行政書士 民法 問1:制限行為能力者・未成年者
未成年者の法律行為に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。なお、未成年者は婚姻していないものとする。
- ア未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った売買契約は、当然に無効であり、追認によっても効力を生じない。
- イ未成年者が「単に権利を得る」法律行為は法定代理人の同意なしに単独で行うことができるが、「義務を免れる」法律行為はこれに含まれない。
- ウ法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、未成年者がその目的の範囲内でのみ自由に処分できるが、目的を定めずに処分を許した財産については未成年者は自由に処分できない。
- エ未成年者が詐術を用いて相手方を信じさせた場合には、当該法律行為の取消しを主張することができない。正答
- オ法定代理人が特定の営業を許可した場合、未成年者はその営業に関する行為について成年者と同一の行為能力を有するが、この許可はいつでも取り消すことができる。
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エが正しいです。民法21条は「制限行為能力者が詐術を用いて相手方を信じさせた場合には、取消しをすることができない」と定めています。アは誤りです。未成年者の同意なき法律行為は「取り消しうる行為(取消可能)」であり、当然無効ではありません。追認によって確定的に有効となります。イは誤りです。「義務を免れる」行為も単独でできます(5条1項ただし書)。ウは誤りです。目的を定めずに処分を許した財産は未成年者が自由に処分できます(5条3項後段)。オも誤りで、営業の許可は取り消すことができますが、その前に生じた第三者の権利を害することはできません(6条2項)。
エが正解です。民法21条は「制限行為能力者が詐術を用いて相手方を信じさせた場合、その行為の取消しをすることができない」と定め、詐術を用いた者は自ら保護を失う制度(禁反言の趣旨)です。
アは誤りです。未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った行為は「取り消しうる行為」(民5条2項)であり、法律上当然に無効となるわけではありません。取消しがなされた場合には遡及的に無効となり、取消しがなされずに追認された場合には確定的に有効となります(民122条)。
イは誤りです。民法5条1項ただし書は「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない」と規定しており、「義務を免れる」法律行為も法定代理人の同意不要で単独で行えます(例:債務の免除を受ける行為)。
ウは誤りです。民法5条3項は「法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産は、未成年者が自由に処分することができる」と規定しており、目的を定めずに処分を許した財産についても自由に処分できます。目的を定めて許した場合はその目的の範囲内に限られます(同条前段)。
オは誤りです。営業許可の取消し・制限は可能ですが、「第三者の権利を害することができない」という留保があります(民6条2項)。
【理論的背景】
制限行為能力制度は、意思能力が十分でない者(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)を相手方や自らの行為から保護するために法が設けた後見的介入の仕組みです。未成年者は民法4条により、18歳未満の者です(2022年4月1日施行の改正により、成年年齢は従来の20歳から18歳に引き下げられました)。制限行為能力者が単独で行った行為は、原則として「取り消しうる行為」であり、取消権行使があって初めて遡及的無効となります(民121条)。「当然無効」とする旧理論は現行法の立場ではありません。
【条文構造】
未成年者に関する核心条文を整理します。
- 民法5条1項本文:法定代理人の同意が必要。ただし書:単に権利を得/義務を免れる行為は同意不要。
- 民法5条2項:同意なき行為の取消権(本人・法定代理人が行使できる)。
- 民法5条3項:処分許与財産の自由処分(前段:目的限定あり→その目的内のみ;後段:目的定めなし→自由)。
- 民法6条:特定営業の許可→その範囲で成年者と同一の行為能力。2項:許可の取消し・制限は可能だが第三者保護あり。
- 民法21条:詐術を用いた場合、取消不可(禁反言・エストッペルの趣旨)。詐術の程度については「相手方を誤信させるに足りる言動」で足りるとされ、積極的欺罔に限らず黙示の詐術(年齢詐称の黙認等)も含むとする判例(大判昭和13年3月26日)があります。
【試験での位置づけ】
行政書士試験の民法総則で最も得点に直結する頻出論点の一つです。典型的な引っかけパターンは次の3つです。①「同意なき行為=当然無効」という誤り(正しくは取り消しうる行為)、②「義務を免れる行為には同意が必要」という誤り(不要)、③「詐術を用いても取消可能」という誤り(不可)。また、成年年齢が18歳になったことで「未成年者とは何歳か」という基本事項も確認問題に含まれます。婚姻による成年擬制は2022年改正で廃止されました(なお本問でも「婚姻していないものとする」とした点は旧法問題との混同を避ける措置です)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「当然無効」と「取り消しうる」の区別は民法の最重要論点。取り消しうる行為は追認で確定的有効(民122条)・取消しで遡及無効(民121条)。成年被後見人の行為は「行為能力を欠く」として取り消しうる(民9条)点も同様で、こちらも「無効」ではない。
- イ: 「単に権利を得る」の典型:贈与を受ける行為(負担なし)。「義務を免れる」の典型:債務の免除を受ける行為。両者はいずれも利益しかない行為として保護の必要がなく、同意不要とされる。
- ウ: 「目的を定めて処分を許した財産」の例:学費として渡した金銭(学費のみに使用可)。「目的を定めずに」の例:小遣いとして渡した金銭(自由に使用可)。実務上は後者の典型がお年玉・小遣い。
- エ: 正答。詐術の内容として、「自分は成年者である」と積極的に偽る場合だけでなく、相手方が未成年と疑っているのに黙示的に誤信させた場合も詐術に含まれます。一方で、単に黙っていただけ(相手方が確認しなかった)は詐術に当たらないとされます。
- オ: 営業許可は一種の行為能力拡大制度。許可を取り消しても、許可後に第三者との間で成立した権利義務関係(例:商品売買の代金債権)は第三者保護で維持されます(民6条2項)。
【根拠条文】
民法 第4条(成年)、第5条(未成年者の法律行為)、第6条(未成年者の営業の許可)、第21条(制限行為能力者の詐術)、第121条(取消しの効果)、第122条(追認の効果)
【補足】
成年年齢は2022年4月1日から18歳(民法4条改正)。「成年は20歳」という旧論点を正答にしてはならない。婚姻による成年擬制(旧753条)は同改正により廃止済み。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第5条(未成年者の法律行為)、第6条(未成年者の営業の許可)、第21条(詐術) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。