問題
人身の自由(身体的自由)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
憲法40条は「何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる」と規定しており、エが正しい内容です。アは誤りで、33条は「現行犯として逮捕される場合を除いては」令状が必要としており、現行犯は令状なく逮捕できます。イは誤りで、34条は「抑留又は拘禁」一般について定め、刑事手続に限る文言はありません。ウは誤りで、38条1項は「何人も」と定め、被告人に限っていません。オは誤りで、最高裁(昭和23年)は死刑は残虐な刑罰にあたらず合憲と判断しています。
人身の自由に関する憲法規定を条文で整理します。①33条:「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」。現行犯は令状主義の例外です(アが誤りである根拠)。②34条:「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない」。主語は「何人も」、対象は「抑留又は拘禁」であり、刑事手続に限定する文言はありません。「行政手続には一切適用されない」と断定するイは誤りです。③38条1項:「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」。保障の主体は「何人も」であり、被告人に限られず、捜査段階の被疑者にも及びます(ウが誤りである根拠)。④40条(刑事補償請求権):無罪の裁判を受けた者の国への補償請求権を保障(エが正答)。⑤36条:「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」。死刑については最高裁が1948年に「残虐な刑罰にあたらない」として合憲と判示しています(オが誤りである根拠)。
【理論的背景】
人身の自由は、自由権の中で身体の拘束から個人を守る権利群です。日本国憲法では31条〜40条にわたって詳細な保障規定を置いており、刑事手続における自由の保護(適正手続・令状主義・黙秘権等)と、抑留・拘禁された者の事後的保護(刑事補償)の二面構造を持ちます。これは戦前の治安維持法体制下での人権弾圧への反省から、特に詳細な規定が設けられた領域です。
【実務・条文構造】
各規定の詳細を整理します。憲法33条は「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」と規定しており、現行犯逮捕は令状なしで可能です(アが誤りである根拠)。憲法34条前段は「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない」と定めます。条文は「抑留又は拘禁」一般を対象としており、刑事手続に限るとは書かれていません(イが誤りである根拠)。なお、刑事被告人が弁護人を依頼する権利は37条3項が別に定めています。憲法38条1項の黙秘権(自己負罪拒否特権:nemo tenetur principle)は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と規定され、保障の主体を被告人に限定していません。起訴前の被疑者も「何人も」に含まれるため、捜査段階の取調べにも及びます。刑事訴訟法198条2項も、取調べに際し被疑者に「あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない」と定めています(ウが誤りである根拠)。憲法40条の刑事補償は、無罪の裁判を受けた者が国に補償を求める権利を保障します。これは適正手続を尽くした結果であっても(善意の誤判であっても)補償が認められる制度であり、「公務員の不法行為により、損害を受けたとき」を要件とする国家賠償請求権(17条)とは要件が異なります。憲法36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と定め、拷問は絶対禁止であるのに対し、死刑については最高裁(最大判昭23.3.12)が「その執行方法が残虐でない限り死刑は違憲でない」と判示しており、現行の死刑制度(絞首刑)は合憲とされています(オが誤りである根拠)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における人身の自由のポイントは次の3点です。①令状主義(33条):現行犯は例外、令状には理由となる犯罪の明示が必要。②黙秘権(38条1項):「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」=自己負罪拒否特権(被疑者にも及ぶ)。③刑事補償(40条):無罪の裁判を受けた後の国への補償請求権(憲法17条の国家賠償請求権と区別)。行政書士試験では憲法31条の適正手続と絡めて出題されることもありますので、31条・33条・34条の連携(逮捕→理由の告知・弁護人依頼権→令状主義)の流れを押さえておくことが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。33条は「現行犯として逮捕される場合を除いては」令状を要求しており、現行犯は令状なく逮捕できる。現行犯は証拠の新鮮性・逮捕の緊急性があるため令状の事前審査を不要とする趣旨。
- イ: 誤り。34条は「何人も」「抑留又は拘禁されない」と定め、刑事手続に限る文言を置いていない。「行政手続には一切適用されない」という断定は条文に根拠がない。
- ウ: 誤り。38条1項の主語は「何人も」であり、被告人に限定されていない。被疑者も捜査段階の取調べで黙秘権を行使でき、刑事訴訟法198条2項は取調べ前の供述拒否権の告知を義務づけている。
- エ: 正答。憲法40条の文言どおり。刑事補償法がこれを受けて具体的な補償額・手続を定めている。
- オ: 誤り。拷問の絶対禁止は正しいが、死刑は最高裁(最大判昭23.3.12)が合憲と判示しており、「残虐な刑罰」にはあたらないとされている。
【根拠条文】
日本国憲法 第33条(逮捕の要件・令状主義)、第34条(抑留・拘禁の要件・弁護人依頼権)、第36条(拷問及び残虐な刑罰の禁止)、第38条第1項(自己負罪拒否特権)、第40条(刑事補償請求権)
刑事訴訟法 第198条第2項(被疑者への供述拒否権の告知)
【参照判例】
最大判 昭和23年3月12日(死刑合憲判決)
【補足】
刑事補償(40条)と国家賠償(17条)の要件の違い、令状主義の現行犯例外(33条「現行犯として逮捕される場合を除いては」)、黙秘権の主体(「何人も」=被疑者を含む)は行政書士頻出の区別事項。
- 日本国憲法第33条・第34条・第38条・第36条・第40条・第17条e-Govで原文を読む
- 刑事訴訟法第198条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第33条(逮捕の要件)、第34条(拘禁の理由の告知)、第36条(拷問の禁止)、第37条(刑事被告人の権利)、第38条(自己負罪拒否特権)、第40条(刑事補償) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

