民法81婚姻の無効・取消し

行政書士 民法 問81:婚姻の無効・取消し

婚姻の無効と取消しに関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。

  • 婚姻は、当事者間に婚姻の意思がない場合、または当事者が婚姻の届出をしない場合に無効となる。
  • 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生じ、婚姻の遡及的消滅は生じない。
  • 詐欺による婚姻の取消しは、当事者が詐欺を発見した後6か月以内に取消しの請求をしなければならない。正答
  • 婚姻の取消し前に生まれた子は、取消しによっても嫡出子の身分を失わない。
  • 近親婚(民法734条〜736条に違反する婚姻)を理由とする婚姻の取消しは、当事者のみならず検察官も請求することができる。
正答:詐欺による婚姻の取消しは、当事者が詐欺を発見した後6か月以内に取消しの請求をしなければならない。

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詐欺または強迫による婚姻の取消しについては、民法747条2項が「詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3か月を経過し、又は追認をしたときは、取消権は消滅する」と規定します。したがって、詐欺を発見した後「3か月以内」に取消しの請求をしなければなりません。ウは「6か月以内」としており、これが誤りです。正しい期間は3か月です。アは正しく(民法742条の無効原因通り)、イは正しく(民法748条1項・将来効のみ)、エは正しく(将来効の帰結として取消し前の子の嫡出性は維持)、オは正しく(民法744条1項・検察官も請求可)です。

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正答はウです。民法747条2項は「詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後3か月を経過し、又は追認をしたときは、取消権は消滅する」と規定します。正確な期間は3か月であり、ウの「6か月以内」は誤りです。

各選択肢を確認します。ア(正):民法742条は婚姻の無効原因として「人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき」(1号)と「当事者が婚姻の届出をしないとき」(2号)を規定します。イ(正):民法748条1項は「婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる」と規定します。無効との違い(無効は遡及効あり)に注意が必要です。エ(正):民法748条1項の将来効の帰結として、取消し前に生まれた子の嫡出子の身分は維持されます。取消しによって嫡出子の身分を失うとすれば、子の利益を著しく害することになるため、立法上の要請から将来効が採用されています。オ(正):民法744条1項は「第732条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを裁判所に請求することができる」と規定しており、近親婚等の取消しは検察官も請求できます。

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【理論的背景】

婚姻の無効と取消しは、いずれも婚姻の効力を否定する制度ですが、その効果が根本的に異なります。無効は遡及的に婚姻の成立を否定し(婚姻はなかったことになる)、取消しは将来に向かってのみ効力を生じます(民法748条1項)。婚姻の取消しに将来効しか認めない理由は、婚姻が継続していた期間の社会的事実(共同生活・財産の形成・子の嫡出性)を保護するためです。特に子の嫡出性の保護は重要であり、取消し前に生まれた子は嫡出子の身分を維持します(エ)。詐欺・強迫による取消しの除斥期間を3か月と短く設定するのは、婚姻関係の安定化と取消権者が徒に権利行使を留保することを防ぐためです。

【実務・条文構造】

婚姻の無効・取消しに関する主要条文を整理します。民法742条:無効原因(婚姻意思の欠如・届出の欠缺)。婚姻意思が欠如する例:仮装婚・内縁関係維持を目的とした便宜的婚姻届等(実態があれば婚姻意思ありとされる場合も)。民法744条:婚姻障害(民法732条〜736条)に違反した婚姻の取消し→請求者:各当事者・親族・検察官(公益的観点)。民法745条:不適齢婚の取消し→成年到達後は請求不可(利害が本人に帰属するため)。民法747条1項:詐欺・強迫による婚姻の取消し→請求者:詐欺被害者または強迫被害者。民法747条2項:取消権の除斥期間は「詐欺発見・強迫免脱後3か月」または追認により消滅。民法748条1項:取消しの将来効(遡及効なし)。民法748条2項:取消し後の財産清算(現存利益の返還・善意者保護)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での婚姻の無効・取消しの論点は、(1)無効原因(婚姻意思の欠如・届出欠缺)と取消原因(婚姻適齢違反・近親婚・詐欺・強迫等)の区別、(2)取消しの将来効(遡及効なし)と無効の遡及効の対比、(3)詐欺・強迫の取消権の除斥期間(3か月・民法747条2項)の正確な数値、(4)近親婚等の取消し請求権者(検察官を含む)が出題されます。「6か月」「1年」といった近似する数字との混同が引っかけとして出題されやすい論点です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。民法742条1号(婚姻意思の欠如)・2号(届出の欠缺)が無効原因。なお「婚姻意思」とは社会通念上の夫婦関係を形成する意思であり、法律上の効果を意図する意思である「法律的婚姻意思」は不要とするのが判例・通説(実質的意思説)の立場。
  • イ: 正しい。民法748条1項が根拠。無効(遡及的消滅)との違いが重要。取消しの場合でも、取消し前の財産関係は民法748条2項による清算(不当利得的な精算)が問題となる。
  • ウ: 誤り(正答)。民法747条2項の正確な期間は3か月であり、6か月は誤り。起算点は「詐欺を発見した後」または「強迫を免れた後」であり、婚姻届の日や婚姻の成立日からではない点にも注意。
  • エ: 正しい。取消しの将来効(民法748条1項)の当然の帰結。取消し前に生まれた子は嫡出子であり続ける。離婚・取消し後に生まれる可能性のある子については別の親子法上の問題が生じる。
  • オ: 正しい。民法744条1項が根拠。近親婚禁止は公序に関わるため、個人の利害のみならず社会的観点からの取消しを可能にするため検察官が請求権者に含まれる。詐欺・強迫による取消し(民法747条)とは異なり個人的利益保護の要素が強い場合は当事者のみが請求できるとする立て分けを理解することが重要。

【根拠条文】

民法 第742条(婚姻の無効原因)、第744条第1項(婚姻障害違反の取消し請求者)、第747条第2項(詐欺・強迫による婚姻の取消権の消滅・3か月)、第748条第1項(取消しの将来効)

【補足】

詐欺・強迫による婚姻取消しの除斥期間「3か月(詐欺発見・強迫免脱後)」は正確な数値を暗記。婚姻の無効(遡及的消滅)と取消し(将来効)の対比は最重要論点。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第742条・第744条・第747条・第748条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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