行政法99損失補償・収用と使用の区別・残地補償

行政書士 行政法 問99:損失補償・収用と使用の区別・残地補償

土地収用における損失補償の内容に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 土地収用における損失補償は、収用される土地そのものの価値(収用補償)のほか、収用に伴って所有者や関係権利者が被るその他の損失(通損補償・通常生ずべき損失の補償)も含まれる。
  • 土地の一部が収用される場合(残地がある場合)において、収用後の残地の価値が著しく減少したときは、残地の損失についても補償が必要となることがある(残地補償)。
  • 土地収用における損失補償の対象は、土地所有権のほか、地上権・地役権・賃借権等の土地に対する権利も含まれる。
  • 土地の収用ではなく、一時的な使用の場合には、損失補償の対象とはならず、補償なく一時使用を強制できる。正答
  • 公益事業の施行により通常生ずる損失(引越し費用・営業廃止・事業移転の損失等の附帯的損失)は、土地収用法上の「通損補償」として補償の対象となりうる。
正答:土地の収用ではなく、一時的な使用の場合には、損失補償の対象とはならず、補償なく一時使用を強制できる。

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エが誤りです。土地の「一時使用」(土地収用法上の使用)についても、損失補償が必要とされます。土地収用法は「収用」(所有権を剥奪する)と「使用」(一定期間使用権を設定する)を区別していますが、使用(一時使用)についても正当な補償が必要です。「使用だから補償不要」という論理は誤りです。憲法29条3項は「公共のために用いること」全般(収用・使用を問わず)に「正当な補償」を求めています。アの「収用補償+通損補償」、イの「残地補償」、ウの「関係権利者(地上権・賃借権等)への補償」、オの「附帯的損失の通損補償」はいずれも土地収用法・判例が認める補償の内容として正しい記述です。

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土地収用における損失補償の範囲を整理します。収用補償と通損補償(ア正しい): 土地収用の補償は①収用される土地・権利の客観的価格(収用補償・時価相当額)と②収用に通常随伴して生ずる損失(通損補償:移転・移居費用・借家人の引越し費用・営業の廃止・休止に伴う損失等)から構成されます。残地補償(イ正しい): 一筆の土地の一部が収用される場合、残地の利便性・価値が低下する損失(孤立した残地・形状不整形による価値減少等)についても残地補償が認められます(土地収用法74条等)。関係権利者の補償(ウ正しい): 収用される土地上の地上権・賃借権・地役権等の権利者も、その権利の消滅・制限に対して補償を受けることができます(土地収用法上の関係人としての補償)。一時使用(エ誤り・正答): 土地収用法上の「使用」(一時使用)についても、正当な補償が必要です。「一時的だから補償不要」という論理は憲法29条3項に反します。土地収用法は収用と使用を区別して規定していますが、いずれも補償義務があります。通損補償の具体例(オ正しい): 事業施行地における仮店舗・仮住居の建設・賃借費用・営業の廃止に伴う損失・事業移転先の取得費用の差額等が通損補償の例です。

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【理論的背景】

憲法29条3項の「正当な補償」は、収用(所有権の剥奪)に限らず、「公共のために用いること」全般(使用・制限を含む特別の犠牲)を対象とします。土地収用法は「収用(所有権の取得)」と「使用(使用権の設定・一時使用)」を区別して規定していますが(土地収用法2条)、いずれも財産権への強制的な侵害であり、補償義務は共通して課されます(エが誤りとなる根拠)。補償の範囲について、「完全補償」原則(収用時点の市場価格の完全な填補)に加えて、収用に通常随伴して生ずる損失(通損補償)も補償対象とすることで、「特別の犠牲」を強いられた者が実質的に完全な補填を受けられるよう制度設計されています。

【実務・条文構造】

残地補償(イ正しい)について土地収用法の規定を確認します。土地の一部が収用される場合、残地(収用後に残る部分)について①残地の価格が著しく減少する場合(残地補償・土地収用法74条)や②残地を従来の目的に供することが著しく困難な場合(残地収用請求権:残地も全部収用することを求める権利・同法76条)が認められます。また残地に通路・みぞ・垣等を設ける必要が生じた場合の費用補償(みぞかき補償・同法75条)もあります。通損補償の項目として、土地収用法は移転料(建物・工作物の移転費用・同法77条)や、その他土地の収用・使用により通常受ける損失(営業休止・廃止補償・動産移転費・仮住居費等・同法88条)を補償対象としており、これらが「オ」で言及される附帯的損失の補償です。

【試験での位置づけ】

「収用補償(時価)+通損補償(附帯的損失)」「残地補償(一部収用の場合)」「使用(一時使用)にも補償必要(エの誤り)」が損失補償分野の発展論点として出題されます。特に「一時使用だから補償不要(×)」という誤りは、「収用だから補償が必要、使用は軽微だから不要」という直感的な誤解に基づく典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(正): 収用補償(時価相当額)と通損補償(通常随伴する損失)の二本立て構造を正確に説明しています。
  • イ(正): 残地補償の存在を正確に指摘。一部収用により残地の形状・利便性が著しく低下した場合の補償は土地収用法上認められています。
  • ウ(正): 関係権利者(地上権・賃借権等)への補償も認められており、所有権者だけが補償対象ではないという点を正確に記述しています。
  • エ(誤・正答): 「一時使用には補償不要」という記述が誤り。使用(一時的な使用権の設定)も財産権への侵害であり、憲法29条3項および土地収用法上の補償義務があります。
  • オ(正): 附帯的損失(引越し費用・営業廃止補償・事業移転費用等)が通損補償として認められることを正確に記述しています。

【根拠条文】

日本国憲法 第29条第3項、土地収用法 第71条(収用する土地に対する補償)、第74条(残地補償)、第75条(みぞかき補償)、第76条(残地収用の請求)、第77条(移転料)、第88条(その他通常受ける損失の補償)

【補足】

「土地の一時使用でも補償必要(×使用は補償不要、という誤解に注意)」「残地補償(一部収用で残地価値が著しく低下した場合に認められる)」「収用補償+通損補償(附帯的損失)の二本立て」の3点が核心論点。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 土地収用法(損失補償の範囲)、憲法 第29条第3項 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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損失補償・収用と使用の区別・残地補償頻出度B

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