憲法19人身の自由・不逮捕特権・令状主義

行政書士 憲法 問19:人身の自由・不逮捕特権・令状主義

人身の自由(身体的自由)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 憲法33条は、現行犯の場合であっても、逮捕には必ず裁判官が発する令状が必要であると規定している。
  • 憲法34条は、被疑者・被告人が弁護人に依頼する権利を保障しているが、これは刑事手続においてのみ保障されるものであり、行政手続には一切適用されない。
  • 憲法38条第1項が保障する黙秘権(自己負罪拒否特権)は、刑事上の不利益についてのみ保障されるものであり、同一事実について民事上・行政上の責任追及のための自白を強制することは憲法上許容される。
  • 何人も、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。正答
  • 拷問は、いかなる場合においても絶対に禁止されるが、死刑制度は「残虐な刑罰」(憲法36条)に該当するため、現行の死刑制度は違憲である。
正答:何人も、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

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憲法40条は「何人も、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」と規定しており、エが正しい内容です。アは誤りで、現行犯の場合は令状なく逮捕できます(33条但書)。ウは誤りで、黙秘権の保障は刑事上の不利益だけでなく、自己の犯罪に関わる事実について自己負罪の危険がある場合全般に及ぶと解されています。オは誤りで、最高裁(昭和23年)は死刑は残虐な刑罰にあたらず合憲と判断しています。

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人身の自由に関する憲法規定の体系を整理します。①33条(逮捕の要件):逮捕には裁判官の令状が必要。ただし「現行犯の場合は、この限りでない」という例外あり(アが誤りである根拠)。②34条(拘禁・弁護人依頼権):理由の告知と弁護人依頼権を保障。成田新法事件(最大判平4.7.1)は33条・34条に限らず憲法31条が行政手続にも及びうるとしますが、弁護人依頼権自体の行政手続への直接適用は別問題であり、イの「一切適用されない」という断定も過度(行政手続法上の弁護士等の補佐・代理制度あり)。③38条(黙秘権):「自己に不利益な供述を強要されない」と規定。通説・判例はこれを刑事手続に限定せず、自己の刑事上の責任追及に関わる場面で広く保障されると解します(ウが誤りである根拠)。④40条(刑事補償請求権):無罪裁判を受けた者の国への補償請求権を保障(エが正答)。⑤36条(拷問・残虐刑の禁止):拷問は絶対禁止。死刑については最高裁が1948年に「残虐な刑罰にあたらない」として合憲と判示(オが誤りである根拠)。

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【理論的背景】

人身の自由は、自由権の中で身体の拘束から個人を守る権利群です。日本国憲法では31条〜40条にわたって詳細な保障規定を置いており、刑事手続における自由の保護(適正手続・令状主義・黙秘権等)と、抑留・拘禁された者の事後的保護(刑事補償)の二面構造を持ちます。これは戦前の治安維持法体制下での人権弾圧への反省から、特に詳細な規定が設けられた領域です。

【実務・条文構造】

各規定の詳細を整理します。憲法33条は「現行犯の場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」と規定しており、現行犯逮捕は令状なしで可能です(アが誤りである根拠)。憲法38条1項の黙秘権(自己負罪拒否特権:nemo tenetur principle)については、「自己の刑事上の責任を問われる虞のある事項について」の供述強制が禁止されるという解釈が通説・判例の立場です。民事・行政手続においても、当該供述が同一事実について刑事追訴に繋がるリスクがある場合には黙秘権が及びうるとされており、「刑事上の不利益についてのみ」という限定(ウ)は不正確です。憲法40条の刑事補償は、無罪裁判を受けた者が国家に補償を求める権利を保障します。これは適正手続を尽くした結果であっても(善意の誤判であっても)補償義務が生じるという制度であり、国家賠償(17条・国賠法)とは異なり過失を要件としません。刑事補償法がこれを具体化しています。憲法36条について、拷問は絶対禁止(他の自由と異なり「公共の福祉」による制約も許されない絶対的禁止)であるのに対し、死刑については最高裁(最大判昭23.3.12)が「その執行方法が残虐でない限り死刑は違憲でない」と判示しており、現行の死刑制度(絞首刑)は合憲とされています(オが誤りである根拠)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における人身の自由のポイントは次の3点です。①令状主義(33条):現行犯は例外、令状には理由となる犯罪の明示が必要。②黙秘権(38条):「自己に不利益な供述を強要されない」=自己負罪拒否特権。③刑事補償(40条):無罪裁判後の国への補償請求権(国賠法17条と区別)。行政書士試験では憲法31条の適正手続と絡めて出題されることもありますので、31条・33条・34条の連携(逮捕→理由の告知・弁護人依頼権→令状主義)の流れを押さえておくことが重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。現行犯の場合は令状なく逮捕できる(33条但書)。現行犯は証拠の新鮮性・逮捕の緊急性があるため令状の事前審査を不要とする趣旨。
  • イ: 誤り。弁護人依頼権(34条)は刑事手続での保障が核心だが、「行政手続に一切適用されない」という断定は過度。成田新法事件(最大判平4.7.1)は行政手続にも憲法31条の趣旨が及びうるとしており、弁護士等の関与は行政手続でも認められている(行政手続法上の代理人制度等)。
  • ウ: 誤り。黙秘権は刑事上の不利益に限らず、当該供述が刑事追訴のリスクを生じさせる場面で保障が及びうる。「民事・行政手続では自白強制が許容される」という断定は誤り。
  • エ: 正答。憲法40条の文言どおり。刑事補償法がこれを受けて具体的な補償額・手続を定めている。
  • オ: 誤り。拷問の絶対禁止は正しいが、死刑は最高裁(最大判昭23.3.12)が合憲と判示しており、「残虐な刑罰」にはあたらないとされている。

【根拠条文】

日本国憲法 第33条(逮捕の要件・令状主義)、第36条(拷問の禁止)、第38条第1項(自己負罪拒否特権)、第40条(刑事補償請求権)

【参照判例】

最大判 昭和23年3月12日(死刑合憲判決)

【補足】

刑事補償(40条)と国家賠償(17条)の違い(過失要否)、令状主義の現行犯例外(33条但書)、黙秘権の射程は行政書士頻出の区別事項。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第33条(逮捕の要件)、第34条(拘禁の理由の告知)、第36条(拷問の禁止)、第37条(刑事被告人の権利)、第38条(自己負罪拒否特権)、第40条(刑事補償) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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