行政書士 一般知識 問28:行政書士の義務・誠実義務・秘密保持義務
行政書士法に定める行政書士の義務に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政書士は、その業務に関して知り得た秘密を、依頼者の同意があれば開示することができるが、依頼者との契約が終了した後は秘密保持義務を負わない。
- イ行政書士は、正当な理由なく依頼(受任)を拒むことはできないという受任強制義務が課されている。
- ウ行政書士は、その業務を行うにあたり、誠実にその業務を行うとともに、依頼者に対して親切丁寧にその業務を行わなければならない(誠実義務・親切丁寧義務)。正答
- エ行政書士は、依頼者に関する秘密を、現に業務を行っている期間に限り保持する義務を負い、退職・廃業後にはこの義務は消滅する。
- オ行政書士が職務上作成した書類について、押印の義務は廃止されており、記名(氏名の表示)のみで足りる。
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正答はウです。行政書士法10条は「行政書士は、誠実にその業務を行うとともに、行政書士の信用又は品位を害するような行為をしてはならない」と定め、関連規則・倫理規定で親切丁寧な業務遂行が求められています。ア(誤):行政書士法12条の秘密保持義務は「行政書士でなくなった後においても」適用される永続的義務です。業務終了後もなくなりません。イ(誤):行政書士には弁護士のような受任強制義務(受任拒否の禁止)の規定はありません。依頼者が選んだ行政書士が正当な理由で断ることは可能です。エ(誤):ア同様、秘密保持義務は退職・廃業後も継続します(12条)。オ(誤):行政書士法施行規則9条2項は、行政書士が作成した書類(電磁的記録を除く)に記名し、かつ職印を押さなければならないと定めており、押印義務は廃止されていません(社会全般の「脱ハンコ」とは別に、行政書士の職印押印義務は現行で存続)。「記名のみで足りる」とするオは誤りです。
ウが正答です(行政書士法10条・誠実義務)。各肢の詳細:ア・エ(誤):行政書士法12条は「行政書士は、正当な理由がなく、その業務上取り扱った事項について知り得た秘密を漏らしてはならない。行政書士でなくなった後においても、同様とする。」と規定しており、業務終了後も秘密保持義務は継続します(アの「契約終了後は義務なし」もエの「退職・廃業後は消滅」もいずれも誤り)。イ(誤):行政書士法に受任強制義務(受任拒絶禁止)の規定はありません。医師の応召義務(医師法19条)・弁護士の正当な理由なき断り禁止(弁護士法25条との関係)とは異なり、行政書士は依頼を断ることができます(ただし差別的・不当な拒否は倫理問題)。ウ(正):10条は誠実義務・信用品位保持義務の根拠条文です(親切丁寧義務は倫理規定・会則等に定められている場合あり)。オ(誤):2021年前後の一連のデジタル化(押印見直し)により行政手続上の多くの書類で申請者の押印が不要とされましたが、これは行政書士本人が自ら作成した書類に職印を押す義務とは別の話です。行政書士法施行規則9条2項は、行政書士が作成した書類(電磁的記録を除く)について行政書士が記名し職印を押すことを義務付けており(作成者表示・申請意思の真正担保・本人確認の機能を担う)、現行でも存続しています。したがって「押印義務は廃止され記名のみで足りる」とするオは誤りです。
【行政書士の義務体系】
行政書士法に定める行政書士の主要な義務を体系化します。①誠実義務・信用品位保持義務(10条):業務を誠実に行い、行政書士の信用・品位を害する行為を禁止。②秘密保持義務(12条):業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らすことの禁止(廃業後も継続)。③帳簿の備え付け・保存義務(9条):事務所ごとに帳簿(業務日誌)を備え、一定期間保存する義務。④名義貸しの禁止(13条の6等):自己の名義を他人に行政書士業務のために貸すことの禁止。⑤業務の制限(1条の4):弁護士法・司法書士法等他の法律が規定する業務への越権の禁止。これらの義務に違反した場合は懲戒・罰則の対象となります(14条以下・21条以下)。
【秘密保持義務の詳細】
行政書士法12条の秘密保持義務は「正当な理由がない限り」という要件と「行政書士でなくなった後も継続する」という二つの特徴を持ちます。「正当な理由」の典型例は、①法令上の開示義務(捜査機関への報告義務等)、②依頼者本人の同意・承諾、③裁判手続での証拠提出等です。依頼者の同意があれば秘密を開示できるという点(アの前半部分)は正しいですが、「業務終了後は義務が消滅する」という後半が誤りです。秘密保持義務の永続性は弁護士(弁護士法23条)・医師(刑法134条)と同様の趣旨であり、依頼者の信頼を保護するためのものです。刑事罰については12条違反に対し21条(1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。令和7年6月施行の刑法改正前は「懲役」)が設けられています。
【誠実義務と品位保持義務】
行政書士法10条の誠実義務・品位保持義務は、抽象的・包括的な義務規定であり、具体的な判断は個々の事案に応じて行われます。「信用又は品位を害するような行為」としては、業務と無関係な不正行為・詐欺的行為・差別的対応・反社会的勢力との関係等が含まれうるとされます。親切丁寧な業務遂行は日本行政書士会連合会の倫理規程・業務指針等で規定されており(法律上の直接の根拠は10条の精神から導かれる)、ウの記述はこれを踏まえたものです。品位保持義務違反は懲戒事由の一つであり(14条1号),日本行政書士会連合会・都道府県行政書士会の自律的な懲戒制度の対象となります。
【懲戒・罰則との関係】
行政書士の義務違反に対する制裁は二層構造です。①行政上の懲戒(14条以下):戒告・業務停止(1年以内)・登録取消(廃業命令)を都道府県知事が処分。②刑事罰(21条以下):業務関連の犯罪行為(秘密漏示・名義貸し・無登録業務等)に拘禁刑・罰金。③民事責任(不法行為・債務不履行):依頼者等への損害賠償。懲戒処分を受けた者は「行政書士でなくなった後一定期間」欠格事由が継続する効果もあります(2条の2)。秘密保持義務(12条)の違反は刑事罰(21条:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。改正前は「懲役」)の対象でもあり、厳重な義務です。
【根拠条文】
行政書士法 第10条(誠実義務・信用品位保持義務)、第12条(秘密保持義務・廃業後も継続)、第21条第3号(秘密保持義務違反の罰則)
【補足】
秘密保持義務は廃業・退職後も継続(ア・エの誤り)が最重要ポイント。受任強制義務は行政書士法に存在しない(イ誤り)。誠実義務・品位保持義務(ウ正)の根拠条文は10条。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政書士法 第10条(誠実義務)・第12条(秘密保持義務)・第9条(帳簿の備え付け等) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。