行政書士 商法・会社法 問3:商業登記の効力・登記事項の対抗力
商業登記に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア商業登記の登記事項は、登記後であっても正当な理由なく知らなかった第三者には対抗することができない。
- イ登記事項は登記後に限り第三者に対抗できるが、登記後であれば、正当な理由なく知らなかった第三者にも対抗できる。正答
- ウ登記すべき事項を登記していない場合、善意の第三者にはその事項を対抗できないが、悪意の第三者に対してもその事項を対抗できない。
- エ商業登記の登記事項として定められていない事実(登記外事項)であっても、当事者間では商業登記と同一の対抗力を持つ。
- オ支配人の選任・代理権の消滅は商業登記の対象ではなく、善意の第三者に対してこれを対抗することは一切できない。
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商業登記の対抗力について整理します。登記前(未登記):登記すべき事項を登記していない場合、善意・悪意を問わず第三者に対抗できません(商法9条1項)。登記後:登記した後は、「正当な理由なく知らなかった第三者」にも対抗できます(商法9条1項ただし書・反対解釈)。「正当な理由なく」とは天災など客観的理由がない限り、知らなくても登記後の事項は対抗される、という意味です。イが正しく、登記後は正当な理由なく知らなかった第三者にも対抗可能です。アの「正当な理由なく知らなかった者には対抗できない」は逆で誤りです。
商法9条(商業登記の効力)の構造を整理します。1項前段(消極的公示力・未登記):「登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができない」。登記前は善意の第三者に対抗不可(悪意者には登記がなくても対抗可能)。これをウでは「悪意者にも対抗できない」と誤って記述しています(ウ誤り)。1項ただし書(積極的公示力・登記後):「登記の後においては、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、対抗することができない」の反対解釈として、正当な理由なく知らなかった第三者には登記後は対抗できます(イ正しい)。正当な理由とは、天災等で登記所が閉鎖されていた等、客観的に知ることができない特別な事情をいいます(単に見なかった・気づかなかっただけでは「正当な理由」にならない)。登記外事項に対抗力はなく(エ誤り)、支配人の選任・代理権消滅は商業登記事項(商法22条)であり、登記しない間は善意の第三者に対抗不可(オ誤り。登記することができる事項であり、登記後は対抗可能)。
【理論的背景】
商業登記制度は、商取引において頻繁に接触する多数の第三者が、商人に関する重要事項(商号・資本金・代表者・支配人等)を公示によって知ることができるようにするための制度です。これを「公示主義」といい、民法上の不動産登記(物権変動の対抗要件)と類似しますが、商業登記は対抗要件として機能するとともに、登記後は「正当な理由なく知らない者」にも対抗できるという積極的公示力(推定的認知)が生じる点で異なります。この積極的公示力の根拠は、商人は取引の迅速性・安全性のために公示制度を利用する義務があり、一度公示された事項については第三者が調査する機会を持ったとみなせる、という取引保護の思想にあります。
【条文構造】
商法9条1項は二段構造です。前段(消極的公示力):「登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができない」。ただし書(積極的公示力):「登記の後においては、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、対抗することができない」。この「正当な事由」は例外的場合に限定されており、登記後は原則として悪意・善意を問わず第三者に対抗できます。支配人の登記(商法22条)は、支配人の選任・代理権消滅・支配人の氏名・営業所を登記事項としており、未登記の間は善意の第三者に代理権の消滅を対抗できない(商法22条の反対解釈)という重要な実務上の意義があります。これは代理権の存在を信頼して取引した善意の第三者を保護する機能です。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での商業登記の問われ方は、①登記前後の対抗力の違い(善意/悪意の第三者への対抗可否)、②「正当な理由」の意義(登記後の積極的公示力の例外)、③支配人・商号等の各登記事項の効力の3点が典型です。本問のイ(登記後は正当な理由なく知らない第三者にも対抗可)はほぼ毎年問われる最頻出の論点です。不動産登記の対抗要件(民法177条)との比較も重要で、不動産登記は第三者に知ってもらうための「任意の対抗要件」であるのに対し、商業登記は登記義務が課される公示制度という点で構造が異なります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。商法9条1項の反対解釈により、登記後は正当な理由なく知らなかった第三者にも対抗できる。本選択肢は登記後も知らない者に対抗できないかのように読めるが、正反対の結論。
- イ: 正しい。商法9条1項ただし書の反対解釈:登記後は「正当な理由」がある場合に限り対抗不可、それ以外(正当な理由なく知らない者を含む)には対抗できる。
- ウ: 誤り。前半(善意の第三者に対抗不可)は正しいが、後半「悪意の第三者にも対抗できない」が誤り。未登記でも悪意の第三者(登記事項を知っていた者)には対抗可能。
- エ: 誤り。登記外事項には商業登記の対抗力はない。商業登記の公示力は登記事項(商法上の「登記すべき事項」)に限定される。
- オ: 誤り。支配人の選任・代理権消滅は商法22条の登記事項であり、登記することができる(登記義務がある)。登記後は善意の第三者にも代理権消滅を対抗できる。
【根拠条文】
商法 第9条第1項(商業登記の効力・消極的・積極的公示力)
商法 第22条(支配人の登記)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 商法第9条(商業登記の効力)、商法第11条以下(商号の登記)、商法第22条(支配人の登記) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。