行政書士 憲法 問12:参政権・在外邦人選挙権・立法不作為
選挙権及び立法不作為に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア選挙権は憲法第15条が保障する権利であるが、具体的な行使方法は立法府の広い裁量に委ねられているため、立法の不存在を理由とする憲法上の権利侵害は成立しない。
- イ在外日本人が衆議院議員選挙及び参議院議員選挙において投票する機会を与えられなかった事例において、最高裁は国会の立法不作為が憲法に違反すると判示した。正答
- ウ最高裁は、在外邦人選挙権訴訟において、在外選挙制度を設けなかった立法不作為について、選挙権の行使を全面的に制限するものであり憲法に違反することの違憲確認は行ったが、損害賠償請求は認めなかった。
- エ選挙権は参政権の中核をなすため、普通選挙(年齢・性別・財産等に基づく差別なく一定年齢に達した者は選挙権を持つ)は日本では憲法上明文で保障されていない。
- オ立法行為(立法の不作為を含む)は、国会の立法裁量の本質上、いかなる場合も国家賠償法上の違法行為を構成しない。
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イが正しいです。在外邦人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)において、最高裁は、在外日本人に選挙権の行使を長期にわたり全く認めなかった公職選挙法の規定が憲法15条・43条・44条に違反すると判示しました。さらに国会の立法不作為が国家賠償法上も違法であると認め、損害賠償も認容しました(ウは「損害賠償を認めなかった」としており誤り)。アは立法裁量を理由に立法不作為の権利侵害が成立しないとする点で誤り、オは立法不作為が「いかなる場合も」国賠法上の違法にならないとする点で誤りです(本判決で違法と判断されている)。
在外邦人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)は複数の重要な判示を含む画期的な判決です。①違憲確認: 在外選挙制度を一切設けなかった公職選挙法の規定(当初の不作為)は憲法15条・43条・44条に違反する。②現在の違憲確認: 衆参の比例代表のみに在外投票を限定し小選挙区・選挙区では認めなかった法律の規定も憲法に違反する状態(違憲の現在の状態確認)。③立法不作為の国家賠償: 在外選挙制度を設けなかった立法不作為は、国会議員の職務上の注意義務違反として国家賠償法1条1項上の違法行為を構成するとして、損害賠償請求を認容した。この判決は立法不作為に対して国賠法上の違法性を認めた先例として重要です(オが誤りの理由、ウが「損害賠償を認めなかった」とする点で誤り)。普通選挙は憲法15条4項で「選挙人の資格に関する事項について財産又は収入によって差別してはならない」と、また44条で「選挙人の資格について人種・信条・性別・社会的身分・門地・教育・財産又は収入によって差別してはならない」と規定されており、明文で保障されています(エが誤り)。
【理論的背景】
立法不作為の違憲性・違法性については、最高裁は従来「立法行為は政治的裁量に属し、国賠法上の違法とはならない」という保守的な立場でした(在宅投票制度廃止事件・最判昭60.11.21等)。しかし在外邦人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)では判例を変更し、①一定の明白な違憲状態の存在、②国会が違憲状態を認識しながら放置した場合、③損害の発生という要件の下で立法不作為の国賠法上の違法性を認めるに至りました。これは立法裁量論と権利保障の緊張関係における重要な判例変更です。
【実務・条文構造】
在外邦人選挙権訴訟の判旨を段階的に整理します。
1. 選挙権の憲法上の性格: 選挙権は「国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利」であり、制限は「やむを得ない事由」がある場合に限られる(厳格審査)。
2. 立法不作為の評価: 在外日本人に選挙権の行使機会を全く与えない法律の規定は「やむを得ない事由」なく選挙権を制限するものとして違憲。
3. 国家賠償: 選挙権行使の機会を確保するための立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず長期にわたって怠った場合は国賠法1条1項の違法。
4. 損害賠償の範囲: 実際に投票できなかったことによる精神的損害(慰謝料)を認容。
普通選挙の憲法上の根拠(エの誤りの分析):
- 憲法15条4項「選挙人の資格に関する事項については、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない」
- 憲法44条(議員及び選挙人の資格)
これらの規定から普通選挙の原則が憲法上明文で保障されていることは明らかです。
【試験での位置づけ】
本論点は「立法不作為の国家賠償」という行政法との交差点でもあり、憲法と行政法の融合問題として出題されます。在外邦人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)は行政書士試験で頻出の判例です。要点:①選挙権は厳格審査、②立法不作為が一定要件下で国賠法上違法、③損害賠償を認容した点(ウの「認めなかった」との対比)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。選挙権の制限は「やむを得ない事由」が必要(厳格審査)。立法不作為による権利侵害も成立しうる。
- イ: 正しい。在外邦人選挙権訴訟(最大判平17.9.14)の結論を正確に表現。
- ウ: 誤り。同判決は損害賠償請求も認めている(精神的損害への慰謝料)。「損害賠償は認めなかった」は判旨と正反対。
- エ: 誤り。普通選挙は憲法15条4項・44条で明文保障されている。
- オ: 誤り。在外邦人選挙権訴訟で「一定の要件下で立法不作為も国賠法上違法」と認められた。「いかなる場合も違法とならない」は現行判例と矛盾。
【根拠条文】
日本国憲法 第15条第1項・第4項(選挙権・普通選挙)、第43条(両議院)、第44条(選挙人の資格)
【参照判例】
在外邦人選挙権訴訟(最大判 平成17年9月14日)
【補足】
「立法不作為も一定要件下で国賠法上違法になりうる」という画期的な判旨を正確に押さえること。「損害賠償を認めたか否か」は頻出の引っかけポイント。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第15条(選挙権・普通選挙の原則)、第43条(両議院の選挙) 判例: 在外邦人選挙権訴訟(最大判 平成17年9月14日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。