行政書士 民法 問114:民法親族
離婚に伴う財産分与に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア財産分与は、当事者間の協議によって離婚と同時にのみ行うことができ、離婚後に財産分与を請求することはできない。
- イ財産分与の請求権は、離婚の時から2年以内に行使しなければ消滅し、この期間内に家庭裁判所に調停・審判の申立てをすることで中断させることができる。
- ウ財産分与には、①夫婦財産の清算(婚姻中に形成した共有財産の分配)、②扶養(離婚後の生活保障)、③慰謝料(有責配偶者の精神的損害の賠償)という3つの要素が含まれると解されているが、一般不法行為に基づく慰謝料請求は財産分与とは別途行使できない。
- エ財産分与として相手方に不動産を譲渡した場合、財産分与義務者(譲渡人)に対して譲渡所得税が課税される可能性がある。正答
- オ財産分与の請求は、協議離婚・裁判離婚を問わず、離婚成立前に行使することができる。
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エが正しいです。財産分与として不動産を譲渡した場合、当該譲渡は「資産の移転」として所得税法上は有償譲渡に類似した処理がなされることがあり、譲渡所得税が課税される可能性があります(財産分与は「離婚に伴う資産の移転」として課税対象になりえます)。アは誤りで、財産分与は離婚後も2年以内に請求できます(民768条2項)。イは誤りで、2年の期間は「除斥期間」と解されており、中断ができません。ウは誤りで、財産分与とは別途、慰謝料請求(不法行為)も行使できます。オは誤りで、財産分与は離婚成立後に請求するのが原則です。
エが正解です。財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、財産分与は離婚に伴う「清算」・「扶養」・「慰謝料」の要素を含むとされていますが、税務上は所得税法の「資産の移転」として扱われ、譲渡所得税(不動産の取得価額との差額に課税)が課税される場合があります(最判昭50.5.27)。財産分与は「贈与」とは法的性質が異なりますが、実質的な資産移転であるため課税対象となりうる点が重要です。
アは誤りです。民768条2項は「離婚の時から2年を経過したときは、家庭裁判所に対して財産分与の協議に代わる処分を請求することができなくなる」と規定しており、協議については離婚後も(2年以内であれば)請求できます。
イは誤りです。財産分与請求権の2年の期間は「除斥期間」(消滅時効ではない)と解されており、中断・停止の制度は適用されません。
ウは誤りです。財産分与とは別途、有責配偶者への不法行為に基づく慰謝料請求(民709条)は独立して行使できます(財産分与の中に慰謝料要素が含まれる場合でも、それで足りない分の追加請求が可能)。
オは誤りです。財産分与は離婚成立後に行使する権利です(民768条1項「離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」)。離婚成立前の請求は認められません。
【理論的背景】
財産分与(民768条)は、婚姻中に形成された夫婦の実質的な共有財産を清算し、離婚後の生活保障(扶養)や慰謝料的要素を含む、離婚に伴う財産上の措置です。最高裁判所は財産分与に①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与の3要素が含まれると解しています(複合説・通説)。財産分与の割合については、現代では専業主婦の「内助の功」も考慮され、婚姻期間中に取得した財産についての分与割合は2分の1が一般的な基準となっています(二分の一ルール)。
【条文構造】
民768条の規律を整理します。
民768条1項:離婚した者の一方が他方に対して財産分与を請求できる(離婚後に行使)。
民768条2項:当事者間の協議→不調または協議不能の場合、家庭裁判所の処分を申立て可。ただし離婚の時から2年以内に申立てなければ請求権消滅(除斥期間)。
民768条3項:家庭裁判所は当事者の一切の事情を考慮して分与の額・方法を決める。
財産分与と慰謝料の関係(判例):財産分与の中に慰謝料要素が包含されている場合でも、分与された財産がその損害賠償の額を超えない場合は別途慰謝料請求が可能(最判昭46.7.23)。
財産分与と税務(最判昭50.5.27):財産分与は贈与ではなく、実質的な「清算」であるが、資産(不動産等)の移転については所得税法上の「譲渡」として扱われ、譲渡所得税の課税対象となりうる(財産分与義務者が取得時より値上がりした不動産を分与した場合等)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における財産分与の典型論点は、①財産分与の3要素(清算・扶養・慰謝料)、②請求の2年の除斥期間(中断なし・民768条2項)と時効との区別、③離婚成立後に行使する点(離婚前請求不可)、④財産分与と不法行為に基づく慰謝料請求の競合の4点です。税務(譲渡所得税の課税)については行政書士試験ではやや発展的ですが、法的性質の理解として重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。民768条2項により、離婚後(2年以内)に家庭裁判所に処分を申し立てることができる。「離婚と同時にのみ」は誤り。実務上、離婚協議と同時に財産分与の合意がなされることが多いが、法律上は離婚後の請求も可。
- イ: 誤り。除斥期間(中断不可)という点が重要。消滅時効(中断・停止あり)との区別は基本論点。家庭裁判所への申立ては請求権の行使として期間内に行う必要があるが、中断という概念はない(申立て=請求権の行使そのもの)。
- ウ: 誤り(後半部分)。財産分与の3要素は正しいが、「別途慰謝料請求ができない」は誤り(最判昭46.7.23により別途請求可)。財産分与の中に慰謝料要素が含まれていても、不足分は独立した不法行為(民709条)として請求できる。
- エ: 正答。最判昭50.5.27。財産分与として不動産を譲渡した場合、贈与税(受取人への課税)は原則として非課税(清算として整理されるため)だが、譲渡所得税(移転者への課税)は課税対象。実務上、財産分与の際に税務上の影響を弁護士・税理士に確認することが重要。
- オ: 誤り。民768条1項は「離婚をした者の一方は…」と規定しており、離婚成立後の権利行使が前提。離婚前の財産分与請求は認められない。離婚と同時に行う場合も「離婚の成立をもって」財産分与の効力が生じると解される。
【根拠条文】
民法 第768条第1項(財産分与請求権)、第768条第2項(除斥期間・2年)、第768条第3項(家庭裁判所の決定)
【参照判例】
最判昭和46年7月23日(財産分与と別途慰謝料請求の可否)、最判昭和50年5月27日(財産分与に伴う不動産譲渡への課税)
【補足】
財産分与の2年の期間は除斥期間(中断・更新・完成猶予の規定の適用なし)。財産分与と別途慰謝料請求の競合可(最判昭46年)。財産分与として不動産を譲渡した場合の譲渡所得税課税可能性(最判昭50年)を押さえること。
【監修コメント(除斥期間の確定)】
民768条2項但書の「2年」は、判例・通説および家庭裁判所の実務において一貫して「除斥期間」と解されている(消滅時効ではない)。2020年施行の改正民法でも本条項の性質に変更はなく、改正後も「除斥期間」とする立場が維持されている。したがって本問の「除斥期間(中断ができない)」とする解説は現行法・実務に照らして正確である。なお、改正により民法上「中断」の語は「更新」「完成猶予」に整理されたため、本問解説では「中断ができない」を「更新・完成猶予の規定の適用がない」の趣旨で理解すること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第768条(財産分与) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。