること・コモン・ローの意義・自然法と実定法の区別が出題ポイントです。

【試験での位置づけと学習ポイント】

法思想・法系の問題では次の3点を押さえてください。①自然法論:実定法より上位の普遍的法が存在し、実定法が自然法に反する場合はその効力を否定しうる(ラートブルッフ定式)。②法実証主義:実定法の有効性は内容の正義性ではなく形式的要件で決まる。③大陸法系(フランス・ドイツ・日本等)は成文法典主義、英米法系(英・米等)は判例法主義を特徴とするが、英米法系でも制定法は存在する(「全く成文法がない」は誤り)。

【根拠条文】

(本問は法思想・法系の分類に関するものであり、特定の条文を根拠としない)

【参照】

法の適用に関する通則法 第3条(慣習の法源性・法系問題との連動)

【補足】

本問は自然法論・法実証主義・大陸法系・英米法系(コモン・ロー)の基本概念の正確な理解を問うもの。法実証主義は「内容の正義性は法の有効性に影響しない」とする立場(イの取り違えに注意)。コモン・ローは判例によって形成された法であり成文法(statute law)の総称ではない(オの取り違えに注意)。英米法系が「成文法を全く持たない」も典型的な誤り。日本が大陸法系に属することは確実な知識として押さえる。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 法学通説(法思想・法系の分類)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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