行政書士 民法 問101:民法総則
消滅時効の期間および起算点に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか(2020年施行の改正民法に基づいて答えること)。
- ア医師の診療費の消滅時効は3年、弁護士報酬の消滅時効は2年というように、職業ごとに異なる消滅時効期間が現行民法に規定されている。
- イ債権の消滅時効の起算点について、現行民法は「権利を行使することができる時」(客観的起算点)を基準とし、「権利者が権利を行使できることを知った時」(主観的起算点)は考慮しない。
- ウ不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、「被害者が損害および加害者を知った時から3年」(主観的起算点)または「不法行為の時から20年」(客観的起算点)のいずれか早い方で消滅する。正答
- エ人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、一般の債権と同様、「権利者が権利行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方で消滅する。
- オ確定判決によって確定した権利については、本来の時効期間が10年より短いものであっても一律に時効期間が10年となり、確定の時に弁済期の到来していない債権についても同様に10年となる。
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ウが正しいです。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、民法724条により「被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年」(主観的起算点・短期消滅時効)または「不法行為の時から20年」(客観的起算点・長期消滅時効)となっています。アは誤りで、2020年改正で職業別の消滅時効期間(旧民法170条〜174条)は廃止されました。イは誤りで、現行民法は主観的起算点(知った時から5年)と客観的起算点(権利行使できる時から10年)の双方を採用しています(民166条1項)。エは誤りで、人の生命・身体侵害による損害賠償請求権は「知った時から5年」(主観的)または「権利行使できる時から20年」(客観的)です(民167条)。オも誤りで、民169条2項により「確定の時に弁済期の到来していない債権」については時効期間が10年とはならず、本来の時効期間のままです(オは「弁済期未到来の債権も同様に10年」とする点が誤り)。
ウが正解です。民法724条は不法行為による損害賠償請求権について「被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないとき」(主観的起算点・3年)または「不法行為の時から20年間行使しないとき」(客観的起算点・20年)のどちらかが先に到来した時点で消滅時効が完成するとしています。ウはこれを正確に表現しています。
アは誤りです。2020年施行の改正民法により、旧民法170条(医師・薬剤師等の3年)・171条(弁護士等の2年)等の職業別消滅時効期間は廃止されました。現行法では一般的な消滅時効期間(民166条・5年・10年)に統一されています。
イは誤りです。現行民法166条1項は「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき(主観的起算点)。二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき(客観的起算点)」と規定しており、主観的起算点・客観的起算点の双方を採用しています(先に到来した方で消滅)。
エは誤りです。民法167条(人の生命・身体侵害)は、一般の債権(5年・10年)と異なり「権利行使できる時から20年」(客観的起算点が20年に延長)という特則を設けています。
オは誤りです。民169条1項は「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする」と規定し時効期間を10年に延長しますが、同条2項は「前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない」とする例外を定めています。オは「確定の時に弁済期の到来していない債権についても同様に10年となる」とする点が169条2項に反し、誤りです(なお確定判決による時効期間延長の現行条文は169条であり、改正前の旧174条の2ではない点にも注意)。
【理論的背景】
2020年施行の改正民法は消滅時効制度を大幅に整理しました。最大の変更点は、①職業別消滅時効期間(旧170条〜174条)の廃止、②一般消滅時効の二重起算点(主観的5年+客観的10年・先に到来した方で消滅)の導入、③人の生命・身体侵害に対する長期消滅時効の延長(20年)の3点です。職業別の短期消滅時効(医師3年・弁護士2年等)は取引実態との乖離・複雑さから廃止され、「知った時から5年」という主観的起算点が基準となりました。これにより、医師の診療費・弁護士報酬等についても「知った時から5年」が適用されます。
【条文構造】
消滅時効の主要条文(改正後)を整理します。
民166条1項:一般消滅時効の起算点・期間(①主観的起算点:知った時から5年、②客観的起算点:権利行使可能時から10年)。
民167条:人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の特則(主観的5年・客観的20年)。
民168条:定期金債権の消滅時効。
民169条:判決で確定した権利の消滅時効(1項:10年より短い時効期間の権利も確定判決等で確定すれば時効期間は10年。2項:確定の時に弁済期の到来していない債権には適用しない)。改正前の旧174条の2に相当する規定で、改正で169条に整理された。
民724条:不法行為の消滅時効(主観的3年・客観的20年)。
民724条の2:人の生命・身体侵害の不法行為時効(主観的5年・客観的20年)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における消滅時効の典型論点(2020年改正後)は、①職業別短期消滅時効の廃止(一般5年・10年に統一)、②一般消滅時効の二重起算点(主観的5年・客観的10年)、③不法行為の消滅時効(主観的3年・客観的20年)、④人の生命・身体侵害の消滅時効の特則(主観的5年・客観的20年)の4点です。改正前後で時効期間が変わった点(医師3年→知った時から5年等)は頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り(最重要改正点)。旧民法170条(医師・助産師・薬剤師:3年)、171条(弁護士・司法書士:2年)、173条(商品代金:2年)等の職業別短期消滅時効は2020年改正で廃止。現在は「知った時から5年」(主観的起算点・民166条1項1号)が適用される。改正前後の混同を避けること。
- イ: 誤り。民166条1項1号(主観的起算点・知った時から5年)と2号(客観的起算点・権利行使可能時から10年)の双方が現行法に規定されている。「主観的起算点を考慮しない」は改正前の一部規定に近い理解であり、改正後は不正確。
- ウ: 正答(民724条)。不法行為の消滅時効は短期3年(主観的)・長期20年(客観的)で「先に到来した方で消滅」。知的財産権侵害・環境汚染等の不法行為では長期20年が重要な保護機能を持つ。
- エ: 誤り(民167条との対比)。人の生命・身体侵害による損害賠償の客観的時効期間は「権利行使できる時から20年」(一般の10年より延長)。主観的起算点(知った時から5年)は一般と同じ。なお不法行為による生命・身体侵害の場合(民724条の2)も同様に5年・20年。
- オ: 誤り(民169条)。確定判決等によって確定した権利の時効期間は、本来10年より短いものであっても10年となる(169条1項)。ただし「確定の時に弁済期の到来していない債権」についてはこの延長規定は適用されない(169条2項)。オは弁済期未到来の債権も一律10年になるとする点で169条2項に反し誤り。条文番号も改正後は174条の2ではなく169条である点に注意。
【根拠条文】
民法 第166条第1項(一般消滅時効・主観的5年・客観的10年)、第167条(人の生命・身体侵害の特則・客観的20年)、第724条(不法行為の消滅時効・主観的3年・客観的20年)、第724条の2(人の生命・身体侵害の不法行為時効・主観的5年・客観的20年)
【補足】
2020年改正で職業別短期消滅時効(旧170条〜174条)廃止→一般消滅時効(主観的5年・客観的10年)に統一。不法行為の消滅時効(主観的3年・客観的20年)は変更なし。人の生命・身体侵害は客観的起算点が20年に延長(一般の10年より長い)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第166条(消滅時効の起算点・期間)、第167条(人の生命・身体侵害の時効)、第169条(判決で確定した権利の消滅時効)、第724条(不法行為の消滅時効)、第724条の2(生命・身体侵害の不法行為の時効) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。