行政書士 民法 問66:扶養義務
扶養に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負い、夫婦と同じく生活保持義務を負う。
- イ扶養の順位について当事者間で協議が調わないときは、家庭裁判所がこれを定める。正答
- ウ扶養を受ける権利は、第三者に譲渡することができる。
- エ直系血族及び兄弟姉妹の扶養義務は、家庭裁判所の審判によって初めて発生する。
- オ夫婦の一方が他方に対して有する婚姻費用の分担請求権は、扶養義務とは無関係の権利である。
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扶養義務は、直系血族及び兄弟姉妹の間で当然に生じます(民法877条1項)。当事者間で扶養の順位や程度について協議が調わないとき、または協議できないときは、家庭裁判所が定めます(民法879条)。これがイの根拠で正答です。アは誤りで、兄弟姉妹の扶養義務は生活扶助義務(自己の生活に余裕のある範囲)であり、夫婦間・親と未成年の子の間の生活保持義務とは異なります。ウは誤りで、扶養を受ける権利は一身専属権であり譲渡も相続もできません(民法881条)。エは誤りで、直系血族と兄弟姉妹の扶養義務は法定のものであり、審判によって初めて発生するわけではありません。
正答はイです。民法879条は「扶養の順位について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める」と規定しています。扶養義務者が複数いる場合に、誰が先に扶養するかの順位を当事者で決められないとき、家庭裁判所が決定します。
各選択肢を検討します。ア(誤):兄弟姉妹の扶養義務は「生活扶助義務」であり、自己の生活に余裕がある範囲での扶養に限られます。これは夫婦間や親と未成熟の子の間の「生活保持義務」(相手を自己と同一水準に保つ義務)とは異なる、より軽い義務です。ウ(誤):民法881条は「扶養を受ける権利は、処分することができない」と規定しており、譲渡・差押えは認められません。扶養請求権は一身専属権です。エ(誤):直系血族・兄弟姉妹間の扶養義務は民法877条1項から当然に発生する法定義務です。家庭裁判所は義務の存否ではなく、順位・程度の決定機関です。オ(誤):婚姻費用の分担(民法760条)は夫婦間の生活保持義務を根拠とする扶養関係の一形態であり、扶養義務と密接に関連します。
【理論的背景】
民法上の扶養義務は、血縁・婚姻関係に基づく私的扶養の仕組みです。公的扶助(生活保護)は民法上の扶養が機能しない場合に補完する関係にあります(生活保護法の補足性原則)。扶養義務は「生活保持義務」と「生活扶助義務」に分類されます。生活保持義務とは、自己と同一生活水準を相手に保障する強い義務であり、夫婦間(民法760条・婚姻費用)・親と未成熟の子の間がその典型です。生活扶助義務とは、自己の生活に余裕がある範囲での扶養であり、兄弟姉妹間や直系血族間でも扶養能力が問題になる場面で適用されます。この区別は法定はされていませんが、判例・通説によって確立した概念です。
【実務・条文構造】
扶養に関する主要条文を整理します。民法877条1項:直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある。民法877条2項:家庭裁判所は特別の事情があるときは、3親等内の親族間においても扶養義務を負わせることができる(審判による義務の創設)。民法878条:扶養の義務がある者が複数いる場合の順位は、まず当事者間の協議で定める。民法879条:協議が調わないとき・できないときは家庭裁判所が定める。民法880条:扶養義務者・扶養権利者の事情変更による変更・取消しの申立て。民法881条:扶養請求権は処分(譲渡・差押え)できない(一身専属権)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、扶養義務は社会保障との絡みで問われることもありますが、民法の論点としては「義務の発生原因」「生活保持義務 vs 生活扶助義務」「扶養請求権の一身専属性」「家庭裁判所の役割」が中心です。エの「審判によって初めて発生する」という誤りは頻出の引っかけです。3親等内の親族への拡張(877条2項)は「審判によって初めて発生する」が正しく、直系血族・兄弟姉妹の場合と混同させる出題もあります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。兄弟姉妹は確かに扶養義務を負うが(民法877条1項)、その義務の内容は「生活扶助義務」であり「生活保持義務」ではない。夫婦間の婚姻費用分担(民法760条)・親の未成熟子に対する扶養が生活保持義務の典型。兄弟姉妹を夫婦と同視する本肢は誤り。
- イ: 正答。民法879条の文言通り。協議→不調なら家庭裁判所というプロセスが正確に表現されている。
- ウ: 誤り。民法881条が根拠。「処分することができない」=譲渡・質入れ・差押えが不可。扶養料の支払済み分(既発生の金銭請求権)は別論点で、一定限度で差押えが認められうる。
- エ: 誤り。直系血族・兄弟姉妹の義務は民法877条1項から法定で発生する。家庭裁判所は順位・程度の確認機関。ただし民法877条2項による3親等内の親族への拡張は審判によって義務が発生するため、877条1項と2項を混同させる問題に注意。
- オ: 誤り。婚姻費用の分担(民法760条)は夫婦間の相互扶養義務(生活保持義務)の具体的発現形態であり、扶養義務と密接に関連する。婚姻費用とは別居中の生活費・子の養育費等を指し、離婚成立まで義務が継続する。
【根拠条文】
民法 第760条(婚姻費用の分担)、第877条第1項・第2項(扶養義務者)、第879条(扶養の順位)、第881条(扶養請求権の処分禁止)
【補足】
「生活保持義務(夫婦・親子)vs 生活扶助義務(兄弟姉妹)」の区別と、「直系血族・兄弟姉妹は法定義務(877条1項)、3親等内への拡張は審判必要(877条2項)」の区別は必須。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第877条・第878条・第879条・第881条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。