労働生理6感覚器・内分泌

衛生管理者 労働生理 問6:感覚器・内分泌

感覚器および内分泌ホルモンに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 明順応は暗い場所から明るい場所に移動した際に起こり、暗順応よりも短時間で完了する。
  • 騒音性難聴は、強い騒音に長期間さらされることで内耳の有毛細胞が障害される疾患であり、最初に4,000Hz付近の聴力が低下することが特徴である。
  • インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンであり、血糖値を低下させる作用を持つ。グルカゴンは膵臓のα細胞から分泌され、血糖値を上昇させる作用を持つ。
  • 甲状腺ホルモン(チロキシン等)は代謝を促進し体温を上昇させる作用を持つ。甲状腺ホルモンが過剰になると(甲状腺機能亢進症)、心拍数が増加し体重が減少する傾向がある。
  • コルチゾール(副腎皮質ホルモン)はストレス応答として分泌が増加し、血糖値を上昇させ、炎症を抑制し、免疫機能を亢進させる作用を持つ。正答
正答:コルチゾール(副腎皮質ホルモン)はストレス応答として分泌が増加し、血糖値を上昇させ、炎症を抑制し、免疫機能を亢進させる作用を持つ。

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誤りはオです。コルチゾールは確かに血糖値を上昇させ・炎症を抑制しますが、「免疫機能を亢進させる」ではなく免疫機能を抑制(低下)させる作用があります。コルチゾール(ステロイドホルモンの一種)は免疫細胞の活性を抑制し、過剰な炎症反応を抑えます。慢性ストレスでコルチゾールが高い状態が続くと、免疫機能が低下して感染症にかかりやすくなる原因になります。「免疫機能を亢進」という部分が誤りです。

その他のア〜エはすべて正しい内容です。特にイ(騒音性難聴が4,000Hzから始まる)・ウ(インスリン=血糖低下・グルカゴン=血糖上昇)は最頻出の知識です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 暗順応は杆体(ロドプシンの再生)が必要で30分以上かかる場合があります。明順応は錐体が機能し始めるのに数秒〜1分程度で完了します。「明順応の方が速い」は正しいです。
  • イ(正): 騒音性難聴(NIHL: Noise-Induced Hearing Loss)の初期変化は4,000Hz付近(C5-dipあるいはノッチと呼ばれる)から始まります。日常会話音域(500〜2,000Hz)は後から障害されるため、初期には自覚されにくい特徴があります。
  • ウ(正): インスリン(β細胞)→血糖低下(細胞へのグルコース取り込み促進・肝グリコーゲン合成促進)。グルカゴン(α細胞)→血糖上昇(肝グリコーゲン分解促進・グルコース新生促進)。両者は拮抗的に血糖調節を行います。
  • エ(正): 甲状腺機能亢進症(バセドウ病等)の症状: 代謝亢進→体重減少・発汗増加・体温上昇・頻脈(心拍数増加)・眼球突出(バセドウ病特有)。甲状腺機能低下症(橋本病等)では逆に徐脈・体重増加・倦怠感・無気力等が生じます。
  • オ(誤): コルチゾールは副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンで、血糖上昇・炎症抑制・電解質調節の作用を持ちますが、「免疫機能を亢進させる」ではなく免疫機能を抑制します。ステロイド薬(プレドニゾロン等)が免疫抑制・抗炎症治療に使われる薬理学的根拠がここにあります。慢性ストレスによるコルチゾール過剰状態では感染症リスクが上昇します。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

内分泌系は「遠距離通信(ホルモンを血流を通じて全身に届ける)」の生体調節システムです。視床下部→下垂体→各標的臓器(甲状腺・副腎・性腺等)というヒエラルキー構造があり、フィードバック機構によって各ホルモンの分泌量が調節されています。

ストレス応答におけるHPA軸(視床下部-下垂体-副腎軸):

1. ストレス刺激→視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)分泌

2. CRH→下垂体前葉からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)分泌

3. ACTH→副腎皮質からコルチゾール分泌

4. コルチゾール→血糖上昇・炎症抑制・免疫抑制(負のフィードバックで視床下部・下垂体への作用も)

コルチゾールが免疫を「抑制」する理由: 急性ストレス下での免疫反応の過剰活性化(サイトカインストーム・自己免疫反応の亢進)を防ぎ、炎症を制御することが生存に有利であるためです。しかし慢性ストレスでは免疫抑制が過剰・持続的となり、感染防御能が低下します。

【実務・条文構造】

主要ホルモンの一覧と作用(試験頻出):

視床下部・下垂体系:

  • 成長ホルモン(下垂体前葉): 骨・筋肉の成長促進・タンパク同化・血糖上昇。睡眠中(深いNREM睡眠・第3〜4段階)に大量分泌。
  • ADH(抗利尿ホルモン・バソプレシン)(下垂体後葉): 腎集合管での水の再吸収促進→尿量減少・血圧上昇。

甲状腺・副甲状腺:

  • 甲状腺ホルモン(T₃・T₄): 基礎代謝促進・体温上昇・心拍増加・神経系発達
  • カルシトニン(甲状腺C細胞): 血中Ca低下(骨吸収抑制・尿中Ca排泄促進)
  • 副甲状腺ホルモン(PTH): 血中Ca上昇(骨吸収促進・腎でのCa再吸収促進・ビタミンD活性化)

副腎:

  • コルチゾール(副腎皮質・糖質コルチコイド): 血糖上昇・抗炎症・免疫抑制・蛋白異化・脂肪再分布
  • アルドステロン(副腎皮質・鉱質コルチコイド): Na再吸収・K排泄→血圧上昇
  • アドレナリン・ノルアドレナリン(副腎髄質): 交感神経様効果・心拍増加・血糖上昇

膵臓:

  • インスリン(β細胞): 血糖低下・脂肪合成促進・タンパク同化
  • グルカゴン(α細胞): 血糖上昇(グリコーゲン分解・糖新生促進)

聴覚と騒音性難聴の詳細:

  • 内耳蝸牛の有毛細胞: 高周波(基底部)から低周波(頂部)に対応する有毛細胞が並ぶ
  • 4,000Hzが最初に障害される理由: 蝸牛基底回転から第2回転の移行部(4,000Hz対応部位)が特に機械的ストレスを受けやすい解剖学的特徴
  • 進行: 4,000Hz→3,000Hz・6,000Hzへ拡大→その後500〜2,000Hz(会話音域)が障害

視覚の順応:

  • 暗順応: 錐体(明所視・色覚)が機能低下→杆体(暗所視・白黒)が機能開始。ロドプシン(杆体の光感受性色素)の再生に約30分かかる。完全暗順応まで30〜45分。
  • 明順応: 杆体の過剰刺激から錐体優位に切り替わる。数秒〜数分で完了。

【試験での位置づけ】

感覚器・内分泌問題の頻出は「騒音性難聴の初期は4,000Hz(会話音域ではない)」「明順応の方が暗順応より速い」「インスリン=血糖低下・グルカゴン=血糖上昇の拮抗関係」「コルチゾールは免疫抑制(亢進ではない)」の4点です。オのような「コルチゾールが免疫を亢進する」誤りは、コルチゾールが「炎症を抑制する」という知識から「免疫も亢進する?」という誤推論から来ます。ステロイド薬が免疫抑制剤として使われる事実を知っていれば防げる誤りです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 明順応・暗順応の速度の違いの記憶法:「暗い場所に入ると最初は見えない(暗順応に時間がかかる)が、明るい場所はすぐに見える(明順応が速い)」という日常体験と一致させると覚えやすいです。映画館に入ったとき最初は暗くて見えない→徐々に見えてくる過程が暗順応です。
  • イ: 騒音性難聴の予防は「騒音源の低減(工学的対策)→防音室・遮音壁の設置・騒音機械の低騒音化」「聴覚保護具(防音保護具:耳栓・防音イヤーマフ)の使用」「曝露時間の短縮」の3段階です。一度障害された有毛細胞は再生しないため「予防」が最重要です。
  • ウ: 糖尿病でインスリンが不足すると血糖値が上昇しますが、細胞への糖の取り込みが不足する「飢餓状態」に陥り、体は脂肪・タンパク質を分解してエネルギーを得ようとします。これが1型糖尿病での体重減少・ケトアシドーシスの機序です。
  • エ: バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の診断で用いる「メルゼブルクの三徴(眼球突出・頻脈・甲状腺腫)」は著名な徴候の組み合わせです。試験では症状の羅列から疾患名を当てる形式でも出題されます。
  • オ: コルチゾール(ステロイドホルモン)の免疫抑制作用の機序は、リンパ球・マクロファージの活性抑制・サイトカイン産生抑制・炎症性細胞の遊走抑制等です。この作用を薬理学的に応用したのがプレドニゾロン・デキサメタゾン等のステロイド薬であり、関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・喘息・臓器移植後の免疫抑制等に使用されます。

【根拠】医学的事実(確立した内分泌学・生理学)。コルチゾールの免疫抑制作用は内分泌生理学・薬理学の確立した知識。

【補足】コルチゾール→免疫機能を「抑制」(亢進ではない)。騒音性難聴は4,000Hzから始まる(会話音域の500〜2,000Hzではない)。明順応>暗順応の速度(明順応の方が速い)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。コルチゾールの免疫抑制作用は内分泌生理学の基本知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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