問題
受領遅滞(債権者遅滞)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか(現行民法に基づいて答えること)。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
アが誤りです。受領遅滞が成立した場合の増加費用は、債権者が負担しなければなりません(民413条2項)。「すべて債務者が負担」という記述は誤りです。ウは正しく(弁済の提供+受領拒絶等が要件)、イは正しく(注意義務の軽減:民413条1項)、エは正しく(双務契約では対価的請求権を失わない・危険負担との関係)、オは正しく(受領遅滞の規定は民413条に明文化されています)。
アが誤りです。民法413条2項は「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする」と規定しており、増加費用は債権者の負担となります。「すべて債務者が負担」とするアは誤りです。
ウは正しいです。受領遅滞の成立要件は、①債務者が弁済の提供をしたこと(適法な提供)、②債権者が受領を拒絶または受領不能の状態にあること、の2点です(民413条)。
イは正しいです。民法413条1項は「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもってその物を保存すれば足りる」と規定しています。特定物の引渡債務者が本来負う善良な管理者の注意(民400条)から、自己の財産に対するのと同一の注意への軽減です。イはこの条文どおりです。
エは正しいです。受領遅滞があっても債務者の反対給付請求権が失われる理由はなく、受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能となった場合でも、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(民413条の2第2項)、債権者は反対給付の履行を拒むことができません(民536条2項)。
オは正しいです。民法413条が受領遅滞の効果(保存義務の軽減・増加費用の負担)を、413条の2第2項が受領遅滞中の履行不能の扱いを明文で定めています。
【理論的背景】
受領遅滞(債権者遅滞)とは、債務者が適法に弁済の提供をしたにもかかわらず、債権者が受領を拒絶または受領不能である状態をいいます。民法は弁済の提供(民492条)と弁済の供託(民494条)を通じて債務者を保護するとともに、受領遅滞の効果を413条(保存義務の軽減・増加費用の負担)と413条の2第2項(受領遅滞中の履行不能の帰責)で定めています。受領遅滞の法的性質については、①法定責任説(受領は法律上の義務ではないが法律が受領遅滞の効果を認める)と②債務不履行説(受領も債権者の債務であり、受領遅滞は債権者の債務不履行)という考え方があります。
【条文構造】
民413条・413条の2の規律を整理します。
民413条1項(注意義務の軽減):特定物引渡債務の場合、債務者は履行の提供をした時から引渡しまで「自己の財産に対するのと同一の注意」で保存すれば足りる(民400条の善良な管理者の注意からの軽減)。
民413条2項(増加費用の帰属):受領拒絶・受領不能によって履行の費用が増加したときは、その増加額は債権者の負担。例:保管費用の増加、特殊な梱包費用等。
民413条の2第1項(履行遅滞中の履行不能):債務者が遅滞の責任を負っている間に双方の責めに帰することができない事由で履行不能となったときは、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。
民413条の2第2項(受領遅滞中の履行不能):履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(民536条2項により債権者は反対給付の履行を拒めない)。
弁済の提供(民492条)との関係:適法な弁済の提供があると、債務者の遅滞責任が生じなくなる(遅延損害金の発生停止等)。受領遅滞は弁済提供の効果の一つとして位置づけられる。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における受領遅滞の典型論点は、①成立要件(弁済の提供+受領拒絶等)、②注意義務の軽減(善管注意→固有注意)、③増加費用の帰属(債権者負担・民413条2項)、④受領遅滞中の履行不能における危険の転換(民413条の2第2項)の4点です。特に「増加費用は誰が負担するか」という問いに対して「債権者負担」が正答となる点は頻出です。また、413条1項の軽減が「特定物の引渡し」の場合に限られる点も、条文の限定として問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ウ: 正しい。弁済の提供(民492条)には現実の提供(原則)と口頭の提供(例外)がある。受領拒絶や受領不能が明らかな場合は口頭の提供で足りる場合がある(民493条ただし書)。
- イ: 正しい。民413条1項の文言どおり。例:売主が売却した絵画を保管中、買主が受領を拒絶した場合、売主は履行の提供をした時から引渡しまで、善良な管理者の注意(民400条)ではなく自己の財産に対するのと同一の注意で保存すれば足りる。
- ア: 誤り(正答)。民413条2項が「増加費用は債権者の負担」と明文規定。増加費用の例:冷蔵保管が必要な食品を買主が受け取らないため追加で発生する保管費用等。
- エ: 正しい。受領遅滞中の履行不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなされ(民413条の2第2項)、債権者は反対給付の履行を拒むことができない(民536条2項)。債務者は反対給付請求権を失わない。
- オ: 正しい。民413条(1項:特定物の保存義務の軽減、2項:増加費用の債権者負担)と413条の2第2項(受領遅滞中の履行不能)が、受領遅滞の場面とその効果を明文で定めている。
【根拠条文】
民法 第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)、第413条第1項・第2項(受領遅滞)、第413条の2第2項(受領遅滞中の履行不能と帰責事由)、第492条(弁済の提供の効果)、第493条(弁済の提供の方法)、第536条第2項(債務者の危険負担等)
【補足】
増加費用は「債権者の負担」(民413条2項)が最重要ポイント。受領遅滞中の履行不能は債権者帰責とみなされ(民413条の2第2項)、債権者は反対給付を拒めない(民536条2項)。
- 民法第413条・第400条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)、第413条(受領遅滞)、第413条の2第2項(受領遅滞中の履行不能と帰責事由)、第536条第2項(債務者の危険負担等) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

