民法102民法債権総論

行政書士 民法 問102:民法債権総論

受領遅滞(債権者遅滞)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 受領遅滞が成立するためには、債務者が弁済の提供をし、かつ債権者が受領を拒絶または受領できない状態にあることが必要である。
  • 受領遅滞が成立した場合、債務者は弁済のために必要な注意義務について、その責任が自己の財産に対するのと同一の注意義務(固有の注意)に軽減される。
  • 受領遅滞が成立した場合、増加費用については、すべて債務者が負担しなければならない。正答
  • 受領遅滞が成立した場合、双務契約の場合には、債務者は反対給付の履行請求権(対価的給付を求める権利)を失わない。
  • 受領遅滞は、現行民法において明文規定が設けられており、受領遅滞が成立するための要件と効果が条文に規定されている。
正答:受領遅滞が成立した場合、増加費用については、すべて債務者が負担しなければならない。

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ウが誤りです。受領遅滞が成立した場合の増加費用は、債権者が負担しなければなりません(民413条2項)。「すべて債務者が負担」という記述は誤りです。アは正しく(弁済の提供+受領拒絶等が要件)、イは正しく(注意義務の軽減:民413条1項)、エは正しく(双務契約では対価的請求権を失わない・危険負担との関係)、オは正しく(受領遅滞の規定は民413条に明文化されています)。

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ウが誤りです。民法413条2項は「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする」と規定しており、増加費用は債権者の負担となります。「すべて債務者が負担」とするウは誤りです。

アは正しいです。受領遅滞の成立要件は、①債務者が弁済の提供をしたこと(適法な提供)、②債権者が受領を拒絶または受領不能の状態にあること、の2点です(民413条)。

イは正しいです。民法413条1項は「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもってその物を保存すれば足りる」と規定しています。通常の善管注意義務(民644条等)から固有の注意義務への軽減です。

エは正しいです。受領遅滞の場合でも双務契約の反対給付請求権は失われないと解されており(危険負担の規定との調整)、債務者は対価の請求ができます。

オは正しいです。現行民法413条が受領遅滞の明文規定(2020年改正で整備)となっています。

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【理論的背景】

受領遅滞(債権者遅滞)とは、債務者が適法に弁済の提供をしたにもかかわらず、債権者が受領を拒絶または受領不能である状態をいいます。民法は弁済の提供(民492条)と弁済の供託(民494条)を通じて債務者を保護しますが、受領遅滞の効果については2020年施行の改正民法により413条に整理されました。受領遅滞の法的性質については、①法定責任説(受領は法律上の義務ではないが受領遅滞の効果を認める)と②債務不履行説(受領も債権者の債務であり、受領遅滞は債権者の債務不履行)が対立しますが、現行民法は法定責任説的な処理を明文化しています。

【条文構造】

民413条・413条の2の規律を整理します。

民413条1項(注意義務の軽減):特定物引渡債務の場合、債務者は受領遅滞中「自己の財産に対するのと同一の注意」で保存義務を果たせばよい(通常の善管注意義務からの軽減)。

民413条2項(増加費用の帰属):受領遅滞中に生じた増加費用は債権者の負担。例:保管費用の増加、特殊な梱包費用等。

民413条の2(受領遅滞中の履行不能):受領遅滞中に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合、その不能は債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(危険負担のルールと接続)。

弁済の提供(民492条)との関係:適法な弁済の提供があると、債務者の遅滞責任が生じなくなる(遅延損害金の発生停止等)。受領遅滞は弁済提供の効果の一つとして位置づけられる。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における受領遅滞の典型論点は、①成立要件(弁済の提供+受領拒絶等)、②注意義務の軽減(善管注意→固有注意)、③増加費用の帰属(債権者負担・民413条2項)、④受領遅滞中の履行不能における危険の転換(民413条の2)の4点です。特に「増加費用は誰が負担するか」という問いに対して「債権者負担」が正答となる点は頻出です。また、受領遅滞の明文化(2020年改正)による旧法との変化(旧法では判例・学説で処理)も出題対象となります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。弁済の提供(民492条)には現実の提供(原則)と口頭の提供(例外)がある。受領拒絶や受領不能が明らかな場合は口頭の提供で足りる場合がある(民493条ただし書)。
  • イ: 正しい。特定物の保存義務の軽減は実務上重要。例:売主が売却予定の絵画を保管中、買主が受領を拒絶した場合、売主は通常の善管注意(専門的管理等)ではなく自分の財産と同程度の注意で保管すれば免責される。
  • ウ: 誤り(正答)。民413条2項が「増加費用は債権者の負担」と明文規定。増加費用の例:冷蔵保管が必要な食品を買主が受け取らないため追加で発生する保管費用等。
  • エ: 正しい。民413条の2第2項の解釈として、受領遅滞中の履行不能は債権者帰責とみなされ(民536条2項の類推・現行法では413条の2で明文化)、債務者は反対給付請求権を失わない。
  • オ: 正しい。受領遅滞の明文化は2020年施行の債権法改正の成果。改正前は判例・学説の解釈に委ねられていたが、413条・413条の2として明文化された。

【根拠条文】

民法 第413条第1項(受領遅滞中の注意義務の軽減)、第413条第2項(増加費用の帰属)、第413条の2(受領遅滞中の履行不能)、第492条(弁済の提供の効果)

【補足】

増加費用は「債権者の負担」(民413条2項)が最重要ポイント。受領遅滞中の履行不能は債権者帰責とみなされる(民413条の2)。いずれも2020年改正で明文化。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第413条(受領遅滞)、第413条の2(受領遅滞中の履行不能) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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