行政書士 行政法 問12:国家賠償法1条・公務員の個人責任・故意過失・求償
国家賠償法第1条が定める国又は公共団体の損害賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア公務員が職務執行中に故意又は過失により第三者に損害を与えた場合、被害者は、当該公務員個人に対して直接損害賠償を請求することができる。
- イ国家賠償法第1条の「公権力の行使」は、権力的な行政作用(命令・強制等)に限られ、非権力的な行政作用(行政指導・非権力的事実行為等)には適用されない。
- ウ国家賠償法第1条の「公務員」には、国又は公共団体の正規の職員のみならず、その権限を委任・委託された私人も含まれる場合がある。
- エ公務員が職務上不法行為をした場合、国又は公共団体が賠償責任を負うが、当該公務員に故意又は重過失がある場合に限り、国等は当該公務員に対して求償権を行使することができる。正答
- オ国家賠償請求をするためには、その前提として行政訴訟(取消訴訟等)により当該処分を取り消しておく必要がある。
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エが正しいです。国賠法1条2項は「公務員に故意又は重過失があったときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定めています。求償の要件は「故意又は重過失」であり、軽過失の場合は求償できません(エが正しい)。アは「公務員個人に直接請求できる」としている点で誤りです(判例は原則として公務員個人への直接請求を認めていない)。オは「取消訴訟での取消しが前提」としている点で誤りです(公定力と国賠の関係・行政法問02で扱った論点と同様)。ウは「委託された私人も含まれる」として概ね正しい内容です。
国賠法1条の各論点を整理します。「公権力の行使」の範囲(イ): 最高裁の解釈では、権力的行政作用だけでなく、非権力的行政作用(行政指導等)も「公権力の行使」に含まれうるとされています(広義説・通説)。「権力的行政作用に限る」(イ)は誤りです。「公務員」の範囲(ウ): 国賠法上の「公務員」は国家公務員法・地方公務員法上の公務員に限らず、公権力の行使に携わる者を広く含むと解されています(外形標準説との関係)。委任・委託を受けた私人も含まれる場合があり(ウが概ね正しい)。公務員個人の責任(ア): 最高裁は「国又は公共団体が賠償責任を負う場合に、公務員個人は被害者に対して損害賠償責任を負わない」という立場を採用しています(最判昭30.4.19等・※未確認)。アが誤りの根拠。求償権(エ正答の根拠): 1条2項「故意又は重過失があったとき」が求償要件。軽過失では求償不可。国賠と取消訴訟の関係(オ): 取消しの前置は不要(行政法問02・最判昭36.4.21で確認済み)。
【理論的背景】
国家賠償法1条は、明治憲法下での国家無答責の原則(国は不法行為責任を負わないという原則)を廃止し、現行憲法17条(「何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる」)を受けて制定された法律です(1947年制定)。国が直接責任を負うという「代位責任説」と国の固有の責任という「自己責任説」の学説対立がありますが、日本の判例・通説は代位責任説を採用しています。代位責任説によれば、国が代わって責任を負う以上、公務員個人は被害者に対して直接の責任を負わない(アが誤りの理論的根拠)。
【実務・条文構造】
国賠法1条の構造分析:
- 1条1項(国等の責任): 公権力の行使+公務員の故意過失+損害発生+相当因果関係→国又は公共団体が賠償責任を負う。
- 1条2項(求償権): 公務員に故意又は重過失がある場合のみ、国等は当該公務員に求償できる(軽過失では求償不可)。これは公務員が萎縮せず職務に専念できるよう配慮した規定(公務員保護の観点)。
公権力の行使の「外形標準説」(ウの根拠):国賠法1条の「職務を行うについて」の解釈として、最高裁は「客観的外形上職務行為として認められれば足り、主観的な職務遂行意思は不要」という外形標準説を採用しています(最判昭31.11.30等・※未確認)。この立場によれば、委任・委託を受けて国の権限を行使する私人(例:検疫業務を委託された機関の職員等)も「公務員」として国賠法1条の対象となりうる。
【試験での位置づけ】
本論点の典型的な引っかけは「公務員個人への直接請求可(ア)」「求償要件が軽過失でも可(エの逆)」「国賠には取消訴訟の前置が必要(オ)」の3パターンです。求償権の要件「故意又は重過失」(軽過失では不可)は毎年問われる重要数字論点です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。国が代位責任を負う場合、公務員個人は被害者に直接賠償責任を負わないというのが判例の立場(代位責任説・最判昭30.4.19等・※未確認)。
- イ: 誤り。「公権力の行使」は権力的行政作用に限らず、非権力的な公的活動(行政指導等を含む広義の公権力の行使)にも及ぶと解されている(広義説・通説)。
- ウ: 概ね正しい。外形標準説によれば、国・公共団体から委任・委託を受けて公権力の行使を行う私人も「公務員」に含まれうる。
- エ: 正しい(正答)。1条2項の求償要件は「故意又は重過失」。軽過失では求償権なし。この規定は公務員の職務専念義務との関係で重要。
- オ: 誤り。国賠請求に取消訴訟の前置は不要(公定力は国賠請求を妨げない)。行政法問02で扱った論点と同旨。
【根拠条文】
国家賠償法 第1条第1項(国等の損害賠償責任・公権力の行使・公務員の故意過失)、第1条第2項(公務員への求償権・故意又は重過失要件)
【参照判例】
公務員個人責任に関する判例(最判 昭和30年4月19日・※未確認)
【補足】
「求償=故意又は重過失(軽過失では不可)」は行政書士試験必須暗記。「公務員個人への直接請求不可(代位責任説)」とセットで覚えること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第1条第1項(公権力の行使による損害賠償)、第1条第2項(求償権) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。