行政書士 商法・会社法 問36:監査等委員会設置会社の特徴
監査等委員会設置会社に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア監査等委員会設置会社は、取締役会および会計監査人を設置しなければならない。
- イ監査等委員会は、監査等委員である取締役3人以上で組織され、その過半数は社外取締役でなければならない。
- ウ監査等委員でない取締役の任期は1年以内であり、監査等委員である取締役の任期は2年以内であるが、いずれも定款によって短縮することが可能である。正答
- エ監査等委員会設置会社においては、重要な業務執行の決定を取締役(監査等委員でない取締役)に委任することができる範囲が、通常の取締役会設置会社よりも広く認められている。
- オ監査等委員会設置会社においては、監査役を置くことができない。
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監査等委員会設置会社の機関に関する問題です。ウが誤りです。監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役の任期は2年以内ですが(332条4項)、「定款によって短縮することができない」点が重要です(同条4項ただし書は「定款によっても短縮できない」と定めている)。ウの「いずれも定款によって短縮することが可能」という部分が誤りです。監査等委員でない取締役の任期は1年以内(332条3項)で定款により短縮は可能ですが、監査等委員である取締役の任期は2年で短縮不可です。これは監査等委員の独立性を保護するための規定です。
ウが誤りの根拠(332条3項・4項の比較)
332条の監査等委員会設置会社における取締役の任期は二分されます。
①監査等委員でない取締役(332条3項):「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで」。定款または株主総会の決議で短縮可(1年が上限で短縮できるという趣旨)。
②監査等委員である取締役(332条4項):「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時まで」。定款によっても短縮することができない(同条4項ただし書・不短縮)。
ウは「いずれも定款によって短縮することが可能」としているため、②の「監査等委員の2年・短縮不可」という重要な点を誤って述べています。
他の選択肢の確認
- ア: 正しい。監査等委員会設置会社は取締役会・会計監査人の設置が義務(327条1項3号・5号)。
- イ: 正しい。331条6項(監査等委員会は監査等委員である取締役3人以上で組織)・社外取締役過半数(同条6項)。
- エ: 正しい。監査等委員会設置会社では、重要な業務執行の決定の委任範囲が広く認められています(399条の13第5項・6項)。定款の定めまたは取締役会の決議で代表取締役等への委任が可能な事項が通常の取締役会設置会社より広い。
- オ: 正しい。327条4項(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は監査役設置不可)。
【理論的背景:監査等委員会設置会社導入の立法経緯】
監査等委員会設置会社は2014年(平成26年)の会社法改正で新設された機関設計です(2015年5月施行)。従来から日本企業の多数が採用してきた「取締役会+監査役(会)型」から、社外取締役を活用したより機動的なガバナンス改革への移行を促すために設けられました。指名委員会等設置会社よりも「移行ハードルが低い」制度設計(取締役会が業務執行の監督・意思決定の両方を行う構造を維持しつつ、監査等委員である社外取締役が過半数を占める委員会で監査機能を担う)であるため、2016年以降多くの上場会社が採用し、現在は日本の上場会社における主要な機関設計の一つとなっています。
【実務・条文構造:監査等委員の独立性保護と短縮不可の趣旨】
監査等委員である取締役の任期を「2年・短縮不可」(332条4項)としているのは、監査等委員の独立性を経営陣から守るためです。もし取締役会・代表取締役が監査等委員の任期を短縮できるなら、気に入らない監査等委員を短期任期で事実上解任に近い状態にすることができます。また監査等委員の解任には特別決議が必要(344条の2第4項・309条2項7号)であり、通常の役員(普通決議)より厳格な手続が求められます。これらが重層的に機能することで監査等委員の独立性が担保されます。
監査等委員会設置会社の業務執行決定の委任範囲の拡大(399条の13第5項・6項)は重要な制度的特徴です。通常の取締役会設置会社では362条4項の専決事項の委任が制限されていますが、監査等委員会設置会社では定款の定めまたは取締役会決議により、大部分の重要業務執行の決定を代表取締役等の個別取締役に委任できます。これにより取締役会の実質的な議題を「監督機能に特化」させ、業務執行の機動性を高めることができます。
【試験での位置づけ:三種の機関設計の試験頻出比較】
| 比較項目 | 監査役型 | 監査等委員会型 | 指名委員会等型 |
|---|---|---|---|
| 監査役の有無 | 必要(大会社は監査役会) | 不可 | 不可 |
| 業務執行 | 代表取締役 | 代表取締役 | 代表執行役 |
| 委員会の数 | なし | 1(監査等委員会) | 3(指名・報酬・監査) |
| 社外取締役強制 | 大会社上場は1人以上(327条の2) | 監査等委員の過半数(331条6項) | 各委員会の過半数(400条3項) |
| 重要業務執行委任 | 制限あり(362条4項) | 拡大可(399条の13第5項) | 大幅委任可(416条4項) |
| 会計監査人 | 大会社は義務(328条) | 義務(327条5号) | 義務(327条5号) |
【各選択肢の発展補足】
- ア: 監査等委員会設置会社への取締役会設置義務(327条1項3号)と会計監査人設置義務(327条5号)は理解必須。逆に、監査役を置くことが禁止(327条4項)という点もセットで覚える。
- イ: 「監査等委員」は通常の取締役(監査等委員でない取締役)と区別して株主総会で選任されます(329条2項)。議案を分ける理由は、選任に関する特別ルール(選任議案への監査等委員会の意見陳述権・344条の2第1項)があるためです。
- エ: 399条の13第5項・6項の委任拡大は、監査等委員会設置会社の経営機動性を高める重要な規定。ただし「株主総会の専決事項」(株主総会でしか決議できない事項)は委任対象外です。
- オ: 指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社の両方で「監査役設置不可」(327条4項)。両者に共通するこの禁止規定は頻出です。
【根拠条文】
会社法 第327条第1項第3号・第4項・第5号(監査等委員会設置会社の機関設置義務・監査役禁止)
会社法 第329条第2項(監査等委員の選任)
会社法 第331条第6項(監査等委員会の構成要件)
会社法 第332条第3項・第4項(監査等委員会設置会社における取締役の任期)
会社法 第344条の2第4項(監査等委員の解任の特別決議)
会社法 第399条の13第5項・第6項(重要業務執行の決定の委任拡大)
【補足】
監査等委員の任期は「2年・短縮不可」(332条4項)が最重要の引っかけ。監査等委員でない取締役は1年・短縮可、との対比で覚える。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第331条第6項(監査等委員会設置会社の取締役の要件)・第332条第3項・第4項(取締役の任期) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。