行政書士試験の憲法で、生存権(25条1項・2項)を条文と生活保護法で整理し、食糧管理法違反事件(昭和23年)・朝日訴訟(昭和42年)・堀木訴訟(昭和57年)を、裁判所サイトの事件番号と判決文の言葉つきで解説します。
目次
結論:行政書士試験の憲法で生存権(25条)が問われるときは、条文の言葉(1項=権利、2項=国の努力義務)と、判決文の言い回し(「国の責務として宣言」「具体的権利を賦与したものではない」「立法府の広い裁量」)をセットで押さえると整理できます。朝日訴訟は被保護者の死亡で訴訟が終了した事件で、25条の説示は判決文のうち「なお、念のために」と括弧書きで付けられた部分にあります。堀木訴訟は、児童扶養手当法の併給調整条項を25条・14条・13条のいずれにも違反しないとした判決です。
この記事は、日本国憲法・生活保護法の条文(e-Gov法令検索)と、裁判所の裁判例検索の個別ページおよびそこから開ける判決文の全文PDFに書かれている内容だけをもとにしています。裁判要旨は判決の結論と要点を短くまとめた欄で、判決文そのものではありません。憲法判例を分野をまたいで一覧にした表は行政書士の憲法判例にあります。同じ社会権の26条は教育を受ける権利の記事、27条・28条は労働基本権の記事で扱い、この記事は25条に絞ります。
25条の条文と、生活保護法との関係
憲法25条は2つの項からなります。
| 項 | 条文の言葉 | 書き方の特徴 |
|---|---|---|
| 1項 | 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」 | 国民の「権利」の形 |
| 2項 | 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」 | 国の「努めなければならない」という責務の形 |
1項の権利を具体化する法律の一つが生活保護法です。同法の条文には、次の言葉があります。
| 条文 | 内容(条文の言葉) |
|---|---|
| 生活保護法1条 | 「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」 |
| 同法3条 | 「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」 |
| 同法8条1項 | 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行う |
| 同法8条2項 | 前項の基準は、…最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これをこえないものでなければならない |
生活保護法1条は、25条を「理念」として挙げています。後で見る朝日訴訟・堀木訴訟の判決文は、25条そのものと、25条の趣旨を実現するために作られた法律とを分けて説明しているので、憲法の条文と法律の条文を別の層として読み分けるのがコツです。
判例の一覧:食糧管理法違反・朝日・堀木
| 事件名(裁判所サイトの事件名) | 裁判年月日・法廷 | 事件番号 | 判例集 | ひとこと |
|---|---|---|---|---|
| 食糧管理法違反 | 昭和23年9月29日・大法廷・判決 | 昭和23(れ)205 | 刑集2巻10号1235頁 | 25条1項は国家の責務の宣言。国は個々の国民に対して具体的にこの義務を有するものではない |
| 生活保護法による保護に関する不服の申立に対する裁決取消請求(朝日訴訟) | 昭和42年5月24日・大法廷・判決 | 昭和39(行ツ)14 | 民集21巻5号1043頁 | 裁決の取消訴訟は被保護者の死亡により当然終了。25条は括弧書きの意見で説示 |
| 行政処分取消等(堀木訴訟) | 昭和57年7月7日・大法廷・判決 | 昭和51(行ツ)30 | 民集36巻7号1235頁 | 児童扶養手当法(改正前)4条3項3号は25条・14条・13条に違反しない |
3件とも、裁判所の裁判例検索の個別ページで、事件番号・裁判年月日・裁判要旨を確認できます(出典は記事末尾)。
食糧管理法違反事件(昭和23年):25条1項は国の責務の宣言
昭和23(れ)205の裁判要旨は、次の内容です。
- 憲法25条1項は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを、国家の責務として宣言したものである
- 国民一般に対して概括的にこの責務を負い、国政上の任務としたけれども、個々の国民に対して具体的にこの義務を有するものではない
- したがって、上告人が、この規定から直接に現実的な生活権が保障され、不足食糧の購入運搬は生活権の行使であると主張し、これを違法とする食糧管理法の規定は憲法違反だと論ずるのは、同条の誤解に基づく論旨である
- 食糧管理法は、国民全般の福祉のため、能う限りその生活条件を安定させるための法律であって、憲法25条の趣旨に適合する立法である
後の朝日訴訟の判決文は、この判決を参照しています(刑集2巻10号1235頁、昭和23年9月29日大法廷判決)。堀木訴訟の判決文も、同じ判決を「すでに当裁判所の判例とするところ」として挙げています。
朝日訴訟:訴訟の終了と、25条についての意見
事案と結論
朝日訴訟の判決文によると、上告人は、長く療養所に単身の肺結核患者として入所し、厚生大臣の設定した生活扶助基準の最高額である月600円の日用品費の生活扶助と、現物による全部給付の給食付医療扶助を受けていました。ところが、実兄から毎月1,500円の送金を受けるようになったため、福祉事務所長は1か月600円の生活扶助を打ち切り、送金額から日用品費を控除した残額900円を医療費の一部として上告人に負担させる保護変更決定をしました。上告人は、600円の基準金額が生活保護法の規定する健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するに足りない違法のものだと主張して、厚生大臣の不服申立却下裁決の取消しを求めました。
最高裁判所は、上告人が上告中に死亡したため、主文で次のように述べました。
主文:本件訴訟は、昭和三九年二月一四日上告人の死亡によつて終了した。
裁判所サイトの裁判要旨も、「生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。」というものです。
訴訟が終了する理由:保護受給権
判決文は、生活保護法に基づいて保護を受けることを、次のように位置づけています。
- 要保護者または被保護者が国から生活保護を受けるのは、「単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利であつて、保護受給権とも称すべきもの」
- ただし、この権利は、被保護者自身の最低限度の生活を維持するために当該個人に与えられた一身専属の権利で、他に譲渡できず(生活保護法59条参照)、相続の対象にもならない
この一身専属性が、相続人が訴訟を承継できず、訴訟が死亡と同時に終了する理由とされています。
括弧書きで付けられた25条についての意見
判決文はそのあと、「(なお、念のために、本件生活扶助基準の適否に関する当裁判所の意見を付加する。」という括弧書きから、25条についての意見を述べています。主な内容は次のとおりです。
| 論点 | 判決文の言葉 |
|---|---|
| 25条1項の性格 | 「国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」(昭和23年9月29日大法廷判決を参照) |
| 具体的権利はどこから | 「具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである」 |
| 保護基準の拘束 | 厚生大臣の定める保護基準は、生活保護法8条2項所定の事項を遵守したものであることを要し、結局は憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならない |
| 「健康で文化的な最低限度の生活」 | 「抽象的な相対的概念」で、その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上し、多数の不確定的要素を総合考量して初めて決定できる |
| 認定判断の主体 | 何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生ずることはない |
| 司法審査の対象になる場合 | 「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によつて与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合」は、違法な行為として司法審査の対象となる |
判決文は最後に、本件の生活扶助基準が入院入所患者の最低限度の日用品費を支弁するに足りるとした厚生大臣の認定判断について、与えられた裁量権の限界をこえ、または裁量権を濫用した違法があるとは「とうてい断定することができない」としています。
この意見は、訴訟が上告人の死亡で終了したと判断したあとに「念のために」付け加えられたもので、主文(訴訟の終了)を導く理由ではありません。この判決には、裁判官の補足意見と反対意見が付いています。裁判所サイトの裁判要旨の欄には25条の説示は出てこないので、要旨欄だけを読むと、25条の判断内容は分からない点に注意します。
堀木訴訟:立法裁量と併給調整条項
事案
判決文によると、上告人は国民年金法別表の1級1号に該当する視力障害者で、障害福祉年金を受給していました。同人は、内縁の夫との離別後、独力で男子を養育してきました。昭和45年2月23日に児童扶養手当の受給資格の認定を請求したところ、却下され、異議申立ても棄却されました。理由は、障害福祉年金を受給しているので、改正前の児童扶養手当法4条3項3号(判決文はこれを「本件併給調整条項」と呼んでいます)に該当し、受給資格を欠くというものでした。
25条についての判断
最高裁判所は、上告を棄却しました。25条について、判決文は次の順に述べています。
1. 25条1項は、福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言したもの
2. 25条2項は、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したもの
3. 1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的にこのような義務を有することを規定したものではなく、2項によって国の責務とされている社会的立法・社会的施設の創造拡充により、個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されていくものと解すべき
4. 「健康で文化的な最低限度の生活」は「きわめて抽象的・相対的な概念」であり、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるもの
5. 規定を現実の立法として具体化するにあたっては、国の財政事情を無視することができず、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする
6. したがって、どのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられており、「著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄である」
そのうえで判決文は、併給調整を行うかどうかは立法府の裁量の範囲に属する事柄であり、給付額の決定も立法政策上の裁量事項であって、「それが低額であるからといつて当然に憲法二五条違反に結びつくものということはできない」としています。
14条・13条についての判断
14条・13条について、判決文は次のように述べています。
- 憲法25条の要請にこたえて制定された法令において、受給者の範囲、支給要件、支給金額等につきなんら合理的理由のない不当な差別的取扱いをしたり、個人の尊厳を毀損するような内容の定めを設けているときは、別に14条・13条違反の問題を生じうることは否定しえない
- しかし、本件併給調整条項の適用で差別が生じるとしても、身体障害者・母子に対する諸施策や生活保護制度の存在などに照らして総合的に判断すると、その差別がなんら合理的理由のない不当なものとはいえないとした原審の判断は、正当として是認できる
- 児童の個人としての尊厳を害し、13条に違反する恣意的かつ不合理な立法であるともいえない
裁判所サイトの裁判要旨は、「児童扶養手当法(昭和四八年法律第九三号による改正前のもの)四条三項三号は、憲法二五条に違反しない。」「児童扶養手当法(昭和四八年法律第九三号による改正前のもの)四条三項三号は、憲法一四条、一三条に違反しない。」の2点です。
学説の整理(講学上):判決文の言葉と学説の名前は別
生存権の条文の性格については、学説に次のような呼び名があります。これは講学上の整理で、条文にも、上で見た判決文にも出てこない言葉です(朝日訴訟・堀木訴訟・食糧管理法違反事件の判決文に、これらの呼び名は書かれていません)。
| 呼び名(講学上) | 考え方の大づかみな内容 |
|---|---|
| プログラム規定説 | 25条は、国政の方針や政治的な責務を示したもので、国民に法的な権利を与えたものではない |
| 抽象的権利説 | 25条は法的な権利を定めたものだが、その内容は抽象的で、法律によって具体化されて初めて、裁判で具体的に請求できる権利になる |
| 具体的権利説 | 25条を直接の根拠に、裁判で具体的な救済を求められる場面を認める |
試験対策では、判決文の言葉(「国の責務として宣言」「具体的権利を賦与したものではない」「具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によつて、はじめて与えられているというべきである」)が出てきたときに、問題文の記述が判決文と同じ方向かどうかを確認します。学説の呼び名が出てきたときは、上の表のどれの説明に当たるかを区別します。判決文の言葉と学説の呼び名を混ぜて覚えないことが大切です。
試験での問われ方:内容の型
実際の問題文は掲載しませんが、生存権の分野には次のような型があります。
- 条文の項の取り違え:「権利」の形で書かれているのは1項、「努めなければならない」の形は2項
- 判決文の言い回しの入れ替え:25条1項は「国の責務として宣言」であって、直接個々の国民に具体的権利を賦与したものではない、という内容が、「具体的な権利を直接保障した」などに言い換えられる
- 朝日訴訟の結論の取り違え:被保護者の死亡で訴訟が終了した事件であるのに、「生活扶助基準を違憲と判断した」と書く
- 堀木訴訟の結論の取り違え:25条に違反しない(立法府の広い裁量)という結論を逆にする
- 司法審査の限定の脱落:朝日訴訟の判決文が、著しく低い基準の設定などで裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合に司法審査の対象になる、としている点の限定を落とす
間違えやすいポイント
| 誤りやすい記述 | 判決文・条文に照らすと |
|---|---|
| 朝日訴訟で、最高裁判所は生活扶助基準を違憲・違法とした | 主文は、上告人の死亡により訴訟が終了したというもの。25条についての意見は括弧書きの付加で、基準が裁量権の限界をこえた違法があるとは断定できないとしている |
| 25条1項は、国民に具体的な請求権を直接与えている | 判決文は「直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」。具体的権利は生活保護法によって、はじめて与えられているとする(朝日訴訟) |
| 生活保護を受ける地位は、国の恩恵にすぎない | 判決文は「単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、法的権利」(朝日訴訟)。ただし一身専属で、相続の対象にならない |
| 堀木訴訟では、併給調整条項が25条に違反するとされた | 25条にも14条・13条にも違反しない(昭和51(行ツ)30) |
| 「健康で文化的な最低限度の生活」の中身は、憲法が数値で決めている | 朝日訴訟の判決文は「抽象的な相対的概念」、堀木訴訟の判決文は「きわめて抽象的・相対的な概念」とし、堀木訴訟は、その時々の文化の発達の程度、経済的・社会的条件等との相関関係において判断決定されるとする。具体的な基準は生活保護法8条の「厚生労働大臣の定める基準」 |
| プログラム規定説は最高裁判所の判決文の言葉である | 判決文にこの呼び名は書かれていない。講学上の呼び名 |
| 判決の結論は、裁判要旨の欄だけで分かる | 朝日訴訟の要旨欄は訴訟の終了だけ。25条の判断内容は判決文に書かれている |
まとめ
- 25条1項は国民の「権利」の形、2項は国の「努めなければならない」という責務の形。生活保護法1条は、25条に規定する理念に基づく、と書いている
- 昭和23年の食糧管理法違反事件の裁判要旨は、25条1項を国家の責務の宣言とし、個々の国民に対して具体的に義務を有するものではないとした
- 朝日訴訟(昭和39(行ツ)14)は、被保護者の死亡で訴訟が終了した事件。判決文は、保護受給権を法的権利としつつ一身専属とし、括弧書きの意見で、25条1項は直接具体的権利を賦与したものではなく、具体的権利は生活保護法で与えられるとした。基準の設定は厚生大臣の裁量に委され、著しく低い基準など裁量権の限界をこえた場合は司法審査の対象になる
- 堀木訴訟(昭和51(行ツ)30)は、25条の具体化は立法府の広い裁量にゆだねられ、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえない場合を除き、裁判所の審査に適しないとして、併給調整条項を25条・14条・13条に違反しないとした
- プログラム規定説などの呼び名は講学上のもので、判決文の言葉とは区別する
科目ごとの配点と学習の優先順位は行政書士の点数配分、判例の覚え方の全体像は行政書士の憲法判例で整理しています。
参照した一次ソース
- e-Gov法令検索 日本国憲法(25条)
- e-Gov法令検索 生活保護法(1条・3条・8条)
- 裁判所 裁判例検索(最高裁判所判例集)の個別ページと判決文:食糧管理法違反(昭和23(れ)205)・朝日訴訟(昭和39(行ツ)14)・堀木訴訟(昭和51(行ツ)30)
よくある質問
Q朝日訴訟で、最高裁判所は生活保護の基準の違法性をどう判断しましたか?
昭和42年5月24日の最高裁判所大法廷判決(昭和39(行ツ)14)は、主文で「本件訴訟は、昭和三九年二月一四日上告人の死亡によつて終了した。」と述べ、裁判所サイトの裁判要旨も、生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は被保護者の死亡により当然終了する、というものです。そのうえで判決文は、括弧書きで「なお、念のために」と断り、生活扶助基準の適否について意見を付けています。この部分の結論は、本件の生活扶助基準が入院入所患者の最低限度の日用品費を支弁するに足りるとした厚生大臣の認定判断について、与えられた裁量権の限界をこえ、または裁量権を濫用した違法があるとは「とうてい断定することができない」というものです。訴訟の結論(主文)は訴訟の終了で、この意見は主文を導く理由ではありません。
Q堀木訴訟で、最高裁判所は児童扶養手当法の併給調整条項を憲法25条違反としましたか?
違反としていません。昭和57年7月7日の最高裁判所大法廷判決(昭和51(行ツ)30)の裁判要旨は、児童扶養手当法(昭和48年法律第93号による改正前のもの)4条3項3号は、憲法25条に違反せず、憲法14条・13条にも違反しない、というものです。主文は「本件上告を棄却する。」で、判決文は、25条の趣旨にこたえてどのような立法措置を講ずるかの選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられている、という考え方を示しています。
Q憲法25条の1項と2項は、何が違いますか?
1項は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、国民の「権利」の形で書かれています。2項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、国の「努めなければならない」という責務の形で書かれています。堀木訴訟の判決文は、1項について、国が個々の国民に対して具体的・現実的に義務を有することを規定したものではない、と述べています。
Q生活保護の「基準」は、法律のどこで誰が定めることになっていますか?
生活保護法8条1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と定めています。同条2項は、この基準が、年齢別・性別・世帯構成別・所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これをこえないものでなければならない、と定めています。朝日訴訟当時の判決文には「厚生大臣」と書かれており、現行法の「厚生労働大臣」とは名称が違います。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月8日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

