行政書士 憲法 問9:司法権・違憲審査・付随的審査制
司法権及び違憲審査制に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア日本国憲法は、具体的な争訟と切り離した形で抽象的・一般的に法律の合憲性を審査する抽象的違憲審査制を採用している。
- イ最高裁判所が下した法律の違憲判決は、その法律を直接廃止する効力(一般的効力説)を持ち、立法府は当然に当該法律を改廃しなければならない。
- ウ最高裁判所の違憲審査権は、具体的な訴訟事件において当該事件の解決に必要な限りで法律等の合憲性を審査するという付随的審査制をとる。正答
- エ下級裁判所は、最高裁判所の違憲審査権に服するため、自らは違憲審査権を行使することができない。
- オ条例が上位法令(法律・政令)に違反するかどうかは行政事件として扱われ、司法審査の対象にはならない。
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日本の違憲審査制は「付随的違憲審査制」を採用しています(ウが正しい)。これは、具体的な訴訟事件の解決に必要な範囲で、その事件に適用される法律等の合憲性を審査する方式です。アは「抽象的違憲審査制(ドイツ型)」を採用しているとする点で誤りです。警察予備隊事件(最大判昭27.10.8)において最高裁は、具体的事件と離れた抽象的な違憲審査の申立ては認められないと判示しました。イは「一般的効力説(廃止効力)」が日本で採用されているとする点で通説・実務と異なります(個別的効力説が通説)。
付随的違憲審査制とは「具体的な争訟事件において当該事件を解決するために必要な限りで、適用される法令の合憲性を審査する」方式です(ウ)。この方式では、具体的事件から切り離された抽象的な違憲審査申立ては許されません。警察予備隊事件(最大判昭27.10.8)は「裁判所は具体的な法律上の争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない」と判示し、抽象的審査を否定しました(アが誤りの理由)。違憲判決の効力については学説が分かれ、①個別的効力説(その事件にのみ効力を及ぼし、法律は形式上存続する)と②一般的効力説(法律を廃止する効力を持つ)がありますが、通説・実務は個別的効力説です(イが「一般的効力説を採用」とする点で誤り)。エについて:下級裁判所も81条に基づく違憲審査権を有すると解されています(最高裁の「最終的な」審査権者であることと矛盾しない)。
【理論的背景】
違憲審査制には2類型があります。
- 付随的違憲審査制(アメリカ型): 具体的事件に付随する形で合憲性を審査。裁判所が通常裁判所の延長として審査。
- 抽象的違憲審査制(ドイツ・オーストリア型): 具体的事件と無関係に憲法裁判所等が違憲審査を行う。
日本国憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めますが、この条文自体は付随的/抽象的のどちらを採用するか明示していません。しかし警察予備隊事件(最大判昭27.10.8)によって、付随的審査制であることが確定的に判示されています。
【実務・条文構造】
違憲判決の効力について実務上重要な点を補足します。通説の個別的効力説(判決の効力は当該事件の当事者間にのみ及ぶ)によれば、違憲判決があっても法律は形式上存続し、別の事件では改めて違憲審査を受けることになります。実務では、最高裁が違憲判決を下した法律については立法府が後日改廃するという慣例がありますが(例:非嫡出子相続分・尊属殺重罰規定)、これは法的義務ではなく政治的慣例です(イが「立法府は当然に改廃しなければならない」とする点で誤り)。
下級裁判所の違憲審査権:下級裁判所も具体的事件において違憲審査を行うことができます(違憲判断を出した下級審判決が上訴によって最高裁に持ち込まれるケースが多い)。81条が最高裁を「終審裁判所」とするのは、最終的な判断権者として位置づけることを意味するにすぎず、下級審が違憲審査を行うことを禁止してはいません(エが誤りの理由)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験の司法権問題では、「付随的違憲審査制(日本)vs 抽象的違憲審査制(ドイツ)」の区別と、警察予備隊事件の判旨が最頻出です。また「下級裁判所にも違憲審査権があるか」「違憲判決の効力(個別的効力vs一般的効力)」も問われます。司法権の範囲(法律上の争訟性・統治行為論)も連関する重要論点です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。日本は付随的違憲審査制を採用(警察予備隊事件)。「抽象的違憲審査制」を採用しているとする点が明確に誤り。
- イ: 誤り。通説・実務は個別的効力説。「一般的効力説が採用されている」という断定は誤りであり、「立法府は当然に改廃しなければならない」という法的義務論も成立しない。
- ウ: 正しい。付随的審査制の説明として正確。「具体的な訴訟事件において」「当該事件の解決に必要な限りで」という二つの限定が正確に表現されている。
- エ: 誤り。81条の「終審裁判所」という地位は下級審の違憲審査権を否定しない。下級裁判所も違憲判断を示すことができる(最終的な判断権が最高裁にあるだけ)。
- オ: 誤り。条例が上位法令に違反するかどうかも司法審査の対象となる(徳島市公安条例事件等)。
【根拠条文】
日本国憲法 第76条第1項(司法権)、第81条(最高裁判所の違憲審査権・終審)
【参照判例】
警察予備隊事件(最大判 昭和27年10月8日)
【補足】
「付随的審査制=具体的事件に付随」「抽象的審査制=具体的事件不要」という対比を明確に。日本が付随的審査制を採ることは警察予備隊事件で確定的に示されている。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第81条(最高裁判所の違憲審査権)、第76条(司法権) 判例: 警察予備隊事件(最大判 昭和27年10月8日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。