問題
AはBに甲建物を賃貸し(AとBの賃貸借)、BはAの承諾を得てCに甲建物を転貸した(BとCの転貸借)。この法律関係に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか(現行民法に基づいて答えること)。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
ウが誤りです。民法613条1項は、転借人は「賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として」賃貸人に対して直接履行する義務を負うと規定します。AがCに直接請求できるのはBの債務(月額10万円)の範囲までで、転貸賃料12万円の全額は請求できません。アは正しく(613条3項)、イは正しく(613条1項後段・賃料の前払は対抗不可)、エは正しく(613条1項)、オは正しい(613条2項・AはBへの権利行使を妨げられない)記述です。
ウが誤りである理由を613条1項で確認します。同項前段は「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う」と規定します。Cが直接Aに履行する義務は「Bの債務の範囲」が上限です。AB間の賃料が月額10万円であれば、BC間の転貸賃料が12万円でも、AがCに直接請求できるのは10万円までです。「12万円の全額」とするウは誤りです。
エは、この613条1項前段をそのまま述べたもので正しい記述です。
イについて、613条1項後段は「この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない」と定めています。CがBに前払していても、Aからの直接請求に対してその前払を主張できません。イは正しい記述です。
アについて、613条3項は「賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない」と規定しています。アは本文とただし書の両方を正しく反映しています。
オについて、613条2項は「前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない」と規定しています。AはCへの直接請求とBへの請求のどちらもでき、オは正しい記述です。
【理論的背景】
転貸借は、賃借人(B)が賃貸人(A)の承諾を得て第三者(C)に目的物を転貸する関係です。民法612条1項は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ…賃借物を転貸することができない」とし、承諾のない転貸で第三者に使用収益をさせたときは、賃貸人は契約を解除できます(同条2項)。
承諾を得た適法な転貸借では、「A−B」「B−C」という二つの契約が並存します。本来AとCの間に契約関係はありませんが、613条1項は、CがAに対して直接履行する義務を負うと定め、Aを保護しています。その一方で、Cの義務は「Bの債務の範囲」に限られ、Cが予想外の負担を負わないよう調整されています。また613条3項は、AとBが合意で賃貸借を終わらせてCの地位を奪うことを防いでいます。
【条文構造の精密な理解】
- 612条1項: 賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要。
- 612条2項: 承諾なく第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は契約を解除できる。
- 613条1項前段: 適法な転貸借→転借人(C)は、AB間の賃貸借に基づくBの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。
- 613条1項後段: Cは賃料の前払をもってAに対抗できない。
- 613条2項: 1項の規定は、AがBに対してその権利を行使することを妨げない。
- 613条3項本文: Aは、Bとの賃貸借を合意により解除したことをもってCに対抗できない。
- 613条3項ただし書: その解除の当時、AがBの債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における転貸借の典型的な出題パターンは、(a)AがCに直接請求できる範囲(613条1項前段・Bの債務の範囲が上限)、(b)賃料の前払の扱い(同項後段)、(c)AのBに対する権利行使との関係(同条2項)、(d)合意解除とCの関係(同条3項本文とただし書)、(e)無断転貸と解除(612条2項)です。特に(a)は、AB賃料とBC賃料の大小を変えた数字の事例で問われやすく、「Aが直接請求できるのはBの債務の範囲まで」と条文の文言で判断できるようにしておくことが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。613条3項本文とただし書。合意解除はCに対抗できないのが原則だが、解除当時にAがBの債務不履行による解除権を有していたときは対抗できる。原則と例外の両方を含めて正しく述べている。
- イ: 正しい。613条1項後段。CがBに賃料を前払しても、Aからの直接請求に対してその前払を主張できない。前払を認めるとAの直接請求権が容易に失われてしまうためである。
- ウ: 誤り(正答)。613条1項前段の「賃借人の債務の範囲を限度として」により、AがCに直接請求できるのはBの債務(月額10万円)の範囲まで。転貸賃料12万円の全額をAが取得できるとする点が誤り。
- エ: 正しい。613条1項前段の文言どおり。CはBに対する転貸借上の債務を、Bの債務の範囲を限度としてAに直接履行する義務を負う。
- オ: 正しい。613条2項。Cに対する直接請求権は、AのBに対する賃料請求権を排除しない。AはBとCのどちらにも請求できる。
【根拠条文】
民法 第612条第1項・第2項(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
民法 第613条第1項(転借人の賃貸人への直接履行義務・賃料の前払)
民法 第613条第2項(賃貸人の賃借人に対する権利行使)
民法 第613条第3項(合意解除と転借人)
【補足】
613条は「1項前段:直接履行義務(Bの債務の範囲が上限)」「1項後段:前払は対抗不可」「2項:Bへの権利行使も可能」「3項:合意解除は原則対抗不可(債務不履行解除権があった場合は別)」の4点を文言どおりに押さえること。
- 民法第613条・第612条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限)、第613条(転貸の効果) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

