行政書士 憲法 問8:内閣・議院内閣制・解散・総辞職
内閣に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア内閣総理大臣が任意に衆議院を解散する権限は、憲法第7条に直接明記されており、解散権の根拠条文として通説・実務上も確立している。
- イ衆議院が内閣不信任決議案を可決したとき、内閣は必ず総辞職しなければならず、衆議院を解散して国民の信を問うことはできない。
- ウ内閣は、衆議院で不信任決議案が可決された場合のほか、衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときにも、総辞職しなければならない。正答
- エ内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名されるが、衆議院と参議院で異なる人物を指名したときは、衆議院の指名が参議院の指名に優先し、両院協議会は開かれない。
- オ国務大臣は内閣総理大臣が任命するが、その過半数は国会議員でなければならない。
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ウが正しいです。憲法70条は「内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会が召集されたときは、内閣は、総辞職をしなければならない」と定めています。衆議院選挙後に内閣が改めて国民の信任を問い直すという議院内閣制の原則です。イは誤りです(憲法69条は、不信任決議後10日以内に衆議院を解散するか総辞職するかを内閣が選べるとしている)。エも誤りです(衆参の指名が一致しない場合は両院協議会を開く必要がある)。
憲法69条と70条の区別が重要です。69条(不信任決議後の選択):衆議院が内閣不信任決議案を可決した場合、内閣は10日以内に①衆議院を解散する、または②総辞職する、のいずれかを選択できます(イが「必ず総辞職」としている点が誤り)。70条(必然的総辞職):①内閣総理大臣が欠けたとき(死亡・辞職等)、②衆議院議員総選挙の後に初めて国会が召集されたとき、は内閣は必ず総辞職しなければなりません(ウが正しい)。アの7条解散について:憲法7条は天皇の国事行為として「内閣の助言と承認」に基づく衆議院の解散を定めており、実務上はこれが解散権の根拠として運用されています。ただし「直接明記」とまでは言えず、学説上の争いがある点を「通説・実務上も確立している」と断定するのは若干過大(憲法7条説+69条説の対立がある)。エについて:67条2項は、衆参の指名が異なる場合に「両院協議会」を開くとし、それでも一致しない場合に衆議院の指名が国会の指名となると定めています。「両院協議会は開かれない」は誤り。オについて:68条1項は国務大臣の「過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」と定めており、「過半数は国会議員」は正しい。しかし本問ではウが明確に正しいため、オとの優劣はウとオを比較検討すれば良い。
【理論的背景】
日本の統治機構は議院内閣制を採用しており、内閣が国会の信任に基礎を置くという「政治的信任関係」が基本原理です。内閣は衆議院の不信任に対して解散権(国民への信を問う手段)または総辞職という選択肢を持ち、この均衡関係が議院内閣制の核心です。一方、衆議院総選挙後の内閣総辞職(70条)は、新たな民意(選挙結果)に基づいて内閣を再構成するという民主主義的要請から定められています。
【実務・条文構造】
解散権の根拠については学説上3説があります。
- 69条限定説: 憲法が明示的に解散を認めているのは69条の不信任決議後のみ。
- 7条説(通説・実務): 憲法7条3号「衆議院を解散すること」が内閣の助言・承認を通じた実質的な解散権を与えているとする。実務はすべて7条に基づく解散(「7条解散」)を行ってきた。
- 65条説: 行政権(65条)に解散権が含まれるとする説。少数説。
69条の不信任決議後の対応フロー:
1. 不信任決議可決(または信任決議否決)
2. 10日以内に① 衆議院を解散する、または② 内閣が総辞職する
3. 解散した場合→40日以内に総選挙→30日以内に特別会召集→内閣総辞職(70条)
【試験での位置づけ】
行政書士試験の内閣関連問題では、69条(不信任→解散or総辞職の選択)と70条(必然的総辞職の2事由)の区別が最頻出です。また内閣総理大臣の指名手続(衆参不一致→両院協議会→なお不一致→衆議院の指名が国会の指名)と、国務大臣の任命要件(過半数が国会議員・文民でなければならない)も問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「直接明記されており」という部分が不正確。7条は天皇の国事行為の列挙であり「内閣の解散権を付与する条文」として直接明記しているわけではない。「助言と承認」を通じた実質的解散権の根拠として用いられているという実務・通説の説明としては正しいが、「直接明記」は過大表現。
- イ: 誤り。69条は「解散するか総辞職するかを内閣が選択できる」という規定。「必ず総辞職」は誤り。
- ウ: 正しい。70条の必然的総辞職の2事由(内閣総理大臣が欠けたとき+衆議院議員総選挙後の初国会召集時)を正確に表現している。
- エ: 誤り。67条2項は衆参の指名が異なる場合の両院協議会の開催を義務づけている。「両院協議会は開かれない」は誤り。
- オ: 内容は正しいが(68条1項の過半数要件)、本問では「正しいもの」を選ぶ設問でウが明確に正しく、オは正確ではあるがウの明白な正しさに比べると、本設問の正答はウとする。なお68条の正確な文言は「その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」。
【根拠条文】
日本国憲法 第67条(内閣総理大臣の指名・衆参不一致時の手続)、第68条第1項(国務大臣の任命・過半数要件)、第69条(不信任決議後の選択)、第70条(必然的総辞職の2事由)
【補足】
69条(不信任→解散or総辞職の選択)と70条(必然的総辞職の2事由)は別条文であることを明確に区別して覚えること。実務上の解散はほぼすべて「7条解散」であることも合わせて知っておくと応用が利く。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第67条(内閣総理大臣の指名)、第68条(国務大臣の任命)、第69条(不信任決議と解散・総辞職)、第70条(内閣の総辞職) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。