基本情報 平成26年度 春期 問72:ストラテジ系に関する問題
コンカレントエンジニアリングの説明として, 適切なものはどれか。
- a機能とコストとの最適な組合せを把握し, システム化された手順によって価値の 向上を図る手法
- b製品開発において, 設計, 生産計画などの工程を同時並行的に行う手法正答
- c設計, 製造, 販売などのプロセスを順に行っていく製品開発の手法
- d対象のシステムを解析し, その仕様を明らかにする手法
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答えは b です。
「コンカレント(concurrent)」は「同時並行の」という意味の英語。
「コンカレントエンジニアリング」は、製品開発で設計と生産計画を同時に進める手法。
普通は「設計→製造→販売」と順番にやるけど、同時並行でやれば全体の期間が短くなる。チーム間の連絡が増えますが、後戻りも減ります。
👉 覚え方:「コンカレント=同時並行。順番待ちしない」。
ほかの選択肢:a バリューエンジニアリング(価値工学)/c ウォーターフォール的な順次進行/d リバースエンジニアリング。
なぜこれが正解か
正解は b。コンカレントエンジニアリング(Concurrent Engineering, CE)は製品開発において、設計・生産技術・購買・製造・販売等の各工程を同時並行的に進める手法。各部門が独立して順次作業するのではなく、開発初期から多機能チームで連携し、設計変更を最小化・開発期間を短縮する。
各選択肢の解説
- a「機能とコストの最適な組合せ把握、価値の向上」:バリューエンジニアリング(VE)/価値工学。
- b「設計・生産計画などの工程を同時並行的に行う」:コンカレントエンジニアリング(正解)。
- c「設計→製造→販売を順に行う」:シーケンシャルエンジニアリングまたはウォーターフォール型の従来手法。
- d「対象システムを解析し仕様を明らかにする」:リバースエンジニアリング。
覚え方・ひっかけ注意
「コンカレント=Concurrent=同時並行」で英単語から覚える。対比概念はシーケンシャル(Sequential)=順次。CEはトヨタの「シミュレーニアスエンジニアリング」が源流で、製品開発期間(リードタイム)短縮の主要手法。
類似概念のチェック:
- コンカレントエンジニアリング: 設計と製造の並行
- アジャイル開発: ソフトウェア開発の反復的進化(コンカレントの一形態)
- DevOps: 開発と運用の並行・統合
- デザイン思考: ユーザー中心の反復設計
すべて「縦割り排除・部門間連携・並行作業による速度向上」という共通哲学を持つ。
理論的背景
コンカレントエンジニアリング(CE)はDOD(米国国防総省)が1980年代後半に体系化した製品開発手法で、IDA Report R-338(1988)で正式定義: 「製品とそれに関連する製造プロセス・サポート機能を統合的・並行的に設計する手法」。背景は日本企業(特にトヨタ・ホンダ)の短い製品開発サイクルに対抗するためで、Toyota Production System(TPS)の影響を強く受ける。
核となる要素:
1. 多機能チーム(Cross-Functional Team): 設計・製造・購買・販売・サービスから人員を集めて統合チームを編成
2. 早期統合(Early Integration): 開発初期段階から下流工程の関係者を巻き込む
3. DFX(Design for X): Manufacturing/Assembly/Test/Service/Environment/Cost等の「製造容易性設計」「組立容易性設計」を初期から考慮
4. デジタルモックアップ(DMU): CADデータを共有しデジタル空間で統合検証
5. 継続的フィードバック: 各工程からの情報を設計に反映するループ
効果: 開発リードタイム30-70%短縮、設計変更件数50%削減、品質向上、コスト削減(一般に量産前のコスト確定)。
実務での使われ方
自動車業界では新車開発期間を5年→2-3年に短縮するためCEが標準化。トヨタの「主査制度」、ホンダの「LPL(Large Project Leader)制度」がCE実装例。航空機(ボーイング777のDigital Mockup)、家電(パナソニック・ソニーの新製品開発)、半導体(Apple Silicon設計)等でも採用。
IT/ソフトウェア領域ではアジャイル開発(Scrum、XP、Kanban)がCEのソフトウェア版と位置付けられる。DevOpsは開発と運用のCE的統合、DesignOpsは設計とエンジニアリングの統合。
2020年代の進化系:
- デジタルツイン: 物理製品・プロセスの仮想空間複製で統合シミュレーション
- PLM(Product Lifecycle Management): Siemens Teamcenter、PTC Windchill、Dassault 3DEXPERIENCE等の統合PLMプラットフォーム
- モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE): SysMLによる統合モデリング
- CI/CD パイプライン: ソフトウェア開発のCE完全自動化
試験での位置づけ
FE/AP/ST/PMで頻出。①コンカレントエンジニアリング、②バリューエンジニアリング、③リバースエンジニアリング、④フォワードエンジニアリング、⑤リエンジニアリング、⑥開発手法(ウォーターフォール/アジャイル/スパイラル/RAD)、が主要論点。本問は概念識別問題で基礎。
選択肢の発展補足
他のエンジニアリング手法との関連:
- バリューエンジニアリング(VE): 「機能/コスト」で価値を分析、コスト削減・価値向上。L.D.Miles(GE、1947)が提唱、日本では建設業・製造業で広く採用
- リバースエンジニアリング: 完成品から設計仕様を逆抽出。互換製品開発・脆弱性解析・知財調査・古いシステムのモダナイゼーション
- フォワードエンジニアリング: 要件・設計から実装へ通常の流れ
- リエンジニアリング: BPR(Business Process Reengineering)として業務プロセス抜本見直し(Hammer & Champy 1993)
CEの哲学はTrickle-Down経済の対極にある「水平統合・並行進化」で、現代のプラットフォームエンジニアリング「Platform as a Product」「Internal Developer Portal(IDP)」にも継承される。生成AI時代では、設計→製造→テストのループにAIエージェントが介在し、より高速なコンカレント開発が実現しつつある。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 基本情報技術者試験 平成26年度 春期 問72/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。