問題
食中毒に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正しいのはオです。ボツリヌス菌は缶詰など酸素がない(嫌気性)環境で増殖し、強力な神経毒(ボツリヌス毒素)を産生します。この毒素は熱に弱く、80℃で20分(100℃なら1〜2分)の加熱で不活化できます(菌の芽胞は耐熱性である点は区別が必要)。
各誤りの要点: ア→黄色ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシン)は耐熱性が高く(100℃・20分の加熱でも完全には失活しない)、通常の加熱調理では活性を失わないので加熱で予防できない。イ→サルモネラは感染型(菌そのものが原因)。ウ→ノロウイルスはアルコールに抵抗性があり、次亜塩素酸ナトリウムが有効。エ→腸炎ビブリオは淡水魚ではなく海産魚介類(海水魚・貝など)が原因。
細菌性食中毒の感染型と毒素型の分類:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 黄色ブドウ球菌は毒素型(正しい)ですが、そのエンテロトキシンは耐熱性が高く(100℃・20分の加熱によっても完全には失活しない)、通常の加熱調理では活性を失いません。黄色ブドウ球菌自体の耐熱性は高くないため、加熱で菌が死んでも既に産生された毒素は残ります。「熱に不安定」が誤りです。
- イ(誤): サルモネラ菌は感染型食中毒です。汚染された食品を摂取してから12〜48時間の潜伏期を経て発症します。「毒素型」「潜伏期間が数時間と短い」の両方が誤りです。
- ウ(誤): 厚生労働省のQ&Aは、消毒用エタノールによる手指消毒は石けんと流水を用いた手洗いの代用にはならず、手洗いの補助として用いるものとしています。ノロウイルスを完全に失活化する方法としては次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸水、加熱による処理が挙げられています。アルコール消毒が「最も効果的」は誤りです。
- エ(誤): 腸炎ビブリオは生育に3%程度の塩分を必要とする海洋性の好塩性細菌で、海水及び汽水域に生息し、魚介類を汚染してヒトが魚介類を喫食することで感染します。「淡水魚」は誤りです。
- オ(正): ボツリヌス菌(偏性嫌気性・芽胞形成菌)が産生するボツリヌス毒素は、神経‐筋接合部でアセチルコリンの放出を抑制して神経麻痺を起こす神経毒です。毒素は易熱性で80℃・20分または100℃・1〜2分の加熱で不活化されますが、芽胞は耐熱性で、なかには非常に強い加熱条件を必要とするものもあります。
【理論的背景】
細菌性食中毒は発症機序から「感染型」「毒素型」「生体内毒素型(中間型)」に分類されます。この分類は潜伏期間・発症機序・治療方針・予防策が異なるため、職場の食中毒対策を設計する上で重要な基礎知識です。
感染型: 菌そのものを摂取し、腸管内で増殖・侵入することで発症。潜伏期間は比較的長い(数時間〜数日)。代表例: サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌(O157)。
毒素型: 食品中で菌が産生した毒素を摂取することで発症。潜伏期間が短い(数時間以内)ことが多い。代表例: 黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌(ただし毒素の性状は両者で大きく異なる)。
ノロウイルスはウイルス性食中毒であり細菌性とは別カテゴリーですが、職場の食中毒対策(特に集団給食・食品取扱い)では最も重要な病原体の一つです。
【実務・条文構造】
主要食中毒原因菌の特徴比較(試験頻出事項):
| 菌・ウイルス | 種別 | 主な原因食品 | 潜伏期間 | 特徴的な性質 |
|---|---|---|---|---|
| 黄色ブドウ球菌 | 毒素型 | にぎりめし・寿司・調理加工品・菓子類 | 0.5〜6時間(平均3時間) | 毒素は耐熱性(100℃20分でも完全には失活しない) |
| サルモネラ | 感染型 | 鶏肉・鶏卵等 | 12〜48時間 | 乾燥に強い |
| カンピロバクター | 感染型 | 鶏肉・鶏レバー・井戸水 | 2〜7日 | 数100個程度の少ない菌量で感染 |
| 腸炎ビブリオ | 感染型 | 海産魚介類 | 12時間前後(6〜24時間) | 好塩性(生育に3%程度の塩分が必要) |
| O157 | 感染型 | 牛肉等 | おおよそ3〜8日 | ベロ毒素・溶血性尿毒症症候群(HUS)のリスク・75℃1分間以上の加熱で死滅 |
| ボツリヌス | 毒素型 | ビン詰・缶詰・容器包装詰め食品(特に自家製) | 一般に8〜36時間 | 偏性嫌気性・神経毒・毒素は加熱不活化可 |
| ノロウイルス | ウイルス性 | 二枚貝・感染した食品取扱者を介して汚染された食品 | 24〜48時間 | アルコールは手洗いの代用にならない・次亜塩素酸ナトリウムが有効 |
ノロウイルス対策(厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」):
- 手洗い: 石けんと流水(温水)で十分に行う。石けん自体にウイルスを直接失活化する効果はないが、手の脂肪等の汚れを落としてウイルスを剥がれやすくする。消毒用エタノールは手洗いの代用にはならない
- 調理台・調理器具: 洗剤で十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)等で浸すように拭く
- 加熱: 汚染のおそれのある二枚貝などは中心部が85〜90℃で90秒以上の加熱が望まれる
- ノロウイルスは少ないウイルス量で感染するため、ごくわずかなふん便や吐ぶつが付着した食品でも多くのヒトを発症させるとされる
ボツリヌス毒素vs菌体(芽胞)の耐熱性:
- 毒素: 80℃で20分又は100℃で1〜2分の加熱で不活化(易熱性)
- 芽胞: 耐熱性。Ⅰ群の芽胞のように非常に強い加熱条件を必要とするものもある
- ボツリヌス食中毒のほとんどは、原材料が芽胞に汚染された自家製食品によって起きている
【試験での位置づけ】
食中毒問題では「感染型vs毒素型の分類」「各菌の原因食品(腸炎ビブリオ=海水魚・海産魚介類/サルモネラ=卵・食肉等)」「黄色ブドウ球菌の毒素耐熱性(加熱で予防できない)」「ノロウイルスのアルコール消毒抵抗性」「ボツリヌスの嫌気性・毒素の熱不安定性」が最頻出です。腸炎ビブリオ「淡水魚」という誤りは典型的な選択肢です。試験では5〜7種類の菌・ウイルスをほぼすべて覚えておく必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: エンテロトキシンの耐熱性は実務的に重要です。「十分に加熱した」と思っても、それまでに黄色ブドウ球菌が増殖・毒素産生していた場合は食中毒が防げません。予防は、食品中でエンテロトキシンを産生させないよう、黄色ブドウ球菌による食品の汚染や食品中での増殖を防ぐことが中心です。手指等の傷口の化膿巣には本菌が多量に存在するため、食品取扱者を介した汚染に注意します。
- イ: サルモネラ属菌は乾燥に強く環境中での生存率が高いため、食品取扱施設等では二次汚染が起こりやすいとされています。鶏肉や鶏卵が代表的な原因食品です。
- ウ: ノロウイルスは少ないウイルス量で感染するため、ごくわずかなふん便や吐ぶつが付着した食品でも多くのヒトを発症させるとされます。食中毒では、ウイルスに感染した食品取扱者を介して汚染された食品が原因となる事例が多く、食品取扱者の健康管理と石けん・流水による手洗いが重要です。
- エ: 腸炎ビブリオは増殖の速度が極めて速く(最適条件下では10分以内に分裂)、水温が15℃以上で活発に活動するため、我が国では夏場によく分離されます。予防対策として、魚介類を洗浄する場合は清潔な水や海水を使用すること、生鮮魚介類との接触による他の食材への二次汚染を避けること、調理時は十分加熱することなどが挙げられています。
- オ: ボツリヌス毒素による神経麻痺は眼症状・嚥下障害から四肢の麻痺へと進み、呼吸困難に陥って死に至ることがあります。乳児ボツリヌス症の予防として、1歳未満の乳児にはハチミツやハチミツ入りの食品等を与えないこととされています。
【根拠】食品安全委員会「ボツリヌス症(ファクトシート)」・「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」・「黄色ブドウ球菌の概要」・「腸炎ビブリオの概要」・「生鮮魚介類における腸炎ビブリオ(リスクプロファイル)」・「鶏肉におけるサルモネラ属菌(リスクプロファイル)」・「カンピロバクター(ファクトシート)」、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」・「腸管出血性大腸菌Q&A」。
【補足】黄色ブドウ球菌の毒素は耐熱(100℃20分でも完全には失活しない)→加熱で予防不可。ノロウイルスはアルコール消毒に抵抗性→次亜塩素酸ナトリウムが有効。腸炎ビブリオの原因は「海産魚介類」(淡水魚ではない)。
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 食品安全委員会「ボツリヌス症(ファクトシート)」(最終更新日 令和3年3月30日)・「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」・「腸炎ビブリオの概要」・「鶏肉におけるサルモネラ属菌(リスクプロファイル)」、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

