民法33損害賠償の範囲・過失相殺

行政書士 民法 問33:損害賠償の範囲・過失相殺

AがBに対して債務不履行による損害賠償請求をする場合の損害賠償の範囲および過失相殺に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 損害賠償は、債務不履行と相当因果関係のある損害のうち、通常生じる損害に限られ、特別事情によって生じた損害は一切賠償の対象にならない。
  • 債権者が損害の発生・拡大について過失があった場合、裁判所は必ずその過失を考慮して損害賠償額を減額しなければならない。
  • 損害賠償の予定として合意された額が実際の損害額を大幅に上回る場合、裁判所は当然にその額を減額することができる。
  • 特別事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときも賠償の対象とならない。
  • 損害賠償額を予定した場合、債権者はその額の証明をすることなく、予定額の賠償を請求できる。正答
正答:損害賠償額を予定した場合、債権者はその額の証明をすることなく、予定額の賠償を請求できる。

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民法420条1項は「当事者は、債務不履行の損害賠償額を予定することができる」とし、同3項は「損害賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」と規定します。そして予定した額を請求する際には、実際の損害額の証明は不要です(420条1項後段の解釈として確立)。よってオが正しい。アは誤りで、特別事情による損害も「当事者がその事情を予見すべきであったとき」は賠償の対象になります(416条2項)。エはアと逆の表現で同様に誤り。イは「必ず」という部分が誤りで、過失相殺は裁判所の裁量(「することができる」)です。ウについて、賠償額の予定を裁判所が減額できるという規定は現行民法にはありません。

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民法416条は損害賠償の範囲について定めます。第1項は「通常生ずべき損害」(通常損害)、第2項は「特別事情によって生じた損害」について「当事者がその事情を予見すべきであったとき」を要件として賠償の対象とします。「予見すべきであったとき」の判断時期・主体については争いがありますが、通説・判例は原則として「契約締結時に、当事者(債務者)が予見すべきだった事情」を基準とします。よってアは「一切賠償の対象にならない」として誤り、エも同様に誤りです。過失相殺(418条)は「裁判所は…損害賠償の責任及びその額を定める」と規定し、「しなければならない」ではなく裁量的(「定めることができる」の趣旨)であるためイは誤りです。ただし過失相殺の「斟酌」については、著しい過失のある場合には裁判所は考慮義務的に扱うとも解されますが、「必ず減額」を義務付ける条文はありません。ウについて、民法420条は損害賠償額の予定を認め、予定額が著しく高額でも「裁判所が当然に減額できる」という規定はなく(旧有利規律や消費者契約法との区別に注意)、一般的な民事では当事者の予定額が拘束力を持ちます。

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【理論的背景】

民法416条の「相当因果関係」は、実は条文に直接書かれた文言ではなく、「通常損害」と「予見可能な特別損害」を組み合わせた「相当因果関係の範囲」という解釈論が判例・学説上確立したものです(大連判明43.6.13の影響を受けた法体系)。2020年改正後も416条の文言は変わらず、「通常生ずべき損害」+「予見すべき特別事情による損害」という二層構造は維持されています。損害賠償の予定(420条)は、訴訟における証明の手間を省き、取引の安定を図るための制度であり、契約自由の原則の表れです。

【条文構造の精密な理解】

  • 416条1項: 通常損害(通常の事情から生じる損害)→全額賠償。
  • 416条2項: 特別損害(特別事情から生じる損害)→予見可能性(「予見すべきであったとき」)があれば賠償。
  • 418条: 過失相殺→裁判所が「損害賠償の責任及びその額を定めることができる」(義務ではなく裁量。ただし著しい過失では考慮を怠ると不合理となることがある)。
  • 420条1項: 損害賠償額の予定→「予定した損害賠償の額について債権者は損害の証明をすることを要しない」(明文規定ではないが、賠償額の予定の制度趣旨として通説・判例上確立)。
  • 420条2項: 解約手付と区別する趣旨。
  • 420条3項: 賠償額の予定をしても履行請求・解除権行使を妨げない。

消費者契約法9条は消費者契約において損害賠償額の予定が「平均的損害を超える部分」について無効とすることを定めており、一般民事(420条)と異なる規律があることを混同しないことが重要です。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における本論点の典型問題は、(a)「特別損害は一切認められない」「予見可能なら認められる」の区別、(b)過失相殺の「任意的考慮(裁量)」対「義務的考慮」の区別、(c)損害賠償額の予定において「損害証明不要」とする実務上のルールの正確な理解です。また(d)消費者契約法上の規律(損害賠償額の予定の無効)と一般民法上の規律(420条)を混同させる問題も出されうるため、適用関係を整理しておく必要があります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「特別事情による損害は一切賠償の対象にならない」が誤り。416条2項により、「予見すべきであったとき」は賠償対象となる。特別損害の代表例は、売主が転売利益を知っていた場合の転売利益の逸失等。
  • イ: 「必ず…しなければならない」が誤り。418条は裁量を認める。ただし、著しい過失・重過失の場合には過失相殺をしないことが違法評価されることもある(最高裁判例の趣旨)。
  • ウ: 一般民事では、民法420条に「裁判所が当然に減額できる」規定はない。不当に高額な違約金条項については公序良俗(90条)で無効となることはあるが、「当然に減額できる」とは異なる。消費者契約法9条との混同に注意。
  • エ: アと同義の誤り。416条2項の「予見すべきであったとき」に当たれば特別損害も賠償対象となる。
  • オ: 正答。損害賠償額の予定(420条)では、予定額について損害の証明が不要である点が制度の本質。裁判所も予定額を原則として変更できない(一般民事において)。

【根拠条文】

民法 第416条第1項・第2項(損害賠償の範囲)

民法 第418条(過失相殺)

民法 第420条第1項(損害賠償額の予定)

【参照判例】

(本問は条文〔416条・418条・420条〕問題として整理。損害賠償額の予定の証明不要は制度趣旨上確立した解釈)

【補足】

消費者契約法9条(平均的損害超過部分の無効)は一般民法420条の特別法として機能する。試験では「民法の規律か消費者契約法の規律か」の文脈を見ること。なお2020年改正で旧420条1項後段(「裁判所は、その額を増減することができない」)は削除されたが、賠償額の予定が原則として当事者を拘束する点は維持されている(一般民事では裁判所が当然に減額できる規定はない)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第416条・第418条・第420条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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