労働生理7循環器

衛生管理者 労働生理 問7:循環器

動脈硬化および血中脂質に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • LDL(低密度リポタンパク)コレステロールは血管壁にコレステロールを沈着させ、動脈硬化を促進する方向に働くため「悪玉コレステロール」と呼ばれる。
  • HDL(高密度リポタンパク)コレステロールは末梢組織から余分なコレステロールを回収して肝臓へ運ぶ逆転送を担い、動脈硬化を抑制する方向に働く。
  • 動脈硬化の主な危険因子には、高LDLコレステロール血症・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満などが含まれる。
  • HDLコレステロール値が高いほど動脈硬化のリスクが高まり、40mg/dL以上を目標に管理することが推奨されている。正答
  • 動脈硬化が進行すると血管の内腔が狭くなり、心臓の冠動脈が障害されると狭心症や心筋梗塞、脳動脈が障害されると脳梗塞を引き起こすリスクがある。
正答:HDLコレステロール値が高いほど動脈硬化のリスクが高まり、40mg/dL以上を目標に管理することが推奨されている。

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誤りはエです。HDLコレステロールは動脈硬化を抑制する「善玉コレステロール」です。HDLが高いほど動脈硬化リスクは低くなります。「HDL値が高いほどリスクが高まる」は正反対の誤りです。また40mg/dL以上という数値は「低すぎる場合のリスク上昇の目安」として使われる値で、目標の方向性が誤っています。HDLは低値が問題であり、高値が問題ではありません。

その他の選択肢はすべて正しい内容です。LDL=悪玉(血管にコレステロールを沈着させる)、HDL=善玉(コレステロールを回収する)という対比と、動脈硬化の危険因子(高LDL・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満)を確実に覚えましょう。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): LDL(低密度リポタンパク)は肝臓から末梢組織へコレステロールを運ぶ役割を担います。血中LDLが過剰になると血管内皮に侵入し、マクロファージに取り込まれて泡沫細胞となり、動脈壁にプラーク(アテローム)を形成します。これが動脈硬化の主要な機序です。
  • イ(正): HDL(高密度リポタンパク)は末梢組織から余分なコレステロールを回収し肝臓へ運ぶ「コレステロール逆転送」を担います。この作用により血管壁のコレステロール蓄積を防ぎ、動脈硬化を抑制します。「善玉」と呼ばれる理由です。
  • ウ(正): 動脈硬化の危険因子は複合的です。高LDL・高血圧・喫煙・糖尿病(インスリン抵抗性)・肥満(内臓脂肪型)・加齢・男性・家族歴などが主要因子で、これらが重なるほどリスクが急上昇します。
  • エ(誤): HDLコレステロール値が高いほど動脈硬化リスクは低下します。HDL40mg/dL未満が「低HDLコレステロール血症」であり動脈硬化リスク上昇の指標です。「HDLが高いほどリスクが高まる」は正反対の誤りです。
  • オ(正): 動脈硬化による臓器障害は冠動脈(狭心症・心筋梗塞)、脳動脈(脳梗塞・脳卒中)、腎動脈(腎硬化症)、末梢動脈(末梢動脈疾患)と多彩です。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

動脈硬化(アテローム性動脈硬化)は単なる「脂肪の沈着」ではなく、血管内皮障害→炎症→LDL酸化→泡沫細胞形成→プラーク形成という複合的な病態です。

LDLが「悪玉」と呼ばれる機序の詳細:

1. 血管内皮細胞が高血圧・喫煙・糖尿病等で障害される

2. 障害部位にLDLが侵入し、活性酸素(フリーラジカル)によって酸化LDL(oxLDL)に変性する

3. マクロファージがスカベンジャー受容体でoxLDLを取り込む(通常の受容体はフィードバック抑制がかかるが、スカベンジャー受容体はかからないため過剰取り込みが起きる)

4. コレステロールを大量に貯め込んだマクロファージが「泡沫細胞」となり、血管壁に蓄積する

5. 泡沫細胞の集積+平滑筋増殖+線維化でプラーク(アテローム)が形成される

6. プラークが不安定化して破裂すると、急性心筋梗塞・脳梗塞の引き金となる血栓形成が起きる

HDLが「善玉」と呼ばれる機序:

  • コレステロール逆転送系(RCT: Reverse Cholesterol Transport): HDLが末梢組織からコレステロールを回収し、肝臓でLDL受容体とは独立した経路で処理・排泄する
  • 抗酸化作用: LDLの酸化変性を抑制
  • 抗炎症作用: 血管内皮の炎症反応を抑制

【実務・条文構造】

脂質異常症の診断基準(空腹時血清脂質の基準値):

| 指標 | 基準値 | 判定 |

|---|---|---|

| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |

| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |

| トリグリセリド(中性脂肪) | 150mg/dL以上(空腹時) | 高トリグリセリド血症 |

| non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |

動脈硬化性疾患予防ガイドラインにおける絶対的リスク評価(FRS改変等):

  • 年齢・性別・喫煙・血圧・LDL・HDL・糖尿病を複合的に評価して10年間の冠動脈疾患発症リスクを算出
  • LDL管理目標: リスクに応じて120mg/dL未満〜70mg/dL未満と層別化

職場における健康管理(衛生管理者として知っておくべき知識):

  • 定期健康診断の脂質検査: LDL・HDL・トリグリセリド・総コレステロール
  • 保健指導の対象者選定: 「LDL高値かつHDL低値」の組合せが特にリスク高
  • 生活習慣指導: 食事(飽和脂肪酸↓・食物繊維↑)・運動(HDL上昇効果)・禁煙・適正体重維持

【試験での位置づけ】

動脈硬化問題では「HDLが高いほど動脈硬化リスクが下がる(善玉)」「LDLが高いほどリスクが上がる(悪玉)」の方向性が最重要です。エのような「HDLが高いほどリスクが高まる」という逆転した記述は典型的な引っかけです。40mg/dLという数値は「HDL低値の定義」であり、「目標値として高くする方向」の文脈で出るため「高いほど良い」が正しいです。危険因子(高LDL・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満)は全てセットで暗記しましょう。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「超悪玉コレステロール」とも呼ばれるリポタンパク(a)〔Lp(a)〕は遺伝的要因が強く、LDLよりもさらに動脈硬化リスクが高いとされます。衛生管理者試験では直接問われませんが、上位知識として有用です。
  • イ: 有酸素運動(ウォーキング・ジョギング等)はHDL上昇に有効であることが確立しています。職場の健康増進プログラムで「運動推進→HDL上昇→動脈硬化予防」という介入の根拠です。
  • ウ: 「メタボリックシンドローム」は内臓脂肪蓄積を中心に高血圧・高血糖・脂質異常が重なった状態で、動脈硬化リスクが相乗的に高まります。特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診)はこの概念に基づいています。
  • エ: 低HDL(40mg/dL未満)は独立した冠動脈疾患リスク因子です。HDLは高ければ高いほど保護的とされますが、HDLが極端に高い場合(90mg/dL超)は逆に心血管リスクと関連するという近年の研究もあり、医学は進化中です。ただし試験では「HDLは高いほど良い(動脈硬化抑制)」として答えてください。
  • オ: 心筋梗塞は「不安定プラーク」が破裂し血栓が急性に冠動脈を閉塞することで起きます。安定狭心症は「安定プラーク」による器質的な狭窄で、労作時に冠血流が不足して生じます。この違いが治療戦略(血栓溶解療法・PCI等)の選択を規定します。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・臨床医学)。LDL/HDLの役割・動脈硬化の機序・危険因子は心血管疾患予防医学の基礎概念として確立。

【補足】HDLは「善玉」で高いほど動脈硬化リスクが下がる。「HDLが高いほどリスクが高まる」は正反対の誤り。LDL高値・HDL低値・高血圧・喫煙・糖尿病が主要危険因子。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学・臨床医学)。HDLの動脈硬化抑制作用・LDLの促進作用は確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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