民法7代理・表見代理

行政書士 民法 問7:代理・表見代理

表見代理に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 代理権授与の表示による表見代理(民法109条)が成立するためには、相手方が代理権の存在を信じたことについて正当な理由(無過失)があることは要件とされていない。
  • 権限外の行為の表見代理(民法110条)が成立するためには、相手方が代理人の代理権の範囲内の行為と信じたことについて、正当な理由があることが必要であり、相手方に過失がある場合には成立しない。正答
  • 代理権消滅後の表見代理(民法112条1項)が成立するためには、相手方が代理権の消滅について善意であれば足り、無過失は要件とされていない。
  • 民法109条と110条が重複する場合(代理権授与の表示があり、かつ代理人が権限外の行為をした場合)、表見代理は成立しない。
  • 表見代理が成立した場合、その効果は本人に帰属するが、本人は相手方に対して損害賠償を請求することができる。
正答:権限外の行為の表見代理(民法110条)が成立するためには、相手方が代理人の代理権の範囲内の行為と信じたことについて、正当な理由があることが必要であり、相手方に過失がある場合には成立しない。

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イが正しいです。民法110条の権限外行為の表見代理は「相手方が代理人の権限内の行為と信じるにつき正当な理由があるとき」に成立します(民110条)。「正当な理由」とは相手方の善意かつ無過失を意味するため、相手方に過失がある場合には成立しません。アは誤りで、民109条1項でも相手方の善意かつ無過失(正当な理由)が要件です(2020年改正で明文化)。ウは誤りで、民112条1項でも相手方の善意かつ無過失が必要です(2020年改正で明文化)。エは誤りで、109条・110条の重複適用は民法109条2項で認められています。オは誤りで、表見代理が成立した場合、本人が相手方に損害賠償を請求する根拠はありません。

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イが正解です。民法110条は「代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者(相手方)が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」に本人に効果が帰属するとしています。「正当な理由」は相手方が善意かつ無過失であることを意味し(判例・通説)、相手方に過失がある場合には表見代理は成立しません。

アは誤りです。民法109条1項は2020年改正で「第三者が、その代理権の範囲内において代理人がした行為につき、その表示を信じたことについて正当な理由がある」ことを要件として明文化しました。改正前の規定(正当な理由の文言なし)から変更されており、現行法では善意かつ無過失(正当な理由)が必要です。

ウは誤りです。民法112条1項も2020年改正で「代理権が消滅したことを知らなかった」に加えて「過失がないとき」を明文化しています(善意かつ無過失が要件)。改正前は「善意のみ」でしたが、改正で要件が統一されました。

エは誤りです。民法109条2項は「代理権授与表示がなされた者が、表示された代理権の範囲外の行為をした場合において、第三者がその行為につき代理権があると信ずべき正当な理由があるとき」(109条・110条の重複)についても本人への効果帰属を認めています。

オは誤りです。表見代理が成立した場合、本人は相手方との関係で法律効果を引き受けることになります。相手方は正当な理由(善意無過失)があり保護されるべき立場であるため、本人が相手方に損害賠償を請求する根拠はありません。

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【理論的背景】

表見代理は、代理権が実際には存在しない(または権限外・消滅済み)にもかかわらず、外観上代理権があるように見える状況を本人が作出または放置したため、善意無過失の相手方を保護する制度です。代理権の外観を信頼した相手方の取引安全を保護するという観点から、本人に帰責性があれば本人に法律効果を帰属させるという構造です。2020年施行の債権法改正により、三類型(109条・110条・112条)の相手方要件が「善意かつ無過失(正当な理由)」として統一的に明文化されました。

【条文構造】

表見代理の三類型を比較します。

[民法109条1項:代理権授与表示]

本人が代理権授与を第三者に表示した場合。代理権は実際には授与されていない(または表示された範囲と異なる)。

要件:本人の表示+相手方の善意無過失(正当な理由)

[民法110条:権限外行為]

基本代理権はあるが、代理人がその権限を超えた行為をした場合。

要件:基本代理権の存在+相手方の善意無過失(正当な理由)。「正当な理由」は代理権の範囲内と信じたことについての正当な理由。

[民法112条1項:代理権消滅後]

かつて存在した代理権が消滅後も行為をした場合。

要件:かつての代理権の存在+相手方の善意無過失(2020年改正で明文化)

[民法109条2項:109条×110条の重複]

代理権授与表示があり、かつ表示した権限を超えた行為をした場合にも、相手方の善意無過失があれば本人に効果帰属。

[民法112条2項:112条×110条の重複]

代理権消滅後に、消滅前の代理権の範囲外の行為をした場合にも、相手方の善意無過失があれば本人に効果帰属(2020年改正で新設)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では、表見代理の三類型の要件比較と2020年改正による統一化が頻出です。改正前は「109条は善意かつ無過失」「110条は正当な理由(善意かつ無過失)」「112条は善意のみ」と要件が異なっていましたが、改正後は全類型で「善意かつ無過失」が要件となり、統一されました。また、109条2項・112条2項の「重複場面」の規定が新設された点も改正の目玉であり、「109条と110条が競合する場合は表見代理不成立」という誤りパターン(エ)が本試験で出題されます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 民109条1項の要件は2020年改正で「正当な理由」(善意かつ無過失)が明文化された。改正前の旧法解釈と混同して「正当な理由不要」とする誤りが典型。なお、代理権授与表示は書面・口頭どちらも可であり、黙示的な表示が問題となる場面も実務では多い。
  • イ: 正答。民110条の「正当な理由」は判例・通説上、善意かつ無過失(調査義務の履行も含む)を意味し、相手方に過失があれば保護されない。実務上「過失」の判断は取引の種類・慣行・相手方の属性(プロかどうか)等を総合考慮する。
  • ウ: 民112条1項は2020年改正で「知らなかった」から「知らず、かつ、過失がなかった」に変更(善意かつ無過失に統一)。「善意のみで足りる」は改正前の旧規律であり現行法上誤り。
  • エ: 民109条2項(2020年新設)が109条×110条の重複場面を明示的に規律。「109条・110条が競合すると表見代理不成立」は旧法下での一部解釈を踏まえた誤りパターンであり、現行法では109条2項で明示的に解決済み。
  • オ: 表見代理が成立した場合、本人は(本来は代理権がなかったにもかかわらず)法律効果を受ける。本人に損害が生じた場合の救済は代理人への求償(委任契約の債務不履行等)であり、善意無過失の相手方への請求は認められない。

【根拠条文】

民法 第109条(代理権授与表示による表見代理)、第109条第2項(109条×110条重複)、第110条(権限外行為の表見代理)、第112条第1項(代理権消滅後の表見代理)、第112条第2項(112条×110条重複)

【補足】

2020年施行の債権法改正で、表見代理三類型の相手方要件が「善意かつ無過失(正当な理由)」に統一された。改正前は112条が「善意のみ」だった点に注意。109条2項・112条2項の重複場面規定も改正で新設。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第109条(代理権授与の表示による表見代理)、第110条(権限外の行為の表見代理)、第112条(代理権消滅後の表見代理) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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