行政法75行政事件訴訟法・関連請求の移送・関連する損害賠償請求

行政書士 行政法 問75:行政事件訴訟法・関連請求の移送・関連する損害賠償請求

行政事件訴訟法が定める関連請求の移送・併合(取消訴訟と損害賠償請求等の関係)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 取消訴訟の係属中に、当該処分に係る国家賠償請求訴訟を別訴として提起することはできない。取消訴訟と国家賠償請求訴訟は必ず同一の裁判所に同一の訴訟として提起しなければならない。
  • 取消訴訟に関連する損害賠償請求(国家賠償請求等)は、取消訴訟の係属する裁判所に「関連請求」として移送を求めることができ、また当初から同一の裁判所に請求の併合として提起することができる。正答
  • 取消訴訟と同一の処分に関連する損害賠償請求について、国家賠償法に基づき民事訴訟として提起した場合、取消訴訟の勝訴(取消判決の確定)は国家賠償訴訟における「違法性」の判断を当然に拘束する。
  • 取消訴訟において処分が適法と判断されて原告の請求が棄却(取消訴訟の敗訴)確定した場合でも、国家賠償請求訴訟において処分の違法性を独立して主張することができる。
  • 取消訴訟と国家賠償請求訴訟は全く別の訴訟であり、取消訴訟の確定判決は国家賠償訴訟において何らの効力も持たない。
正答:取消訴訟に関連する損害賠償請求(国家賠償請求等)は、取消訴訟の係属する裁判所に「関連請求」として移送を求めることができ、また当初から同一の裁判所に請求の併合として提起することができる。

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イが正しいです。行訴法13条・16条は、取消訴訟と関連する損害賠償請求等(国家賠償請求を含む)を同一裁判所で審理することを認める規定を設けています。関連する損害賠償請求訴訟は、取消訴訟の係属する裁判所への移送を求めることができ(13条)、また最初から同一裁判所に請求を併合して提起することもできます(16条)。アは誤りで、別訴として提起することも可能であり、必ず同一訴訟として提起しなければならないわけではありません。ウは誤りで、取消訴訟の勝訴判決が国家賠償訴訟の違法性判断を「当然に拘束する」(自動的に拘束する)わけではありません(参照的効力はあるが自動的拘束ではない)。エは正しい内容で(取消訴訟の敗訴確定後も国賠訴訟で独立した違法主張が可能)、オは誤りで(取消訴訟の確定判決は参照的効力を持つ)。

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関連請求の移送(13条)と請求の客観的併合(16条):

13条(関連請求の移送): 処分の取消訴訟が係属している裁判所に、「関連請求」(処分に関連する損害賠償請求・不当利得返還請求等)を移送することができます(原告または被告の申立て・または職権)。これにより同一の事実関係に関する訴訟を一つの裁判所で審理でき、証拠の重複調査を避けられます。

16条(請求の客観的併合): 取消訴訟(または抗告訴訟)に関連する国家賠償請求・損失補償請求等を当初から同一の裁判所に「客観的に併合」して提起することができます。これにより一度の訴訟手続で処分の取消しと損害賠償の両方を求めることができます。

ウが誤りの根拠(取消判決と国賠訴訟の関係): 取消訴訟の勝訴判決(処分が違法と確定)は、国家賠償訴訟の違法性判断を「自動的に拘束する」わけではありません。既判力(主文の判断に及ぶ)は取消訴訟と国賠訴訟では訴訟物が異なるため(取消訴訟の訴訟物:処分の違法性 / 国賠訴訟の訴訟物:損害賠償請求権)、既判力の及ぶ範囲が重ならない場合があります。ただし事実上・参照的に違法判断が尊重されます。

エが正しい理由(取消訴訟敗訴後の国賠訴訟): 取消訴訟で敗訴(処分が適法と確定)した後でも、国賠訴訟で「処分は違法だった(故意・過失があった)」と主張することは理論上可能です(訴訟物が異なる)。ただし取消訴訟の判断が参照的に影響することは否定できず、実務上の困難は大きい。

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【関連請求制度の体系(13条・16条・17条)】

行訴法は取消訴訟(抗告訴訟)と関連する請求を一体的に審理するための仕組みを設けています。

13条(移送):関連する民事上の請求(損害賠償・不当利得等)が別の裁判所に係属している場合、取消訴訟の係属裁判所に移送を求めることができます。移送の要件:①関連性(「事件の紛争の基礎が共通」等)、②審理の効率性・公正性(同一裁判所で審理することが適当)。

16条(請求の客観的併合):取消訴訟と関連する請求を最初から同一訴状で提起することを認めます。「訴訟物の違い」はあっても、事実関係が共通する請求であれば併合可能です。典型例:処分の取消し(行政訴訟)+当該処分による損害賠償(国賠)を同一訴状で請求。

17条(共同訴訟):共同原告の場合(複数人が共同して取消訴訟を提起する場合)。

【取消訴訟と国賠訴訟の関係の詳細分析(ウ・エ・オの根拠)】

取消訴訟と国家賠償請求訴訟は、訴訟物・審理の観点から以下の関係にあります。

訴訟物の違い:

  • 取消訴訟:「処分の違法性」→取消判決により処分が遡及的に効力を失う
  • 国賠訴訟:「損害賠償請求権の存否」→要件(違法な公権力の行使・過失・損害・因果関係)を独立して判断

既判力の関係:

  • 取消訴訟の確定判決の既判力(主文に及ぶ)は「当該処分が違法で取消しに相当するか」という問題に及ぶ
  • 国賠訴訟の判断対象は「当該公権力行使が違法だったか・過失があったか・損害が生じたか」であり、完全に同一ではない
  • したがって取消訴訟の「違法」の認定と国賠訴訟の「違法」は同一ではない可能性がある(違法性相対説・絶対説の論争)

違法性相対説の立場:取消訴訟の違法(行政法規の客観的違反)と国賠訴訟の違法(国民に対する被侵害利益・注意義務違反)は別概念→取消訴訟の勝訴が国賠の違法を自動的に意味しない(ウが誤りの核心)。

取消訴訟の勝訴後の国賠訴訟:処分が取消訴訟で違法と確定した場合、国賠訴訟でも「違法」を主張しやすくなりますが、「過失」(職員が違法と知りつつ処分したか・通常の注意を払えば違法と分かったか)という別の要件が残ります。取消訴訟の勝訴判決は「参照的効力」として重要な証拠・判断資料となりますが、自動的に国賠の「違法+過失」を認定するものではありません。

取消訴訟の敗訴後の国賠訴訟(エの根拠):取消訴訟で「処分は適法」と確定した後、国賠訴訟で「実は違法だった(過失があった)」と主張することは理論上可能です(訴訟物が異なるため取消訴訟の判断が国賠訴訟の「違法」を拘束しない)。ただし取消訴訟の適法判断が参照的に強い影響を持つため、実務的成功は極めて困難です。

【違法性の一致論と独立論】

学説・判例上の主要な対立:

違法性一致論:取消訴訟で違法と認定されれば国賠訴訟でも違法(過失の問題のみが別途)。逆に取消訴訟で適法とされれば国賠でも適法とすべき→既判力的一致を求める立場。

違法性独立論:取消訴訟と国賠訴訟の「違法」概念は別物→一方の判断が他方を拘束しない(公定力の廃棄・国賠法1条の独立性の観点)。

判例・実務の傾向:取消訴訟の確定判決の既判力が国家賠償訴訟の「違法」判断にどこまで及ぶかは、違法性の捉え方(相対説・絶対説)とも関連し、見解が分かれる論点です。実務では、取消訴訟の判断を重要な事実・法的評価として参照しつつ、国家賠償訴訟においては「違法」に加えて「過失」等の独自の要件を別途審理するのが一般的です。

【事情判決後の損害賠償との関係(行訴法31条2項)】

事情判決(31条1項)がなされた場合(処分は違法だが取り消さない・棄却判決+違法宣言)、原告は31条2項に基づき「相当の損害を受けた旨」の確認を申立て、別途の損害賠償請求訴訟における基礎を作ることができます。この仕組みは取消訴訟と国賠訴訟の連携の一形態であり、事情判決という特殊な場面での「取消しはしないが違法宣言+損害賠償請求の基礎」という連携設計を示しています。

【根拠条文】

行政事件訴訟法 第13条(関連請求に係る訴訟の移送)、第16条(請求の客観的併合)、第31条第2項(事情判決後の損害賠償確認の申立て)

【参照条文】

国家賠償法 第1条第1項(公権力の行使による損害賠償)

【補足】

取消訴訟の確定判決は国賠訴訟の「違法」を自動的に拘束しない(違法性相対説・訴訟物の差異)。関連する損害賠償請求は取消訴訟と移送・客観的併合で同一裁判所で審理可能(13条・16条)。取消訴訟敗訴後も国賠で独立した違法主張は理論上可能(ただし実務上困難)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第13条(関連請求に係る訴訟の移送)・第16条(請求の客観的併合) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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