行政書士 商法・会社法 問19:種類株式の内容・種類の一覧
種類株式に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア種類株式とは、内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合のそれぞれの株式をいい、会社法は種類株式として発行できる内容を法定しておらず、会社が自由に内容を決定できる。
- イ議決権制限株式(議決権の行使につき制限のある株式)は、公開会社・非公開会社を問わず、発行済株式の総数の2分の1を超えて発行することができない。
- ウ全部取得条項付種類株式とは、会社が株主総会の決議によってその全部を取得することができる旨の定めがある種類株式であり、少数株主の排除(スクイーズアウト)に使われる。正答
- エ拒否権付種類株式(黄金株)とは、その種類株式の株主の総会(種類株主総会)の決議がなければ、株主総会決議の効力が生じないという定めのある種類株式であり、取締役会決議のみでその権限を廃止できる。
- オ取得請求権付種類株式とは、会社が一定の事由が生じたことを条件として、その株式を強制的に取得できる権利を会社に付した株式であり、株主は取得を拒否できない。
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種類株式は、会社が異なる内容の株式を複数種類発行する制度です。会社法108条は発行できる種類株式の内容を限定列挙(9種類)しており(ア誤り:自由ではなく法定)、①剰余金配当②残余財産分配③議決権制限④譲渡制限⑤取得請求権⑥取得条項⑦全部取得条項⑧拒否権⑨取締役・監査役選任です。議決権制限株式は公開会社では発行済株式の2分の1以下が上限ですが、非公開会社には上限がありません(イ誤り:「公開会社・非公開会社を問わず」が誤り)。全部取得条項付種類株式(ウ正しい):株主総会特別決議で会社が全部取得できる株式で、少数株主排除(スクイーズアウト)に活用されます。エの「拒否権付種類株式は取締役会で廃止できる」は誤りで定款変更(株主総会特別決議)が必要です。オは「取得請求権付」と「取得条項付」を混同しており誤りです。
種類株式(会社法108条)の各類型を整理します。法定列挙(ア誤り):会社法108条1項が9号列挙(剰余金配当・残余財産・議決権制限・譲渡制限・取得請求権・取得条項・全部取得条項・拒否権・役員選任)により会社が発行できる種類株式を限定しています。自由に内容を決定できるわけではありません。議決権制限株式(108条1項3号):公開会社では発行済株式総数の2分の1超は発行禁止(会社法115条)だが、非公開会社には上限なし(イ誤り:「公開・非公開を問わず」とする点が誤り)。全部取得条項付種類株式(108条1項7号・171条):株主総会の特別決議により会社がその全部を取得できる種類株式。少数株主をキャッシュアウト(排除)するスクイーズアウト手法として活用されます(ウ正しい)。拒否権付種類株式(黄金株)(108条1項8号):当該種類の種類株主総会の決議がなければ株主総会決議(一般)の効力が生じない旨の定めのある株式。廃止には定款変更(特別決議+当該種類株主総会の特殊決議等)が必要であり、取締役会決議だけで廃止はできません(エ誤り)。取得請求権付株式と取得条項付株式の区別(オ誤り):取得請求権付(108条1項5号・6号)は株主が会社に取得を請求できる権利。取得条項付(108条1項6号・107条1項2号等)は会社が一定事由で強制取得できる権利。オの記述は「取得条項付」の説明であり「取得請求権付」の説明ではない。
【理論的背景】
種類株式制度は、多様な資金調達ニーズ・投資家ニーズに対応するための制度です。例えば、議決権はいらないが高い配当を希望する投資家(機関投資家・優先株・議決権制限株)、経営者が支配権を維持しつつIPOで資金調達したい場合(拒否権付株式・取締役選任種類株式)、上場廃止・MBOの際に少数株主を排除したい場合(全部取得条項付種類株式)等です。会社法が種類株式の内容を法定列挙する理由は、全く自由に内容を決定させると株主や債権者が予測できない権利関係が生まれ、証券市場の信頼性・取引安全が害されるからです。全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウトは、M&Aの実務で広く用いられますが、少数株主保護の観点から裁判所による価格決定の申立て制度(会社法172条等)が併設されています。
【条文構造】
会社法108条1項1号〜9号が種類株式の内容を法定しています。1号(剰余金の配当)・2号(残余財産の分配)・3号(議決権制限)・4号(譲渡制限)・5号(取得請求権:株主から会社への請求権)・6号(取得条項:会社の強制取得権)・7号(全部取得条項:株主総会決議による全部取得)・8号(拒否権:種類株主総会の決議がなければ株主総会決議不効力)・9号(取締役・監査役の選任)。会社法115条「公開会社においては、第108条第1項第3号に掲げる事項(議決権制限)についての定款の定めがある場合には、…議決権制限株式の数が…総数の2分の1を超えるに至ったときは、…超える部分の株式に係る定款の定めの効力を失う」とし、上限規制を設けています。会社法171条は全部取得条項付種類株式の取得(株主総会の特別決議要件)を規定し、172条は取得価格の決定の申立てを株主に認めています。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での種類株式の問われ方は、①9種類の法定列挙(自由でない)、②議決権制限株式の公開会社での上限(2分の1)、③全部取得条項付とスクイーズアウト、④取得請求権付vs取得条項付(株主から請求か会社が強制取得か)の区別の4点が典型です。本問では特に③(全部取得条項付:ウが正答)と④(取得請求権付と取得条項付の混同:オが誤り)が重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。会社法108条1項が9号列挙で種類株式の内容を法定。この列挙に含まれない内容の種類株式は発行できない(法定外の種類株式は会社の自由ではない)。
- イ: 誤り。会社法115条の2分の1上限は公開会社のみに適用され、非公開会社には上限規定がない。「公開会社・非公開会社を問わず」とする点が誤り。
- ウ: 正しい。108条1項7号・171条。株主総会特別決議によって会社が全部取得できる種類株式であり、少数株主排除(スクイーズアウト)の手段として活用される(少数株主には裁判所への価格決定申立権あり:172条)。
- エ: 誤り。拒否権付種類株式(黄金株:108条1項8号)の定款の定めを廃止するには定款変更(特別決議)が必要であり、当該種類株主総会の特殊決議(全員同意等)も必要となる場合がある。取締役会決議のみでは廃止できない。
- オ: 誤り。本選択肢は「取得条項付種類株式」(108条1項6号:会社の強制取得権)の説明。「取得請求権付種類株式」(108条1項5号)は「株主が会社に取得を請求できる権利」であり、株主が請求権者(会社が強制するのではない)。
【根拠条文】
会社法 第108条第1項各号(種類株式の9種類・法定列挙)
会社法 第115条(公開会社での議決権制限株式の発行上限)
会社法 第171条(全部取得条項付種類株式の取得・株主総会特別決議)
会社法 第172条(取得価格の決定の申立て・少数株主保護)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第108条(種類株式の種類)、会社法第115条(議決権制限株式の発行上限)、会社法第171条(全部取得条項付種類株式の取得) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。