民法19抵当権・優先弁済・物上代位

行政書士 民法 問19:抵当権・優先弁済・物上代位

抵当権に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 抵当権は、債務者または第三者の不動産について設定されるが、動産に設定することはできない。正答
  • 抵当権が設定された建物が火災によって滅失した場合でも、抵当権者は火災保険金請求権に対して物上代位権を行使することができない。
  • 抵当権設定者は、抵当権が設定された不動産を抵当権者の承諾なく第三者に売却または賃貸することができない。
  • 抵当権の被担保債権が時効によって消滅した場合でも、抵当権そのものは消滅しない。
  • 抵当不動産の第三取得者(抵当権の付いた不動産を取得した者)は、抵当権者に対して代価弁済を申し出ることができる。
正答:抵当権は、債務者または第三者の不動産について設定されるが、動産に設定することはできない。

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アが正しいです。民法369条1項は「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する」と規定しており、抵当権の目的物は「不動産」に限られます(動産には抵当権を設定できません)。イは誤りで、物上代位は火災保険金請求権にも及ぶとするのが判例です(民372条・304条準用)。ウは誤りで、抵当権設定者は抵当権者の承諾なく目的物を使用・売却・賃貸することができます(使用収益権を保持)。エは誤りで、被担保債権が消滅すると付従性により抵当権も消滅します。オは正しい内容ですが、「抵当不動産の所有者が申し出る」のではなく「抵当権者が」という点で混乱がある設問です。最も明確に正しいのはアです。

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アが正解です。民法369条の抵当権の目的物は「不動産」(土地・建物・地上権・永小作権)であり、動産には通常の抵当権を設定することができません。動産担保については質権(民362条〜)または動産・債権等を目的とする担保に関する民法の特例を定める法律(動産・債権担保融資法)等の別の制度が用いられます。

イ:誤りです。抵当権には物上代位性があります(民372条・304条の準用)。抵当目的物が滅失・損傷によって発生した請求権(火災保険金請求権・損害賠償請求権等)に対して抵当権者は物上代位権を行使できます。ただし物上代位権の行使には「払渡しまたは引渡しの前に差押えをしなければならない」という要件があります(民372条・304条1項ただし書)。

ウ:誤りです。抵当権は非占有担保物権(占有を移転せずに設定する)であるため、抵当権設定者は引き続き抵当物を使用・収益し、売却・賃貸することも可能です(使用収益権の保持)。抵当権者が優先弁済を受ける権利は実行時に確保されます。

エ:誤りです。抵当権は被担保債権に附従する(附従性)ため、被担保債権が時効消滅によって消滅すれば、抵当権も消滅します(民396条・抵当権の消滅時効規定との関係。被担保債権消滅による抵当権の消滅は附従性による)。

オ:代価弁済(民378条)は「抵当不動産の第三取得者が抵当権者の請求に応じてその代価を弁済した場合」に抵当権が消滅する制度です。「申し出る」という記述が「第三取得者が積極的に申し出る」(滌除的な趣旨)であれば問題ですが、この記述は実際の条文(民378条・抵当権者の請求に応じる形)と整合するため正しくあります。ただしアの方が法的に明確に正しい記述です。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

抵当権は、担保目的物の占有を移転することなく(非占有担保)、債権者が目的物から優先弁済を受けることができる担保物権です(約定担保物権)。設定者が引き続き目的物を使用・収益できるため、企業の事業継続中の資金調達や不動産担保融資の実務の基盤となっています。

抵当権の特色:

1. 非占有性(設定者が占有を保持し使用収益を継続)

2. 付従性(被担保債権の発生・消滅・移転に連動)

3. 随伴性(被担保債権が移転すると抵当権も移転)

4. 不可分性(被担保債権の一部が弁済されても抵当権全体が残存)

5. 物上代位性(担保目的物の価値変形物に及ぶ)

【条文構造】

抵当権の核心条文を整理します。

[民法369条:抵当権の目的物]

  • 不動産(土地・建物)
  • 地上権・永小作権
  • 動産には原則設定不可(※例外:工場抵当法等の特別法)

[民法372条・304条:物上代位]

  • 払渡し・引渡し前の差押えが要件
  • 対象:火災保険金・損害賠償金・売却代金(売却の場合は使用収益権との関係が問題に)

[民法377条〜380条:第三取得者の保護]

  • 第三取得者:抵当権付き不動産を購入した者
  • 代価弁済(民378条):抵当権者の請求に応じて代価を弁済→抵当権消滅
  • 抵当権消滅請求(民379条〜386条):第三取得者が請求→抵当権者が競売するかを選択

[民法396条:抵当権の消滅時効]

  • 抵当権は独自の消滅時効を持つが、被担保債権が消滅すれば附従性で抵当権も消滅

【試験での位置づけ】

抵当権は行政書士試験民法の最重要担保物権論点です。頻出は①目的物(不動産限定)、②非占有性(使用収益権の保持)、③物上代位(差押え前置要件)、④第三取得者の保護(代価弁済・抵当権消滅請求の区別)、⑤付従性(被担保債権消滅→抵当権消滅)です。「動産に抵当権設定可か」「火災保険金に物上代位できるか」「設定者は承諾なく売却できるか」という3問がセットで問われる構成が典型的です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正答。動産担保としては質権(民362条・占有を移転させる担保)または動産・債権担保融資法(登記型の非占有担保)が利用される。抵当権の目的物に「地上権・永小作権」(不動産ではないが抵当権可)が含まれる点も重要。
  • イ: 物上代位(民372条・304条準用)の対象として、賃料債権への物上代位を認めたのが最判平成1年10月27日(民集43巻9号1070頁)である。火災保険金請求権への物上代位も判例・通説上認められている。いずれも「払渡しまたは引渡しの前に差押え」という要件を充足する必要がある。
  • ウ: 非占有担保である抵当権の設定者は使用収益権を保持する。ただし抵当権者は抵当物件の毀損・価値減少行為(第三者への売却で価値が下落する場合等)に対して一定の保護を受ける(抵当物件の保存・管理・競売申立て等)。
  • エ: 付従性の適用として、被担保債権の消滅時効完成→抵当権消滅。これは消滅時効援用権者(民145条・保証人・物上保証人等)が被担保債権の時効を援用した場合にも同様(援用→債権消滅→抵当権消滅)。抵当権の独自の時効(民396条)は「債務者および抵当権設定者以外の者」に対してのみ問題となる特殊規定。
  • オ: 代価弁済(民378条)は「抵当権者の請求に応じて」第三取得者が代価を弁済する制度(受動的)。これに対し「抵当権消滅請求」(民379条)は第三取得者が積極的に抵当権者に価格を提示して消滅を求める制度(能動的)。両者の主体・要件・効果の違いを区別することが試験では重要。

【根拠条文】

民法 第369条(抵当権の内容)、第372条(抵当権への各規定の準用)、第304条(先取特権・物上代位)、第378条(代価弁済)、第379条〜第386条(抵当権消滅請求)

【参照判例】

抵当権に基づく賃料債権への物上代位(最判 平成1年10月27日・民集43巻9号1070頁)

【補足】

抵当権の目的物は「不動産・地上権・永小作権」(動産は不可)。物上代位権行使の差押え前置(民372条・304条1項但書)は頻出。付従性により被担保債権消滅→抵当権消滅(民396条との区別注意)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第369条(抵当権の内容)、第372条(抵当権への根拠条文準用)、第304条(先取特権の物上代位・抵当権に準用)、第376条・379条〜380条(第三取得者・代価弁済) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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