労働生理66呼吸

衛生管理者 労働生理 問66:呼吸

外呼吸と内呼吸(細胞呼吸)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 外呼吸(肺呼吸)とは肺胞と肺毛細血管血液の間のガス交換を指し、肺胞から血液中にO₂が取り込まれ、血液中のCO₂が肺胞に放出される過程である。
  • 内呼吸(細胞呼吸)とは体組織の毛細血管血液と細胞の間のガス交換を指し、細胞へO₂が供給されてCO₂が産生・放出される過程を含む。
  • ガス交換(外呼吸・内呼吸ともに)は能動輸送によって行われ、エネルギー(ATP)を消費してO₂とCO₂を分圧差に逆らって移動させる。正答
  • 一酸化炭素(CO)はヘモグロビンと酸素よりも約250倍強い親和性で結合し、ヘモグロビンのO₂輸送能を障害する。このため一酸化炭素中毒では外呼吸(肺でのガス交換)は行われているが、酸素を組織へ運搬できない状態となる。
  • 安静時の成人の呼吸数は1分間に約15〜20回であり、1回換気量は約500mLであるため、安静時の分時換気量は約7.5〜10L/分となる。
正答:ガス交換(外呼吸・内呼吸ともに)は能動輸送によって行われ、エネルギー(ATP)を消費してO₂とCO₂を分圧差に逆らって移動させる。

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誤りはウです。肺胞でのガス交換(外呼吸)も組織でのガス交換(内呼吸)も、O₂とCO₂は分圧差による単純拡散で移動します。ATPを消費する能動輸送ではありません。濃度(分圧)が高い側から低い側へ自然に拡散します。肺胞ではO₂分圧が血液より高いためO₂が血液に入り、CO₂は血液より肺胞の分圧が低いためCO₂が血液から肺胞へ出ます。

その他の選択肢は正しい内容です。外呼吸=肺胞と血液間のガス交換(ア)。内呼吸=組織と血液間のガス交換(イ)。COがヘモグロビンに高親和性で結合し酸素運搬を障害する(エ)。安静時の呼吸数・1回換気量・分時換気量の数値(オ)はすべて正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 外呼吸(肺呼吸)は肺胞腔と肺毛細血管の間で行われます。肺胞のPO₂(約100 mmHg)> 肺毛細血管血液のPO₂(混合静脈血: 約40 mmHg)→O₂が血液に拡散。血液のPCO₂(約46 mmHg)> 肺胞のPCO₂(約40 mmHg)→CO₂が肺胞に拡散。薄い肺胞膜(厚さ0.3〜0.5μm)と広大な肺胞面積(約70m²)が効率的なガス交換を可能にします。
  • イ(正): 内呼吸(組織呼吸)は組織毛細血管と細胞の間で行われます。組織PO₂(約20〜40 mmHg)< 動脈血PO₂(約100 mmHg)→O₂が細胞へ拡散。細胞内のPCO₂(高い)→組織毛細血管のPCO₂→拡散。「内呼吸」は細胞でのエネルギー産生(ミトコンドリアの酸化的リン酸化)を指す場合もありますが、ガス交換の文脈では「組織-血液間のガス交換」を指します。
  • ウ(誤): ガス交換は単純拡散(受動輸送)によって行われます。分圧差(濃度差)を駆動力として、高圧側から低圧側へ自然に移動するため、エネルギー(ATP)は不要です。拡散の速度はFickの拡散法則(拡散速度 ∝ 分圧差 × 拡散面積 × 拡散係数 / 膜厚さ)で規定されます。「能動輸送・ATP消費」という記述は完全に誤りです。
  • エ(正): 一酸化炭素(CO)のヘモグロビンへの親和性はO₂の約200〜250倍です(一般に約250倍とされる)。CO中毒では①ヘモグロビン(Hb)がCOHb(カルボキシヘモグロビン)となりO₂輸送不能②残存する正常Hbの酸素解離曲線が左方偏位(O₂を組織に渡しにくくなる)という二重の障害が生じます。外呼吸(肺でのガス交換)は機能していても、血液のO₂輸送能が障害されている点が特徴です(「外呼吸が正常でも組織は低酸素」)。
  • オ(正): 安静時の標準値: 呼吸数15〜20回/分・1回換気量(Vt)約500mL→分時換気量(MV)= 15×500 = 7,500mL = 7.5L/分。ただし肺胞に到達する有効換気量(肺胞換気量)は死腔量(約150mL)を差し引いた約350mL×15回/分 = 5.25L/分です。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

#### 1. 外呼吸・内呼吸の詳細ガス交換メカニズムとFickの法則

ガス交換はFickの拡散法則で定量的に理解できます:

拡散速度(V)= D × A × ΔP / T

  • D: 気体の拡散係数(CO₂はO₂の約20倍)
  • A: 拡散面積(肺胞全体で約70m²・運動時に毛細血管が開くと増加)
  • ΔP: 分圧差(肺胞PO₂ - 静脈PO₂ または 静脈PCO₂ - 肺胞PCO₂)
  • T: 膜厚(肺胞膜: 約0.3μm・浮腫・肺線維症では厚くなって拡散障害)

肺胞でのガス分圧(正常安静時):

| 場所 | PO₂ (mmHg) | PCO₂ (mmHg) |

|------|-----------|-------------|

| 大気 | 159 | 0.3 |

| 肺胞気 | 100 | 40 |

| 肺静脈(動脈血) | 100 | 40 |

| 肺動脈(混合静脈血) | 40 | 46 |

| 組織(安静時) | 20〜40 | 46〜50 |

CO₂は拡散係数がO₂の約20倍あるため(水溶性が高く組織を拡散しやすい)、O₂より約20倍速く拡散します。これがPCO₂の分圧差(6 mmHg)がPO₂の分圧差(60 mmHg)より小さくても効率よくCO₂を排出できる理由です。

#### 2. 血液中のCO₂輸送形態(外呼吸・内呼吸の理解に必須)

CO₂の血液中輸送形態:

1. 重炭酸イオン(HCO₃⁻)として(約70%): CO₂+H₂O → H₂CO₃ → H⁺+HCO₃⁻(炭酸脱水酵素=carbonic anhydrase が赤血球内で触媒)。HCO₃⁻が血漿に出て(Cl⁻が赤血球内に入る: ハンバーガーシフト)。

2. カルバミノ化合物として(約20〜23%): CO₂がヘモグロビンのアミノ基に直接結合(カルバミノヘモグロビン)

3. 溶解型(約7%): 血漿中にCO₂が物理的に溶解

O₂の血液中輸送形態:

1. ヘモグロビン結合型(約98〜99%): HbO₂(オキシヘモグロビン)として

2. 溶解型(約1〜2%): 血漿中に物理的溶解(PaO₂×0.003 mL/dL/mmHg)

#### 3. 一酸化炭素中毒の病態と職場予防

一酸化炭素(CO)中毒の詳細機序:

1. CO吸入→肺胞でのCO分圧上昇→拡散でHbに結合(O₂と競合)

2. COHb(カルボキシヘモグロビン)形成: 可逆的結合だがO₂の250倍の親和性

3. ボーア効果の逆(左方偏位): 残存HbO₂がO₂を組織に渡しにくくなる

4. ミトコンドリアのチトクロームcオキシダーゼへのCO結合: 細胞内の電子伝達系の直接阻害(内呼吸の障害)→細胞レベルの窒息

COHb濃度と症状:

  • <10%: ほぼ無症状(喫煙者は5〜10%でベースライン)
  • 10〜20%: 頭痛・めまい
  • 20〜40%: 意識障害・失神
  • 40〜60%: 重篤な意識障害・痙攣
  • >60%: 致死的

職場での予防と対応(衛生管理者の実務):

  • リスク職場: 鉄鋼・化学・鉱山・ずい道・燃焼器具使用場所
  • 換気の確保(局所排気装置・全体換気)
  • COアラームの設置(許容濃度: 20 ppm TWA)
  • 早期発見: COHb測定(パルスCO-オキシメータ)・動脈血ガス分析
  • 治療: 新鮮空気・高流量O₂(COHbの半減期: 大気では5時間→高濃度O₂で1.5時間→高圧O₂で30分)

#### 4. 衛生管理者試験での頻出論点と職場への応用

試験では「外呼吸=肺胞-血液間のガス交換・内呼吸=組織-細胞間のガス交換」「ガス交換は分圧差による単純拡散(能動輸送・ATP不要)」「CO₂の拡散係数はO₂の約20倍」「CO中毒: COがHbに250倍の親和性で結合→O₂輸送障害(外呼吸は正常・内呼吸が障害)」「安静時呼吸数15〜20回/分・1回換気量500mL・分時換気量7.5〜10L/分」が頻出です。ウの誤りは「能動輸送・ATP消費」という拡散と能動輸送の混同です。

【根拠】医学的事実(確立した呼吸生理学)。ガス交換が単純拡散(分圧差駆動)であること・Fickの拡散法則・CO₂の輸送形態・CO中毒の機序は確立した知識。

【補足】ウが誤り:ガス交換(外呼吸・内呼吸)は分圧差による単純拡散で行われる(ATPを消費する能動輸送ではない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した呼吸生理学)。ガス交換(外呼吸・内呼吸)は分圧差による単純拡散によって行われ、能動輸送ではない。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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