労働衛生(有害業務以外)2食中毒・感染症

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問2:食中毒・感染症

食中毒に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 黄色ブドウ球菌食中毒は、菌が食品中で産生する毒素(エンテロトキシン)が原因であり、毒素型食中毒に分類される。毒素は熱に不安定であるため、食品を十分に加熱することで予防できる。
  • サルモネラ菌による食中毒は、毒素型食中毒であり、菌が産生した毒素を摂取することで発症するため、潜伏期間が数時間と短いのが特徴である。
  • ノロウイルスによる食中毒は、エタノール(アルコール)消毒により不活化することができるため、アルコール製剤の手指消毒が最も効果的な対策である。
  • 腸炎ビブリオによる食中毒は、主に淡水魚の生食によって発症し、潜伏期間は12〜24時間程度である。
  • ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素は、神経毒として知られ、缶詰・びん詰・真空パック食品など酸素が少ない環境で増殖した菌が毒素を産生する。毒素自体は加熱(80℃ 20分以上)で不活化できる。正答
正答:ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素は、神経毒として知られ、缶詰・びん詰・真空パック食品など酸素が少ない環境で増殖した菌が毒素を産生する。毒素自体は加熱(80℃ 20分以上)で不活化できる。

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正しいのはオです。ボツリヌス菌は缶詰など酸素がない(嫌気性)環境で増殖し、強力な神経毒(ボツリヌス毒素)を産生します。この毒素は熱に弱く、80℃以上で20分以上加熱すれば不活化できます(菌自体の芽胞は耐熱性が高い点は区別が必要)。

各誤りの要点: ア→黄色ブドウ球菌の毒素(エンテロトキシン)は熱に安定(100℃・30分でも壊れない)なので加熱で予防できない。イ→サルモネラは感染型(菌そのものが原因)。ウ→ノロウイルスはアルコールに抵抗性があり、次亜塩素酸ナトリウムが有効。エ→腸炎ビブリオは淡水魚ではなく海産魚介類(海水魚・貝など)が原因。

標準試験対策の基準レベル

細菌性食中毒の感染型と毒素型の分類:

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 黄色ブドウ球菌は毒素型(正しい)ですが、そのエンテロトキシンは熱安定性が高く(100℃・30分加熱でも不活化しない)、加熱では予防できません。食品を加熱して菌を死滅させても既に産生された毒素は残存します。「熱に不安定」が誤りです。
  • イ(誤): サルモネラ菌は感染型食中毒です。菌が腸管内で増殖・侵入することで発症するため、潜伏期間は比較的長め(8〜48時間程度)です。「毒素型」「潜伏期間が数時間と短い」の両方が誤りです。
  • ウ(誤): ノロウイルスはアルコール消毒に抵抗性があります。最も効果的な消毒は次亜塩素酸ナトリウム(200〜1000ppm)です。アルコール消毒が「最も効果的」は誤りです(ある程度の効果はあるが十分ではない)。
  • エ(誤): 腸炎ビブリオは海水中に生息する菌であり、主に魚介類(海産魚・貝・エビ等)の生食で発症します。「淡水魚」は誤りです。また好塩性(塩分を好む)が特徴で、真水での洗浄が予防に有効です。
  • オ(正): ボツリヌス菌(嫌気性・芽胞形成菌)が産生するボツリヌス毒素は神経毒(筋弛緩作用)として作用します。毒素は80℃ 20分以上で不活化できますが、芽胞は耐熱性が高いため同条件では死滅しません。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

細菌性食中毒は発症機序から「感染型」「毒素型」「生体内毒素型(中間型)」に分類されます。この分類は潜伏期間・発症機序・治療方針・予防策が異なるため、職場の食中毒対策を設計する上で重要な基礎知識です。

感染型: 菌そのものを摂取し、腸管内で増殖・侵入することで発症。潜伏期間は比較的長い(数時間〜数日)。代表例: サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌(O157)。

毒素型: 食品中で菌が産生した毒素を摂取することで発症。潜伏期間が短い(数時間以内)ことが多い。代表例: 黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌(ただし毒素の性状は両者で大きく異なる)。

ノロウイルスはウイルス性食中毒であり細菌性とは別カテゴリーですが、職場の食中毒対策(特に集団給食・食品取扱い)では最も重要な病原体の一つです。

【実務・条文構造】

主要食中毒原因菌の特徴比較(試験頻出事項):

| 菌・ウイルス | 種別 | 主な原因食品 | 潜伏期間 | 特徴的な性質 |

|---|---|---|---|---|

| 黄色ブドウ球菌 | 毒素型 | おにぎり・弁当 | 1〜5時間 | 毒素は耐熱性(100℃30分でも残存)|

| サルモネラ | 感染型 | 卵・食肉 | 8〜48時間 | 乾燥に強い |

| カンピロバクター | 感染型 | 鶏肉 | 1〜7日 | 少量菌で発症・75℃1分で死滅 |

| 腸炎ビブリオ | 感染型 | 海産魚介類(海水魚) | 12〜24時間 | 好塩性・真水洗浄で予防 |

| O157 | 感染型 | 牛肉・野菜 | 3〜8日 | 少量感染・ベロ毒素・溶血性尿毒症症候群(HUS)のリスク |

| ボツリヌス | 毒素型 | 缶詰・真空パック | 12〜36時間 | 嫌気性・神経毒・毒素は加熱不活化可 |

| ノロウイルス | ウイルス性 | 二枚貝・感染者調理食品 | 24〜48時間 | アルコール消毒抵抗性・次亜塩素酸ナトリウムが有効 |

ノロウイルス対策の標準手順(厚生労働省指針):

  • 手洗い: 石けんと流水による十分な手洗い(アルコールだけに頼らない)
  • 消毒: 次亜塩素酸ナトリウム(0.02〜0.1%)を使用
  • 嘔吐物処理: ガウン・マスク・手袋を着用し、次亜塩素酸ナトリウムで処理した後廃棄
  • 乾燥・耐熱性: 乾燥に強く・85〜90℃ 90秒以上の加熱で不活化

ボツリヌス毒素vs菌体(芽胞)の耐熱性:

  • 毒素: 80℃ 20分以上で不活化(比較的熱に弱い毒素)
  • 芽胞: 100℃ 数時間でも死滅しない高耐熱性(家庭での缶詰製造が危険な理由)
  • このギャップが「食品を加熱しても安全とは限らない」食中毒特有の難しさです

【試験での位置づけ】

食中毒問題では「感染型vs毒素型の分類」「各菌の原因食品(腸炎ビブリオ=海水魚・海産魚介類/サルモネラ=卵・食肉等)」「黄色ブドウ球菌の毒素耐熱性(加熱で予防できない)」「ノロウイルスのアルコール消毒抵抗性」「ボツリヌスの嫌気性・毒素の熱不安定性」が最頻出です。腸炎ビブリオ「淡水魚」という誤りは典型的な選択肢です。試験では5〜7種類の菌・ウイルスをほぼすべて覚えておく必要があります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: エンテロトキシンの耐熱性は実務的に重要。食堂・仕出し弁当業者が「十分に加熱した」と思っても、製造中に黄色ブドウ球菌が増殖・毒素産生していた場合は食中毒が防げません。食品の低温管理(増殖を防ぐこと)と手指衛生(菌の汚染を防ぐこと)が根本的対策です。
  • イ: サルモネラの潜伏期間(8〜48時間)は腸炎ビブリオ(12〜24時間)と近いため混同されます。サルモネラは卵・食肉(特に鶏)が主な原因食品であり、爬虫類(ペットのカメ・トカゲ)の保有菌としても知られています。
  • ウ: ノロウイルスの感染力は非常に強く、少量のウイルスでも発症します(感染量: 10〜100個程度)。アルコール消毒が完全に無効ではありませんが、十分な効果が得られないため、石けんによる物理的な手洗いと次亜塩素酸ナトリウムを組み合わせることが必須です。
  • エ: 腸炎ビブリオの好塩性(3〜4%の食塩濃度で最もよく増殖)は重要な特徴。淡水(真水)での洗浄が有効な対策となります。また増殖速度が速い(夏場は特に注意)ことも特徴です。
  • オ: ボツリヌス食中毒は国内では比較的まれですが、発症すると神経筋接合部での神経伝達ブロックにより筋弛緩・麻痺が生じ、呼吸筋麻痺で死亡することがあります。乳児ボツリヌス症(生後1年未満の乳児へのはちみつ禁止)も試験に出ることがあります。

【根拠】医学的事実(確立した食中毒学・細菌学・ウイルス学)。ノロウイルスのアルコール消毒抵抗性・黄色ブドウ球菌毒素の耐熱性は食品衛生学の確立した知識。厚生労働省「食中毒統計」・「ノロウイルスに関するQ&A」を参照。

【補足】黄色ブドウ球菌の毒素は耐熱(100℃30分でも残存)→加熱で予防不可。ノロウイルスはアルコール消毒に抵抗性→次亜塩素酸ナトリウムが有効。腸炎ビブリオの原因は「海産魚介類」(淡水魚ではない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した食中毒学・細菌学)。ボツリヌス毒素の性状・ノロウイルスのアルコール消毒への抵抗性は食品衛生・感染症学の確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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