問題
憲法第25条が保障する生存権に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
生存権の法的性格については学説が分かれています。①プログラム規定説(国の政治的義務にとどまり、個人への法的権利なし)、②抽象的権利説(立法・行政の裁量を拘束する規範的効力あり・直接訴訟不可だが立法の義務付けあり)、③具体的権利説(個人に直接の法的権利を付与)。最高裁は朝日訴訟で、25条1項は国の責務を宣言したにとどまり「直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」としており(イが正しい)、25条の具体化を立法府の広い裁量に委ねています。アは「直接訴訟で争える(具体的権利説)」としており判例の趣旨に反します。ウは誤りで、堀木訴訟は併給禁止を合憲としました。
朝日訴訟(最大判昭42.5.24)において最高裁は、「憲法25条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」と判示しました(イはこの判示をそのまま述べたもので正しい)。この立場はプログラム規定説に近いものと説明されます。朝日訴訟の最大判はさらに「何が最低限度の生活かは厚生大臣の裁量に属し、その認定判断は裁量権の逸脱・濫用がない限り司法審査に服さない」とも判示しています。裏返せば、裁量権の逸脱・濫用があれば司法審査の対象となるのであり、保護基準の当否が「司法審査になじまない」としたエは誤りです。堀木訴訟(最大判昭57.7.7)では、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止について、「立法裁量の範囲内」として合憲と判断しました(ウが「違憲とされた」としている点で誤り)。
【理論的背景】
生存権の法的性格論は行政書士・公務員試験を問わず重要な論点です。3説の対比を整理します。
- プログラム規定説: 25条は国の施策の方向性を示す政治的・道義的義務規定であり、個人は具体的立法がない限り裁判上の権利を持たない。
- 抽象的権利説: 25条自体は具体的権利を付与しないが、立法府に対し一定水準の立法をする規範的義務を課す。具体的立法による具体化が必要だが、その立法の合憲性は25条を基準として審査できる。
- 具体的権利説: 25条は個人に直接の請求権を与え、具体的立法なしでも国の不作為を憲法訴訟で争える。
最高裁(朝日訴訟・堀木訴訟)の立場はプログラム規定説に近く、具体化は立法府の広い裁量に委ねるという姿勢です。ただし「裁量権の逸脱・濫用」がある場合には司法審査が及ぶという留保も付しており、純粋なプログラム規定説とも完全に一致しない面があります(「抽象的権利説に近いプログラム規定説」と整理する論者もいる)。
【実務・条文構造】
憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(1項)」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(2項)」と定めます。1項が個人の権利規定、2項が国の義務規定という構造ですが、最高裁は1項についても国の責務を宣言したものと位置づけ、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないとしています。生活保護の具体的基準(保護基準)を争う場合には、生活保護法の施行規則・告示等が裁量基準として機能し、その内容が著しく不合理かどうかが行政法上の論点となります。
【試験での位置づけ】
行政書士試験の生存権問題では、以下の3点が頻出です。
1. 最高裁は、25条1項は国の責務を宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではないとした(朝日訴訟)。
2. 朝日訴訟と堀木訴訟の事件名・判旨の区別(朝日=保護基準の低さを争った事例、堀木=併給禁止規定の合憲性)。
3. 「最低限度の生活水準の認定は立法・行政の広い裁量に属する」という一般原則。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。朝日訴訟は「直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」と判示した。直接訴訟で争えるとはしていない(具体的権利説を採用していない)。
- イ: 正しい。朝日訴訟の判示(国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない)をそのまま述べている。
- ウ: 誤り。堀木訴訟(最大判昭57.7.7)は、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止を「立法裁量の範囲内」として合憲と判断した。違憲とはされていない。
- エ: 誤り。朝日訴訟の判旨は「裁量権の逸脱・濫用がない限り司法審査に服さない」であり、逸脱・濫用があれば司法審査の対象となる。保護基準の当否が「司法審査になじまない」とはしていない。
- オ: 誤り。判例の立場では、生活保護基準の具体的内容は生活保護法を媒介にして争うものであり、直接憲法訴訟として提起できるとはされていない。
【根拠条文】
日本国憲法 第25条第1項(生存権)、同第25条第2項(国の社会保障義務)
【参照判例】
朝日訴訟(最大判 昭和42年5月24日)、堀木訴訟(最大判 昭和57年7月7日)
【補足】
朝日訴訟の判示「国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」を正確に押さえること。判例はプログラム規定説に近いと説明されるが、裁量権の逸脱・濫用の場合には司法審査の対象となる点が重要。
- 日本国憲法第25条e-Govで原文を読む
- 生活保護法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第25条(生存権) 判例: 朝日訴訟(最大判 昭和42年5月24日)、堀木訴訟(最大判 昭和57年7月7日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

