ITパスポート 令和4年度 問24:AI・機械学習に関する問題
教師あり学習の事例に関する記述として,最も適切なものはどれか。
- a衣料品を販売するサイトで,利用者が気に入った服の画像を送信すると,画像の特徴から利用者の好みを自動的に把握し,好みに合った商品を提案する。
- b気温,天候,積雪,風などの条件を与えて,あらかじめ準備しておいたルールベースのプログラムによって,ゲレンデの状態がスキーに適しているか判断する。
- c麺類の山からアームを使って一人分を取り,容器に盛り付ける動作の訓練を繰り返したロボットが,弁当の盛り付けを上手に行う。
- d録音された乳児の泣き声と,泣いている原因から成るデータを収集して入力することによって,乳児が泣いている原因を泣き声から推測する。正答
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答えは d です。
「教師あり学習」は、AIに“問題と答えのセット”をたくさん見せて勉強させる方法。テストの過去問と模範解答を渡して覚えさせるイメージです。
dは「赤ちゃんの泣き声(問題)」と「その原因(答え)」をセットで見せて、新しい泣き声から原因を当てさせる話。答え付きで学ばせているので教師あり学習です。
👉 覚え方:教師あり=「答え(正解ラベル)が付いている」。
ほかの選択肢:a 好みを自動で見つける=答えなしで分ける教師なし学習っぽい/b 決めたルールで判断=昔ながらのルールベースでAI学習じゃない/c 何度も訓練して上達=ほめられて伸びる強化学習っぽい。
なぜこれが正解か
正解は d。教師あり学習は、入力データと正解(ラベル)の組をあらかじめ与えて学習させ、未知の入力に対する出力を予測させる手法。dは「泣き声(入力)」と「原因(正解ラベル)」の対を学習データとして与えているため、教師あり学習に該当する。
各選択肢の解説
- a 画像の特徴から好みを把握し提案:✕ 正解ラベルなしでパターンを見つける教師なし学習(クラスタリング・レコメンド)寄り。
- b ルールベースのプログラムで判断:✕ 機械学習ではなく、人が定めたルールによる処理。
- c 動作の訓練を繰り返して上達:✕ 試行錯誤と報酬で方策を学ぶ強化学習の事例。
- d 泣き声と原因の対を入力して推測:○ 入力+正解ラベルの教師あり学習。
覚え方・ひっかけ注意
3手法を「正解ラベルの有無」で切り分ける。教師あり=正解あり、教師なし=正解なし(分類・グルーピングを自力発見)、強化=報酬で学習。cの「訓練を繰り返す」は教師ありと紛らわしいが、正解ラベルでなく報酬で学ぶ点で強化学習。
理論的背景
機械学習は「学習データからアルゴリズムが自動的にパターンを抽出するコンピュータシステム」であり、大きく教師あり学習・教師なし学習・強化学習の3種に分類される。本問はこれらの分類の正確な理解を問う。
教師あり学習(Supervised Learning):正解ラベル(答え)付きの学習データ(教師データ)を使ってモデルを訓練する手法。モデルは入力と正解の対応パターンを学習し、未知の入力に対して正解を予測できるようになる。本問の選択肢dが典型例:「録音された乳児の泣き声(入力)と泣いている原因(正解ラベル)のペアデータを収集して入力」→泣き声から原因を推測するモデルが訓練される。入力→正解のペアが大量に必要な点が特徴。
教師なし学習(Unsupervised Learning):正解ラベルなしのデータからパターン・構造・クラスターを発見する手法。選択肢aの「利用者が気に入った服の画像の特徴から好みを把握し商品を提案」は、正解ラベルなしに画像の特徴量空間でクラスタリングするため教師なし学習(または協調フィルタリング)に近い事例。
強化学習(Reinforcement Learning):エージェントが環境と相互作用し、報酬信号を最大化するように行動を学習する手法。選択肢cの「盛り付け動作の訓練を繰り返したロボットが弁当盛り付けを行う」は、試行錯誤と報酬(成功した動作)のフィードバックで学習する強化学習の典型例(またはロボット模倣学習)。
選択肢b(ルールベースのプログラムによる判断):機械学習ではなくエキスパートシステム(ルールベースAI)の説明。気温・積雪・風などの条件に対して「if-then」形式のルールを人間が事前定義して判断する。学習は行わず、人間が設計したルールを実行するのみ。
実務での使われ方
教師あり学習は現在最も産業応用が進んでいる機械学習手法。代表的なタスクは「分類(スパムメール判定・画像認識・医療診断)」と「回帰(株価予測・需要予測・不動産価格推定)」の2種。
本問のような「音声と結果のペアデータ収集→モデル訓練」という流れはビジネスAI開発の標準プロセスに直結する。現実のプロジェクトでは、ラベル付けコスト(人手でのアノテーション)が最大の課題であり、半教師あり学習(少量のラベルあり+大量のラベルなし)やアクティブラーニング(モデルが最も必要なサンプルを人間に問う)でコストを削減するアプローチが研究・実用化されている。
大規模言語モデル(LLM:GPT・Claude・Gemini等)は教師あり学習(次のトークン予測というラベルあり事前学習)と強化学習(人間フィードバックによるRLHF)を組み合わせた複合的な学習パラダイムで訓練される。
試験での位置づけ
ITパスポートのAI・機械学習分野で毎年出題されるテーマ。教師あり・なし・強化学習の「区分の根拠(正解ラベルの有無・報酬信号の有無)」を問う問題が定番。本問は各選択肢が異なる学習パラダイムの実例として設計されており、「何が学習データとして用意されているか」を確認することが正答への最短ルート。
上位資格では、アルゴリズムの種類(決定木・SVM・ランダムフォレスト・ニューラルネット)、過学習(オーバーフィッティング)とその対策(ドロップアウト・正則化)、交差検証・ROC曲線・精度/再現率のトレードオフ、転移学習・ファインチューニングまで踏み込んだ問題が出る。
選択肢の発展補足
選択肢a(服の画像から好みを把握し商品提案):レコメンデーションシステムの説明で、協調フィルタリング(似た好みのユーザーの行動履歴を参照)またはコンテンツベースフィルタリング(商品の特徴量を参照)に分類される。Spotifyの音楽推薦・Amazon/Netflixの商品・動画推薦がこの技術の産業応用例。「利用者が気に入った服の画像の特徴から好みを把握」は正解ラベルなしのパターン発見(教師なし)に近いが、閲覧・購入行動を暗黙の正解ラベルとして使う場合は教師あり学習の一形態ともいえる。
選択肢b(ルールベースプログラムによるスキー適否判断):人間が設計したif-thenルール(「気温-5度以下かつ積雪50cm以上ならスキー適」等)を実行するエキスパートシステム。1980年代のAI第2次ブームで流行したアプローチで、ドメイン知識の形式化が必要・新しい状況への適応が困難という限界から、機械学習に主流が移った。「あらかじめ準備しておいたルールベースのプログラム」という記述が機械学習ではないことの明示的なサイン。
選択肢c(盛り付け動作訓練を繰り返したロボット):繰り返し試行による技能習得は強化学習または模倣学習(Imitation Learning)の実例。DeepMindのAlphaGoが囲碁のルール(報酬:勝ち=+1/負け=-1)と自己対局の強化学習でトップ棋士を超えた事例が強化学習の代名詞。産業ロボットの動作訓練ではデモンストレーションから学ぶ「模倣学習(行動クローニング)」も研究が進んでいる。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和4年度 問24/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。