行政書士 民法 問109:民法債権総論
多数当事者の債権関係に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア数人が共同して同一の可分給付を内容とする債務を負担する場合、特段の合意がなければ連帯債務となるのが原則である。
- イ数人が共同して同一の可分給付を内容とする債権を有する場合、特段の合意がなければ各債権者は債権全額を請求できる不可分の関係となる。
- ウ可分な給付を目的とする複数の債権者が存在する場合(分割債権)、各債権者は自己の持分について単独で請求することができる。正答
- エ不可分債権において、各債権者は単独で全額の履行を請求することができず、必ず全員の名で請求しなければならない。
- オ保証人は主たる債務者と連帯して債務を負担するのが原則であり、特約がない限り、催告・検索の抗弁権を行使することができない。
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ウが正しいです。民法427条は「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う」と規定しています。可分な給付を目的とする複数の債権者がある場合(分割債権)は、各自の持分について単独で請求できます。アは誤りで、特段の合意がなければ分割債務(連帯ではなく各自の割合で分担)が原則です(民427条)。イは誤りで、可分な給付については原則として分割債権であり、各自の持分のみ請求できます。エは誤りで、不可分債権では各債権者が単独で全額の履行を請求できます(民428条・不可分の性質による)。オは誤りで、保証は原則として催告・検索の抗弁権を持ちます(民452条・453条)。
ウが正解です。民法427条は「数人の債権者…がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者…は、それぞれ等しい割合で権利を有し…」と定めており、給付が可分な場合の複数債権者(分割債権)では各自が等分の持分について単独で請求することができます。これが多数当事者の債権関係の「原則」です。
アは誤りです。特段の合意がない場合の複数債務者の原則は、連帯債務ではなく「分割債務」です(民427条)。連帯債務は当事者の合意または法律の規定がある場合に成立します(民436条等)。
イは誤りです。可分な給付の複数債権者の場合も、原則は分割債権です(民427条)。給付が不可分の場合に不可分債権(民428条)となります。
エは誤りです。不可分債権においては、各債権者が単独で全額の履行を請求することができます(民428条・430条参照)。ただし受領後の清算(他の債権者への分配)は別途の問題です。
オは誤りです。原則として保証は連帯保証ではなく(単純)保証であり、催告の抗弁権(民452条)と検索の抗弁権(民453条)を有します。連帯保証は特約がある場合や商行為から生じた債務の保証(商511条)等で成立します。
【理論的背景】
多数当事者の債権関係は、①分割債権・分割債務(民427条・原則)、②不可分債権・不可分債務(民428条〜430条)、③連帯債権(民432条〜434条・2020年改正で新設)、④連帯債務(民436条〜445条)、⑤保証(民446条〜465条の10)という類型があります。原則(民427条)は分割債権・分割債務であり、連帯債務・不可分債権等は例外(合意または法律の規定が必要)です。この原則・例外の関係を正確に理解することが試験対策の基本です。2020年施行の改正民法では、連帯債権が新たに明文化され(民432条〜434条)、連帯債務の規律も絶対効・相対効の見直しが行われました。
【条文構造】
多数当事者の債権関係の基本構造を整理します。
[分割債権・分割債務(民427条)]
原則:等分の持分で各自が単独に権利・義務を持つ。
例:AB共同でCに100万円貸した場合→AはCに50万円、BはCに50万円を請求できる(合意なし)。
[不可分債権(民428条)]
給付が性質上不可分な場合(例:1頭の馬の引渡し):各債権者が単独で全部の履行を請求できる。
[連帯債権(民432条〜434条・2020年改正新設)]
全員の同意があれば各債権者が全額請求可。弁済・更改等は全員に効力(絶対効)。
[連帯債務(民436条〜445条)]
各債務者が全額について責任を負う。弁済・相殺等は絶対効。履行請求・免除等は相対効(2020年改正で整理)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における多数当事者の債権関係の典型論点は、①「原則は分割債権・分割債務」(民427条)という基本原則、②不可分債権での各債権者の全額請求権(民428条)、③連帯債務の絶対効・相対効の整理(2020年改正後の現行規律)、④保証人の催告・検索の抗弁権(民452条・453条)と連帯保証との区別の4点です。特に「連帯債務がデフォルトではなく、分割債務がデフォルト」という点を問う問題が頻出です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。民427条の分割債務が原則。連帯債務は合意(連帯の特約)または法律の規定(商法511条等)がある場合に成立する。2020年改正前後を通じて変わらない原則。
- イ: 誤り。可分な給付の複数債権者→分割債権(民427条・原則)。不可分な給付(馬1頭の引渡し等)の複数債権者→不可分債権(民428条)。「可分な場合でも不可分になる」という誤りパターン。
- ウ: 正答。民427条の文言通り。分割債権では各自が「等しい割合」(特約がなければ等分)で権利を有し、単独で請求できる。AB共同の金銭貸付(各50万円分の権利)の例が典型。
- エ: 誤り。不可分債権(民428条)では各債権者が単独で全額を請求できる(不可分な給付であるため分割請求が観念できない)。ただし受領した債権者は他の債権者に対して利益を分配する義務を負う(内部関係)。
- オ: 誤り。原則として(単純)保証人には催告の抗弁権(民452条:まず主たる債務者に催告せよ)と検索の抗弁権(民453条:まず主たる債務者の財産を強制執行せよ)がある。連帯保証(民454条)はこれらの抗弁権なし。2020年改正で個人根保証の規律も整備(民465条の2〜465条の5)。
【根拠条文】
民法 第427条(分割債権・分割債務の原則)、第428条(不可分債権)、第432条(連帯債権・2020年新設)、第452条(催告の抗弁権)、第453条(検索の抗弁権)
【補足】
多数当事者の債権関係の原則は「分割債権・分割債務」(民427条)。連帯債務・不可分債権は例外(合意または法律規定が必要)。2020年改正で連帯債権(民432条〜434条)が新設された点も確認すること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第427条(分割債権)、第428条(不可分債権)、第430条(不可分債務)、第432条(連帯債務者に対する履行の請求) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。