労働生理5血液・体温調節

衛生管理者 労働生理 問5:血液・体温調節

血液および体温調節に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 赤血球にはヘモグロビンが含まれており、ヘモグロビンは肺でO₂と結合して全身の組織にO₂を運搬し、組織でCO₂を受け取って肺に戻る。
  • 白血球は免疫に関与しており、好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球などのさまざまな種類がある。血小板は血液凝固・止血に関与し、核を持たない。
  • 暑い環境では、体表面近くの血管が拡張して皮膚への血流量が増加し、また発汗によって体表面からの蒸発散熱が促進されることで体温が低下(放熱)する。
  • 寒い環境では、体表面近くの血管が収縮して熱の放散を抑制し、骨格筋の不随意的な収縮(シバリング・寒気)によって熱産生を増加させる。
  • 血液の凝固において、フィブリノゲン(可溶性タンパク質)がフィブリン(不溶性)に変換される過程には血小板の最初の凝集は不要であり、プロトロンビンがトロンビンに変換される反応のみが関与する。正答
正答:血液の凝固において、フィブリノゲン(可溶性タンパク質)がフィブリン(不溶性)に変換される過程には血小板の最初の凝集は不要であり、プロトロンビンがトロンビンに変換される反応のみが関与する。

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誤りはオです。血液凝固のプロセスでは、まず傷ついた血管に血小板が集まって粘着・凝集し(一次止血)、その後にフィブリノゲン→フィブリンへの変換(二次止血・凝固カスケード)が起きます。血小板の凝集は「不要」ではなく、止血の最初の重要なステップです。「血小板の最初の凝集は不要」という記述が誤りです。

その他のア(赤血球とヘモグロビンのO₂運搬)・イ(白血球の種類・血小板の役割と核なし)・ウ(暑い環境での放熱)・エ(寒い環境でのシバリング)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

血液成分の基本整理:

| 成分 | 特徴 | 主な機能 |

|---|---|---|

| 赤血球 | 核なし・ヘモグロビン含有・寿命約120日 | O₂・CO₂の運搬 |

| 白血球 | 核あり・5種類 | 免疫(貪食・抗体産生) |

| 血小板 | 核なし・最小(巨核球から分離)・寿命約10日 | 止血・血液凝固 |

| 血漿 | 液体成分(タンパク質・電解質等) | 栄養・老廃物の運搬・浸透圧維持 |

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): ヘモグロビン(Hb)は鉄を含む色素タンパク質(ヘム+グロビン)。PaO₂が高い肺でHbO₂(酸化ヘモグロビン)を形成し、PaO₂が低い組織でO₂を解離させる(ボーア効果で促進)。CO₂の運搬はカルバミノヘモグロビン・炭酸水素イオン(HCO₃⁻)として行われます。
  • イ(正): 白血球の分類: 顆粒球(好中球・好酸球・好塩基球)とリンパ球・単球。好中球が最多(白血球の50〜70%)で細菌の貪食が主機能。血小板は核を持たない(骨髄の巨核球から産生される断片)。
  • ウ(正): 暑い環境での体温調節機序: 皮膚血管拡張(交感神経の血管収縮トーン低下)→皮膚への血流増加→対流放熱増加。発汗(エクリン汗腺)→蒸発散熱(蒸発潜熱による冷却)。
  • エ(正): 寒い環境での体温調節機序: 皮膚血管収縮→熱損失低減。シバリング(骨格筋の不随意収縮)→熱産生増加。甲状腺ホルモン・アドレナリン増加→代謝亢進。
  • オ(誤): 止血は一次止血(血管収縮・血小板凝集による血栓形成)と二次止血(凝固因子カスケード→フィブリン形成)の2段階です。「血小板の最初の凝集は不要」は誤り。血小板が傷口に集積し一次血栓を形成した上で、凝固カスケードが起動してフィブリンで強固な止血栓が形成されます。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

血液凝固機構(止血)は、血管損傷後に生命を維持するために不可欠なプロセスですが、過剰に活性化すると血栓症(心筋梗塞・脳梗塞・深部静脈血栓症)の原因にもなります。止血と血栓予防のバランスを理解することは職業医学・産業保健でも重要な知識です(過重労働・長時間同一姿勢作業では血栓リスクが上昇)。

体温調節の中枢は視床下部の体温調節中枢です。体温の「セットポイント」(通常37℃前後)からの乖離を感知して、放熱または熱産生のどちらかを促進する機能を持ちます。発熱(感染症・炎症)ではサイトカイン(IL-1・IL-6・TNF-α等)がセットポイントを上げる方向に作用し、「寒気(シバリング)で体温を上げた後に発汗で下げる」という経過をたどります。

【実務・条文構造】

血液凝固の2段階止血の詳細:

一次止血(血小板凝集血栓形成):

1. 血管損傷→内皮下組織(コラーゲン等)の露出

2. 血小板がコラーゲンに付着(vWF:フォン・ウィレブランド因子を介して)

3. 血小板が活性化→血小板凝集促進物質(TXA₂・ADP等)放出

4. 血小板が相互に凝集→一次止血栓(白色血栓)形成

二次止血(凝固カスケード→フィブリン形成):

5. 内因系・外因系の凝固カスケードが起動

6. 最終的にプロトロンビン→トロンビンへの変換(ビタミンK依存性因子が関与)

7. トロンビン→フィブリノゲン(可溶)→フィブリン(不溶)への変換

8. フィブリンが血小板血栓を強固にして止血栓完成(赤色血栓)

ビタミンKの役割: 凝固因子Ⅱ(プロトロンビン)・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹの合成に必要(ガンマカルボキシル化)。ワルファリン(抗凝固薬)はビタミンKの作用を阻害することで抗凝固効果を発揮します。

体温調節機構の詳細:

放熱の4メカニズム:

  • 輻射(放射): 熱を赤外線として放出(安静時最大約60%)
  • 伝導: 接触している物体への熱移動
  • 対流: 皮膚周囲の空気の流れによる熱移動
  • 蒸発散熱: 発汗・不感蒸泄(高温時に最も重要)

熱産生機構:

  • 基礎代謝・食事誘発性熱産生(日常的な熱源)
  • シバリング(骨格筋の不随意収縮): 寒冷時の即時熱産生
  • 非シバリング熱産生: 褐色脂肪組織の活性化(新生児・動物で重要)・甲状腺ホルモン・アドレナリン増加による代謝亢進

【試験での位置づけ】

血液・体温調節問題の最頻出テーマは「血液3成分の特徴(赤血球=核なし・ヘモグロビン含有/血小板=核なし・止血/白血球=核あり・5種類)」「体温調節の放熱方法(皮膚血管拡張・発汗)と熱産生(シバリング・代謝亢進)」「止血の2段階(血小板一次止血→凝固カスケード二次止血)」です。オのような「血小板の凝集が不要」誤りは、「フィブリンが重要→血小板は不要では?」という誤解から来るパターンです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ヘモグロビンのO₂親和性は血液のpH・CO₂・温度・2,3-DPGの影響を受けます(ボーア効果)。組織(低pH・高CO₂・高温)ではO₂解離が促進され、組織への酸素供給効率が高まります。これが激しい運動中に効率的な酸素供給ができる生理的根拠です。
  • イ: 白血球の種類別機能: 好中球(細菌の貪食・急性炎症)→好酸球(寄生虫・アレルギー)→好塩基球(IgE結合・アレルギー)→リンパ球(B細胞→抗体産生/T細胞→細胞性免疫)→単球(組織でマクロファージに分化・貪食・抗原提示)。
  • ウ: 暑い環境での皮膚血管拡張によって核心温度の低下が起きますが、同時に血圧が低下する傾向があります(末梢血管が開いて容量が増える)。高温作業場での熱中症リスクは「発汗による脱水+血管拡張による低血圧」が組み合わさる点にあります。
  • エ: シバリングは骨格筋の反復的な微小収縮であり、代謝活動によって熱を産生します。シバリングの熱産生能力は安静時の数倍に達しますが、持続させると疲弊します。高齢者では体温調節機能が低下しており、寒冷・熱中症への対応能力が若年者より低下します。
  • オ: 抗凝固薬(アスピリン→TXA₂合成阻害による血小板凝集抑制・ワルファリン→凝固因子合成阻害・ヘパリン→抗トロンビン効果)は一次止血と二次止血の異なる段階に作用します。これは止血機構の2段階を前提とした治療設計であり、「血小板が不要」とする考え方とは相容れません。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・血液学)。止血の2段階(一次止血=血小板凝集、二次止血=凝固カスケード)は血液生理学の基本原則として確立。

【補足】止血の最初のステップは「血小板の凝集(一次止血)」であり、血小板は不要ではない。フィブリン形成(二次止血)はその後に起きる。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。血液凝固の一次止血(血小板凝集)と二次止血(凝固カスケード)の順序は生理学・血液学の基礎。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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