憲法4表現の自由・検閲の禁止

行政書士 憲法 問4:表現の自由・検閲の禁止

表現の自由及び検閲の禁止に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。

  • 税関が行う輸入図書の審査・差止めは、思想内容等の表現物の流通を禁止するものではあっても、行政権による事前審査に当たり検閲に該当する。正答
  • 検閲は行政権が主体となって行うものであり、裁判所による事前差止命令は検閲には当たらない。
  • 名誉毀損的な表現に対する裁判所の事前差止めは、一定の厳格な要件の下で例外的に許容されうる。
  • 表現の自由は民主主義社会の基盤をなす重要な権利であるため、他の権利と比べて優越的地位が認められる。
  • 「検閲」に該当する行政行為は、たとえ公共の安全や国家安全保障の観点から必要性があるとしても、憲法上一切許されない。
正答:税関が行う輸入図書の審査・差止めは、思想内容等の表現物の流通を禁止するものではあっても、行政権による事前審査に当たり検閲に該当する。

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アが誤りです。税関検査事件(最大判昭59.12.12)は、税関による輸入図書の審査について、「日本国内への流通を禁じるものであって、思想内容等の表現物の国内発表を禁止するものではない」という理由で、検閲には該当しないと判示しました。アは「検閲に該当する」と断定しており、判例の趣旨と正反対です。イは正しく(裁判所の命令は検閲でない)、ウは北方ジャーナル事件で一定条件下の差止めが認められており正しいです。オは「一切許されない」という検閲の絶対的禁止の趣旨として正しいです。

標準試験対策の基準レベル

検閲の定義について、最高裁(税関検査事件・最大判昭59.12.12)は「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるもの」と定義しています。税関検査はこの定義のうち「発表前」という要件を欠く(国内未流通であっても外国での発表は既に済んでいる)とし、検閲不該当・合憲と判断しました(アが誤り)。一方、裁判所による出版物の差止め(北方ジャーナル事件・最大判昭61.6.11)については、「検閲には当たらない(イ)」としつつも、事前抑制として原則として許されないものの、「被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあり、その表現内容が真実でなく又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であるとき」には例外的に差止めが許されうるとしました(ウが正しい)。

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【理論的背景】

表現の自由(憲法21条1項)は、民主主義の根幹をなす権利として「優越的地位」が認められ(エが正しい理由)、精神的自由権に対しては経済的自由権よりも厳格な違憲審査基準が妥当するとされます(二重の基準論)。その中でも検閲の禁止(21条2項)は絶対的禁止とされており、公益上の必要があっても検閲に当たる場合は一切許されません(オが正しい理由)。この絶対性は、事後的規制と異なり事前抑制が表現そのものを根源的に封殺するリスクを持つからです。

【実務・条文構造】

検閲の定義(最大判昭59.12.12・税関検査事件)の5要素を分析します。

1. 行政権が主体: 立法権・司法権は含まない(裁判所の差止め命令は検閲でない=イが正しい)。

2. 思想内容等の表現物を対象: 内容中立的な規制(時・場所・方法の規制)は含まない。

3. 発表の禁止を目的: 規制目的が流通・販売禁止ではなく「発表」禁止でなければならない。

4. 網羅的一般的な審査: 個別的・例外的な審査は含まない。

5. 発表前: 表現が公衆の目に触れる前の審査。

税関検査は5番目の「発表前」要件を欠くとされました(外国で既に発表・流通済みの書籍を国内に持ち込む際の審査であるため)。これが税関検査が検閲に当たらないとされる核心的理由です。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「検閲の定義の要件」「税関検査が検閲不該当とされた理由」「裁判所の差止め命令と検閲の区別」が頻出です。典型的な引っかけは本問アのように「税関検査=検閲」とする選択肢、および「裁判所の差止め=検閲」とする誤記述です。北方ジャーナル事件における「一定要件下での事前差止め許容」も重要で、「名誉毀損的表現については一切差止め不可」とする選択肢は誤りとなります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り(正答)。税関検査は「発表前」要件を欠くため検閲不該当。輸入禁制品としての関税法上の処分にすぎないと位置づけられた。
  • イ: 正しい。「行政権が主体」という要件から、司法権(裁判所)による命令は検閲の概念に含まれない。これは判例・通説の一致した理解。
  • ウ: 正しい。北方ジャーナル事件(最大判昭61.6.11)が示した「厳格な要件の下での例外的許容」。要件は①プライバシー・名誉毀損的表現、②被害が重大・著しく回復困難、③内容が真実でなく専ら公益目的でないことが明白、の複合要件。
  • エ: 正しい。精神的自由権の優越的地位・二重の基準論は通説・判例(猿払事件・最大判昭49.11.6等)でも前提とされる。
  • オ: 正しい。21条2項の検閲禁止は絶対的禁止規定であり、緊急事態条項(憲法には明示規定なし)によっても解除できないとするのが通説。

【根拠条文】

日本国憲法 第21条第1項(表現の自由)、同第21条第2項(検閲の禁止・通信の秘密)

【参照判例】

税関検査事件(最大判 昭和59年12月12日)、北方ジャーナル事件(最大判 昭和61年6月11日)

【補足】

「税関検査は検閲に当たらない」という判例の結論と、その理由(発表前要件を欠く)を一セットで暗記することが試験対策の要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第21条第2項(検閲の禁止) 判例: 税関検査事件(最大判 昭和59年12月12日)、北方ジャーナル事件(最大判 昭和61年6月11日) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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