行政書士 商法・会社法 問9:株式会社の設立方法・発起設立と募集設立
株式会社の設立方法に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア発起設立とは、発起人が設立時発行株式の全部を引き受けた後、さらに広く一般から株主を募集して設立する方法である。
- イ募集設立においては、発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、残りを公募(一般からの募集)によって補う方法であり、発起人全員の同意により成立する。
- ウ募集設立においては、創立総会(設立時株主による会議)を開催する必要はなく、発起人が単独で設立に関する事項を決定する。
- エ発起設立では設立時株主総会を招集する必要はなく、発起人の全員の同意(または取締役会設置の有無等の条件による決定)により設立時取締役等を選任することができる。正答
- オ発起設立は少数の者が設立する場合にのみ認められ、発起人が1名の場合には発起設立を選択することができない。
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株式会社の設立方法には2種類あります。①発起設立(会社法25条1項1号):発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける方法。②募集設立(同条1項2号):発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、残りを他から募集する方法。アの「発起設立=一般から募集」は誤り(これは募集設立)。イの「発起人全員の同意で成立」は誤り(募集設立では創立総会が必要)。エが正しく、発起設立では設立時株主総会ではなく、発起人の決定(全員一致等)により設立時取締役等を選任します。ウの「創立総会不要」は誤り(募集設立では創立総会が必要)。オの「発起人1名は不可」も誤り(1名でも発起設立は可能)。
発起設立と募集設立の手続の違いを整理します。発起設立(会社法25条1項1号):発起人(1名以上)が設立時発行株式の全部を引き受けます。設立時取締役等の選任は、発起人の全員一致(定款に別段の定めがある場合はその定めに従う)による議決権行使により決定します(会社法38条)。設立時株主総会は不存在であり、発起人集会(発起人の議決権行使)が機能します(エ正しい)。発起人は1名以上あれば足り(5名・3名等の最低人数要件なし)、オは誤りです。募集設立(会社法25条1項2号):発起人が一部引受け、残りを募集(株式申込み・割当)します。設立時の意思決定のために創立総会(会社法65条以下)が必要であり(ウ誤り)、設立時取締役等の選任・定款変更・設立廃止等を創立総会で決議します。創立総会は設立時株主(払込みを完了した引受人)が議決権を行使します。イの「発起人全員の同意により成立」は誤りで、創立総会の決議が必要です(創立総会の議決要件は出席者の議決権の過半数等)。
【理論的背景】
発起設立と募集設立の差異は、外部投資家の参加の有無に起因する手続の複雑さの違いです。発起設立は少数の発起人が全株式を引き受けるため、外部投資家保護の必要性が低く手続が簡素です(創立総会不要・登記までの期間短縮可能)。募集設立は不特定多数の引受人を募集するため、①払込みの確実性確保(払込金保管証明・銀行等の証明)、②設立時株主の意思を反映させる機関(創立総会)の設置、③設立関与者(発起人・設立時取締役等)の厳格な責任という三重の保護が必要になります。現代では募集設立は稀であり、大半の株式会社は発起設立により設立されます(IPOは設立後の公開であり、設立時に広く公募することは現在はほぼない)。
【条文構造】
会社法25条1項は設立の2方法を定め、1号(発起設立:設立時発行株式の全部を発起人が引き受ける)・2号(募集設立:発起人が設立時発行株式の一部を引き受け、残りを他に引き受けさせる)と規定します。発起設立における設立時取締役等の選任は会社法38条以下で規定され、発起人が設立時発行株式の全部引受け完了後に選任手続を行います。取締役会設置会社の場合は取締役・監査役等の選任が必要で、非公開会社等の場合は発起人の議決権行使で決定できます。募集設立における創立総会(会社法65条〜)は、発起人が定める場所・日時に設立時株主(払込みを完了した者)を召集して開催するものであり、創立総会は設立に関する重要事項(設立の廃止、定款の変更、設立時取締役等の選任・解任等)を決議します。発起人が設立手続において大きな権限を持つことから、発起人の連帯責任(会社法53条・54条等)や損害賠償責任(会社法85条等)の規定で投資家・会社への責任を担保しています。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での設立方法の問われ方は、①発起設立と募集設立の定義の違い(全部引受かvs一部引受か)、②発起設立での機関(発起人の議決権行使)vs募集設立での創立総会、③発起人の最低人数(1名以上・制限なし)が典型です。本問では特に①②が問われており、正答はエ(発起設立では発起人の議決権行使により設立時取締役等を選任)。また、設立無効・不存在の訴えの要件(設立無効は設立登記から2年以内等)も発展論点として押さえておくべきです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。発起設立は「設立時発行株式の全部を発起人が引き受ける」方法であり、一般からの公募は募集設立の特徴。
- イ: 誤り(定義部分は部分的に正しいが後半が誤り)。募集設立は発起人が一部引受・残りを募集する方法だが、「発起人全員の同意で成立」は誤り。募集設立では創立総会での決議が必要。
- ウ: 誤り。募集設立では創立総会(会社法65条以下)の開催が必要であり、発起人単独で設立に関する全事項を決定することはできない。
- エ: 正しい。会社法38条等により、発起設立では発起人が議決権を行使して設立時取締役等を選任(設立時株主総会ではない)。
- オ: 誤り。会社法は発起人の最低人数を定めておらず、1名でも発起設立が可能。発起人の人数制限は旧商法には存在したが現行法にはない。
【根拠条文】
会社法 第25条第1項第1号・第2号(設立の2方法)
会社法 第38条(発起設立における設立時取締役等の選任)
会社法 第65条(募集設立における創立総会)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第25条(設立の方法)、会社法第38条〜40条(発起設立における設立時役員等の選任)、会社法第65条以下(募集設立・創立総会) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。