行政書士 行政法 問44:行政手続法
行政手続法が定める申請に対する処分の手続に関し、複数の行政機関が関与する場合について述べた次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア申請者が行政庁に申請書を提出した場合、当該申請書の受付事務を処理する機関(受付窓口となる行政機関)のみが行政手続法の適用対象となり、実際に処分をする権限を持つ行政機関は行政手続法の適用対象とならない。
- イ申請に対する処分について複数の行政機関が関与する場合(当該申請が他の行政庁の審査を経て初めて処分が行われる場合等)、先行する審査を担当する行政機関と処分を行う行政機関の双方が、それぞれ行政手続法上の義務を負う。正答
- ウ行政手続法は、申請がその事務所に到達したとき「遅滞なく審査を開始しなければならない」と定めているが、この義務は申請を受け付けた行政庁のみが負い、最終的に処分をする行政庁は処分時まで審査を開始する義務を負わない。
- エ行政庁は、申請に対する処分を他の行政庁に対して諮問している期間中は、申請者からの審査状況の問い合わせに答える義務はなく、諮問回答が出るまで審査状況を秘密にすることが認められる。
- オ申請に関連する事務が複数の行政庁に分散している場合、各行政庁はそれぞれ独立して処分基準を定めることができるが、申請者の便宜のために、共通の処分基準を策定することが行政手続法上の義務とされている。
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行政手続法第11条は、複数の行政機関が申請の処理に関与する場合について規定しています。行政庁が申請に対する処分を行うにあたって、他の行政庁の審査・意見・許可等を必要とする場合の手続を定めています。
イが正しい。 複数の行政機関が申請処理に関与する場合、それぞれの行政機関が行政手続法上の義務を分担して負います。一部の機関だけが行政手続法の適用を受けるのではなく、それぞれの役割に応じた義務を負います。
ア(誤): 受付窓口だけが行政手続法の適用対象となるのではなく、処分権限を持つ行政機関も行政手続法の義務を負います。ウ(誤): 最終処分を行う行政庁も申請の受付・審査を担当する立場にある場合は審査開始義務を負います。エ(誤): 行手法9条により、審査状況を申請者に教示する努力義務があります。
行政手続法第11条(複数行政機関が関与する場合)の概要:
「申請に対する処分を行う権限を有する行政庁は、申請者の利便その他正当な理由により申請の審査に関する事務を他の行政機関に委ねる場合又は当該申請に係る事項について他の行政機関に照会・諮問する場合その他複数の行政機関が審査に関与する場合においては、これらの行政機関は、相互に連絡をとり、当該申請に係る審査が遅滞なく終了するよう努めなければならない」(要約)。
イが正しい理由: 複数の行政機関が申請処理に関与する場合、それぞれが行政手続法上の役割・義務を負います。一方の機関だけが義務を負い他方が免除されるわけではありません。
審査状況の教示(行手法9条)の義務(エが誤りの根拠):
行手法9条1項「行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない」(努力義務)。諮問中であっても状況を秘密にすることは9条の趣旨に反します。
共通の処分基準の策定(オが誤りの根拠):
行手法12条は処分基準の設定を努力義務としており、複数行政庁の共通基準策定を「義務」とする規定はありません。各行政庁が独立して処分基準を定めることが原則です。
【理論的背景】
複数の行政機関が申請の処理に関与する場合の問題は、現代行政の複雑化・多機関化から生じます。例えば大規模施設の建設許可には、建築基準法(建築確認)・消防法(消防設備の許可)・食品衛生法(食品取扱施設の許可)・環境法令(環境アセスメント)等の複数の手続が並行することがあります。この場合の行政手続法の適用関係と、各機関間の連絡・協力が「申請者の便宜」と「行政の実効性」の両面で重要です。
【実務・条文構造】
行手法11条の具体的適用場面:
1. 申請書を受け付ける窓口機関(受付行政庁)と実際に処分をする権限機関(処分行政庁)が異なる場合(地方整備局が受け付けて大臣が処分する等)。
2. 処分行政庁が他の行政庁に諮問・意見照会する場合(環境大臣への意見照会等)。
3. 複数の許認可を同時に申請する「ワンストップ申請」の場合。
行政手続の一体化と申請者の便宜: 行政手続法11条は「相互に連絡をとり、遅滞なく終了するよう努めなければならない」という努力義務を課しています。実務では、複数の許認可の申請を一括して受け付けるワンストップサービスや、複数省庁に共通の申請書式の統一が「規制改革・行政手続簡素化」の一環として進められています。
電子化・デジタル化の影響: デジタル行政推進法等の制定により、複数機関の申請処理をオンラインで完結させる仕組みが整備されつつあります。この場合でも行政手続法の基本原則(審査基準の公表・標準処理期間の公示・理由提示等)は適用されます。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「複数行政機関が関与する申請の処理(行手法11条)」「審査状況の教示義務(9条・努力義務)」「処分基準の共通化が義務かどうか(義務ではない)」が出題されます。行手法11条の趣旨(相互連絡・遅滞防止の努力義務)と、各機関が独立して行政手続法上の義務を負うという原則を押さえてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 行政手続法は処分権限を持つ行政機関に対しても適用されます。受付窓口(受取機関)と処分機関の双方が行政手続法の適用対象となり、それぞれの役割に応じた義務を負います。
- イ(正): 各行政機関が行政手続法上の義務を分担して負うという原則の正確な表現。
- ウ(誤): 処分権限を持つ行政庁も申請の審査に関与する立場から、遅滞なく審査を進める義務を負います。「処分時まで義務なし」は誤り。
- エ(誤): 行手法9条の審査状況教示の努力義務は諮問中でも適用されます。ただし諮問中という状況は「審査の進行状況」として申請者に伝えることが可能な情報です。
- オ(誤): 複数行政庁の共通処分基準の策定は行政手続法上の義務ではありません。行手法12条の処分基準の設定は各行政庁の努力義務であり、共通化は任意。
【根拠条文】行政手続法 第9条(審査の進行状況等の教示:努力義務)、第11条(複数の行政機関が関与する場合の審査)、第12条(処分基準)
【補足】複数機関が申請処理に関与する場合、各機関が行政手続法上の義務を負う。諮問中でも審査状況の教示努力義務あり(9条)。共通処分基準の策定は義務ではない。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第11条(複数の行政機関が関与する場合の審査の促進)、第9条(審査の進行状況の教示)、第12条(処分基準)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。