行政書士 一般知識 問39:諸法令・行政書士法
行政書士の報酬・料金に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政書士は、その業務に関する報酬額を事務所の見やすい場所に掲示しなければならず、報酬の掲示を怠った場合には行政書士登録の取消し処分の対象となる。
- イ行政書士は、業務の対価として受け取る報酬の額について、日本行政書士会連合会が定める報酬規程に従わなければならず、これを超えた報酬を請求することは禁止されている。
- ウ行政書士が正当な理由がなく依頼を拒んだ場合、依頼者が支払うべき報酬は生じないとされており、行政書士には当該報酬請求権は発生しない。
- エ行政書士は依頼者から受け取る報酬について、消費税法の規定に基づき消費税を上乗せして請求することができ、報酬額の掲示は消費税込みの金額でも消費税抜きの金額でも任意の方式で行うことができる。
- オ行政書士は、その業務に関する報酬額をその事務所の見やすい場所に掲示しなければならず、この義務は個人の行政書士事務所だけでなく行政書士法人の事務所にも適用される。正答
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正答はオです。行政書士は業務に関する報酬額をその事務所の見やすい場所に掲示しなければならず(10条の2第1項)、この義務は個人の行政書士・行政書士法人の双方の事務所に適用されます。ア(誤):報酬の掲示義務違反は行政書士法上の義務違反ですが、掲示を怠っただけで直ちに登録取消しの対象となるわけではなく、戒告・業務停止等の懲戒処分対象となります。なお行政書士の懲戒処分は「戒告・業務停止・業務禁止」であり「登録取消し」という名称の懲戒はありません。イ(誤):現在(平成12年・2000年の報酬規程廃止以降)、行政書士の報酬は自由化されており、報酬規程に縛られることなく各行政書士が自由に設定できます。ウ(誤):行政書士は正当な事由がない限り依頼を拒んではなりません(11条)。これは依頼を拒んだ場合の制裁(懲戒)の問題であり、報酬請求権の発生・不発生とは別の問題です。エ(誤):報酬額の掲示は「事務所の見やすい場所に」掲示することで足りますが、消費税込み・抜きのいずれで掲示するかについては、消費税法・景品表示法等の関連規制に従って総額表示(消費税込み)が求められます(総額表示義務・2004年4月〜、2021年4月から完全義務化)。
オが正答です。行政書士法10条の2第1項は「行政書士は、その事務所の見やすい場所に、その業務に関し受ける報酬の額を掲示しなければならない」と定め、掲示場所は「その事務所の見やすい場所」です(「依頼者の見やすい場所」ではない点に注意)。この義務は個人行政書士事務所・行政書士法人いずれの事務所にも及びます。イについて:報酬規程の廃止は平成12年(2000年)の行政書士法改正によるものです。改正以前は行政書士会が報酬規程を定め、会員はそれに従う必要がありましたが、規制改革の流れの中で廃止されました。現在は各行政書士が業務・地域・難易度に応じて自由に報酬を設定できます。ただし行政書士会・日行連が報酬額の統計を作成・公表することはあります(10条の2第2項・拘束力なし)。ウについて:11条は「正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない」という依頼応諾義務を定めており、義務違反は懲戒事由です(なお第10条は誠実義務・品位保持を定める)。報酬請求権は委任契約の成立により生じるもので、依頼拒絶は契約成否の問題です。エについて:景品表示法及び消費税法に基づく総額表示義務(税込表示義務)は、行政書士の報酬掲示にも適用されます。
【行政書士の報酬規程廃止と独占禁止法】
報酬規程が廃止された背景には、規制改革・競争政策上の要請がありました。士業団体が一律の報酬規程を定めて会員を拘束することは、価格カルテルに類似した競争制限行為として問題視されました。平成12年(2000年)の自由化以降、行政書士の報酬は会則の記載事項から外れて完全に自由化され、市場競争の下で設定されています。この自由化は弁護士・司法書士等の他士業においても同様の流れで進み、現在では各士業の「標準報酬」は「参考目安」「標準的事例における目安」として公表されることがありますが、法的拘束力はありません。「○○士会が定める報酬規程に従わなければならない」という肢は、この自由化の経緯から誤りと判断できます。
【報酬掲示義務の実務的内容と違反の効果】
10条の2第1項の「掲示」は、日行連の定める様式に準じた報酬額表により事務所の見やすい場所に掲示する方法によります(施行規則3条)。掲示すべき内容は業務ごとの報酬の額であり、「応相談」「見積もり」のみで具体的な金額を掲示しないことは義務の趣旨に反します。ただし案件によって報酬が大幅に異なる複雑な業務については、「基本報酬○円〜」「○○の場合は別途見積もり」等の表示も実務的には許容されています。違反した場合の制裁は、行政書士法14条以下の懲戒規定によります。掲示義務違反は「この法律…に違反したとき」として戒告・業務停止の対象となりえます(14条)。直ちに業務禁止となるわけではなく、戒告・業務停止・業務禁止の段階があります。
【消費税総額表示義務との交錯】
2004年4月(完全義務化は2021年4月)から消費税法の総額表示義務が施行され、事業者が一般消費者に対して価格を表示する場合は「税込みの金額」を明瞭に表示することが義務付けられています。行政書士が依頼者(一般消費者に準ずる立場の個人・中小事業者)に報酬を掲示する際も、この総額表示義務の対象となりえます。「10,000円(税別)」と書かず「11,000円(税込)」と表示するか、「10,000円(税別)+消費税1,000円=合計11,000円」と明記することが求められます。エの「消費税込み・抜きのいずれでも任意」という記述はこの総額表示義務を無視したものです。
【上位資格・実務への接続】
報酬設定の自由化は競争促進と依頼者利益の観点から重要ですが、行政書士として持続可能な価格設定(コスト・難易度・市場水準の考慮)が実務経営の核心です。特に専門特化分野(外国人在留資格・建設業許可・農地転用等)では高単価設定が可能ですが、オンライン申請対応や書類の定型化による効率化との兼ね合いで料金体系の設計が求められます。中小企業診断士・税理士等の隣接士業との比較では、税理士は申告書作成等の一部に税理士会の参考報酬基準が存在する場合があるのに対し、行政書士は完全自由設定という点が異なります。
【根拠条文】
行政書士法 第10条(誠実義務・品位保持)・第10条の2第1項(報酬額の掲示義務:事務所の見やすい場所)・第11条(依頼応諾義務)・第14条(懲戒の種類)
【補足】
報酬規程は平成12年(2000年)廃止・現在は完全自由設定。掲示義務(10条の2)は事務所の見やすい場所・個人・法人事務所とも適用。掲示違反は懲戒対象だが直ちに業務禁止ではない。依頼応諾義務は第11条(第10条は誠実義務・品位保持)。総額表示(税込み)義務も遵守が必要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政書士法 第10条の2第1項(報酬額の掲示義務:事務所の見やすい場所)・第11条(依頼応諾義務・正当事由なき拒絶禁止)・第10条(誠実義務・品位保持)・平成12年(2000年)の報酬規程廃止(現在は各行政書士が自由に設定) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。