民法68相続の承認・放棄

行政書士 民法 問68:相続の承認・放棄

相続の承認及び放棄に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。

  • 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかをしなければならない。
  • 限定承認は、相続人が複数いる場合、共同相続人の全員が共同してのみ行うことができる。
  • 相続の放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされるため、その者の子は代襲相続することができる。正答
  • 相続放棄の申述は、家庭裁判所に対してしなければならず、当事者間の合意だけでは放棄の効力は生じない。
  • 相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、単純承認をしたものとみなされる。
正答:相続の放棄をした者は、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされるため、その者の子は代襲相続することができる。

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相続を放棄した者は、はじめから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。しかし、相続放棄の場合は代襲相続は発生しません。代襲相続が発生するのは、被相続人の死亡前に相続人が死亡した場合・欠格・廃除に限られ、相続放棄は含まれません(民法887条2項)。よってウが誤りです。ウの「その者の子は代襲相続することができる」は誤りです。アは正しく(民法915条1項・熟慮期間3か月)、イは正しく(民法923条・限定承認は全員共同)、エは正しく(民法938条・家庭裁判所への申述)、オは正しく(民法921条1号・法定単純承認)です。

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正答はウです。相続放棄の効果として、放棄者は「初めから相続人とならなかったものとみなされる」(民法939条)という点は正しいです。しかし、代襲相続が発生するのは民法887条2項の規定により、相続人が「相続の開始以前に死亡し、又は相続権を失った(欠格・廃除)」場合に限られます。相続放棄はこれに含まれません。放棄者の子は代襲相続権を取得しないため、ウは誤りです。

各選択肢を確認します。ア(正):民法915条1項は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」を熟慮期間として規定します。イ(正):民法923条は「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる」と明記します。エ(正):民法938条は相続放棄の方式として「家庭裁判所に申述して」と定めており、当事者間の合意だけでは効力が生じません。オ(正):民法921条1号は相続財産の一部または全部を処分した場合を法定単純承認事由として規定します。

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【理論的背景】

相続の承認・放棄制度は、相続人に「相続するかどうかを選択する自由」を与えるものです。相続によって被相続人の債務も引き継がれるため(包括承継の原則)、多額の債務を抱えた被相続人の相続は相続人にとって不利益となる場合があります。熟慮期間(3か月)内に承認・放棄の選択ができることで、相続人の不測の損害を防止します。相続放棄を代襲相続の原因から除外するのは、放棄は本人の意思に基づくものであり、放棄者の子に代わって相続させることは放棄者本人の意思と矛盾するためです。これに対し、死亡・欠格・廃除は本人の意思によらないため、代襲相続が認められます。

【実務・条文構造】

相続の承認・放棄に関する主要条文を整理します。民法915条1項:熟慮期間は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月(家庭裁判所の審判で延長可能・民法915条2項)。民法920条:単純承認の効果(被相続人の権利義務を全面的に承継)。民法921条:法定単純承認事由(財産の処分・熟慮期間経過・背信的行為)。民法922条:限定承認(相続財産の限度での弁済責任)。民法923条:限定承認は全員共同が必要。民法938条:相続放棄は家庭裁判所への申述。民法939条:放棄の効果(初めから相続人でなかったとみなす)。民法887条2項:代襲相続の発動条件(死亡・欠格・廃除のみ、放棄は除外)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験で最も問われる論点は「相続放棄と代襲相続の関係」です。放棄者の子には代襲相続が発生しないという規律は、直感に反するため引っかけとして頻出です。また、限定承認が「全員共同」でなければならない点(単独放棄との対比)も重要です。熟慮期間は「相続開始を知った時(必ずしも被相続人の死亡日ではない)」から起算される点にも注意が必要です。最高裁は、相続人が相続開始を知っていても財産の存在を知らなかった場合に熟慮期間の起算を遅らせうると判断した例があり(最判昭59.4.27等)、実務上重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。民法915条1項の規定通り。「3か月」は家庭裁判所への申立てで延長可能。熟慮期間経過後は単純承認したとみなされる(民法921条2号)。
  • イ: 正しい。限定承認は債権者・相続人双方の利害調整が必要な複雑な手続き(相続財産をもって債権者に弁済し、残余を相続人が取得する)であり、一部の者だけで行うと残りの者が不測の損害を被るため全員共同が要求される。単独で行える相続放棄との重要な違い。
  • ウ: 誤り(正答)。民法939条の効果(初めから相続人でなかったとみなす)と民法887条2項の代襲相続原因(放棄は含まれない)を正確に理解しないと誤る典型的な引っかけ。放棄者の子には代襲相続権が発生しない。
  • エ: 正しい。民法938条が根拠。口頭・書面での当事者間合意は有効な放棄にならない。遺産分割前に「自分は相続しない」と言ったとしても、家庭裁判所への申述なしには法的効力を持たない点は実務上重要。
  • オ: 正しい。民法921条1号が根拠。「処分」には相続財産の売却・消費・破棄・隠匿等が含まれる。ただし保存行為(腐敗防止のための保管等)は処分にあたらないとされる。

【根拠条文】

民法 第887条第2項(代襲相続:放棄は含まない)、第915条第1項(熟慮期間)、第921条(法定単純承認)、第923条(限定承認の共同性)、第938条(放棄の方式)、第939条(放棄の効果)

【補足】

「相続放棄をしても代襲相続は発生しない」が最頻出の引っかけ論点。熟慮期間の起算点は「相続開始を知った時」(死亡日そのものとは限らない)にも注意。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第887条第2項・第915条・第921条・第923条・第938条・第939条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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