行政法2行政行為の効力・公定力・国家賠償との関係

行政書士 行政法 問2:行政行為の効力・公定力・国家賠償との関係

行政行為の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。

  • 行政行為に公定力が認められるため、行政行為が違法であっても、取消権限を有する行政庁または裁判所によって取り消されるまでの間は、有効として扱われる。
  • 違法な行政行為に基づいて損害を受けた者が国家賠償請求をする場合、当該行政行為について取消訴訟でその取消しを得てから国家賠償を請求しなければならない。正答
  • 不可争力(形式的確定力)とは、一定の不服申立期間が経過した後は、相手方がその行政行為の効力を争うことができなくなる効力をいう。
  • 行政行為の無効確認は、不可争力が発生した後も、いつでも訴えることができる(不可争力は無効な行政行為には及ばない)。
  • 行政行為の執行力(自力執行力)とは、行政行為によって課された義務を相手方が履行しない場合に、行政庁が自力で強制執行できる効力をいうが、この効力はあらゆる行政行為に当然に備わるわけではなく、法律の根拠が必要である。
正答:違法な行政行為に基づいて損害を受けた者が国家賠償請求をする場合、当該行政行為について取消訴訟でその取消しを得てから国家賠償を請求しなければならない。

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イが誤りです。最高裁の判例(最判昭36.4.21)は、違法な行政行為を理由とする国家賠償請求訴訟において、当該行政行為の取消しを得ることは必要ではないと判示しています。つまり、取消訴訟で行政行為を取り消さなくても、並行して国家賠償請求訴訟を提起することができます。公定力はあくまで「有効として扱われる」という効力であり、国家賠償請求において「違法行為を原因として損害を被った」という事実を争うことを妨げるものではありません。

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公定力とは、行政行為が違法であっても、取消権限を有する行政庁または裁判所によって取り消されるまでの間は、有効なものとして関係人・裁判所等を拘束する効力です(アが正しい)。公定力から「国家賠償請求には行政行為の取消しが必要」という誤解が生じやすいですが、最高裁はこれを明確に否定しています。取消訴訟の排他的管轄(行訴法上、行政行為の効力否定は取消訴訟によらなければならないという原則)は行政行為の「効力」自体を否定する場合に妥当するものであり、「行政行為が違法であったから国家賠償を請求する」という場合には効力否定を求めているわけではないため、取消訴訟の前置は不要です。不可争力(ウ)は相手方が行政行為の効力を争えなくなる効力(一定期間経過後)ですが、無効な行政行為には及びません(エが正しい根拠)。自力執行力(オ)は行政代執行法等の法律の根拠がある場合に限り認められる効力です(当然には備わらない)。

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【理論的背景】

行政行為の効力論は行政法総論の核心領域です。通説は行政行為に以下の固有の効力を認めています。①公定力: 取り消されるまで有効として扱われる(アの根拠)。②不可争力(形式的確定力): 一定期間経過後は相手方から効力を争えない(ウの根拠)。③不可変更力(実質的確定力): 処分庁自身も変更・取消しができなくなる効力(準司法的手続を経た行為に認められる場合がある)。④自力執行力: 相手方が義務を履行しない場合に法律の根拠に基づき強制できる効力(オの根拠)。これらの効力のうち公定力・不可争力が試験最頻出です。

【実務・条文構造】

公定力と国家賠償の関係(イの誤りの法的根拠):国家賠償請求(国賠法1条1項)は、公務員の違法な公権力行使による損害の賠償を求めるものです。請求の要件は「違法な公権力行使」「過失」「損害」「因果関係」であり、行政行為を「取り消す」こと(行政行為の効力否定)を求めているわけではありません。したがって、取消訴訟の排他的管轄(取消訴訟によらなければ行政行為の効力を否定できない原則)は国家賠償請求には及ばず、行政行為を取り消さなくても国家賠償請求できます(最判昭36.4.21)。

無効な行政行為と不可争力の関係(エの根拠):不可争力は「取消しうべき瑕疵(軽微な違法)」を持つ行政行為に生じる効力です。重大明白な瑕疵を持つ無効な行政行為には、そもそも正当な行政行為としての外観さえなく、不可争力(争訟期間の制約)は及びません。したがって無効確認訴訟は争訟期間の制限なく提起できます(行訴法36条の補充性要件は別途問題となる)。

【試験での位置づけ】

本論点の最頻出の引っかけは「公定力があるから国家賠償には取消しが必要(イ)」という誤記述です。行政書士試験ではこの誤りを正確に見抜けるかが問われます。また「公定力は絶対的なもので無効な行政行為にも及ぶ(エの逆)」という誤記述も出題されます。自力執行力については「全ての行政行為に当然備わる(オの逆)」という誤りも頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。公定力の定義として正確。「取消権限を有する行政庁または裁判所によって取り消されるまでの間」という限定が適切。
  • イ: 誤り(正答)。国家賠償請求に行政行為の取消しは不要。取消訴訟の排他的管轄は行政行為の「効力否定」を求める場合に妥当するものであり、国賠訴訟には及ばない。
  • ウ: 正しい。不可争力の定義として正確。審査請求期間(3か月)・出訴期間(6か月)の経過により発生。
  • エ: 正しい。無効な行政行為には不可争力が発生しない(正確な記述)。無効確認は期間制限なく訴えることができる。
  • オ: 正しい。自力執行力は法律の根拠(行政代執行法等)がある場合のみ。「当然に備わる」という誤解が引っかけに使われる。

【根拠条文】

国家賠償法 第1条第1項(公権力の行使による損害賠償)、行政事件訴訟法 第3条第2項(処分の取消しの訴え)

【参照判例】

公定力と国家賠償の関係に関する最判(昭和36年4月21日・国賠請求に取消し不要を確認)

【補足】

「公定力がある→国賠には取消し必要→×」という誤論理を見抜くことが本論点の核心。公定力は「有効として扱う」効力であり、「国賠請求を妨げる」効力ではない。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 取消訴訟の排他的管轄(行訴法3条2項)、国家賠償法第1条第1項 判例: 最判昭和36年4月21日(公定力と国家賠償の関係に関するリーディングケース) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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