問題
AはBに対して次の3口の金銭債務を負っている。(甲)利息付き貸金100万円(弁済期:2026年3月1日)、(乙)利息なし貸金50万円(弁済期:2026年5月1日)、(丙)利息付き貸金200万円(弁済期:2026年7月1日)。Aが2026年6月1日に80万円を弁済した場合の弁済の充当に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか(現行民法に基づいて答えること)。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
弁済の充当は、一方が複数の債務を負担する場合に、弁済が全ての債務を消滅させるには不足する場合に、どの債務に充当するかを決める制度です。イは490条(合意による弁済の充当)として正しく、充当の順序に関する合意があれば、488条・489条の規定にかかわらずその順序に従って充当されます。アは誤りで、充当先の指定権はまず弁済をする者(A)にあり(488条1項)、Aが指定しないときにBが受領の時に指定できますが、Aが直ちに異議を述べたときはこの限りでありません(同条2項)。ウは誤りで、489条1項は費用、利息及び元本の順に充当すると定めており、「元本→利息→費用」は逆です。エは誤りで、488条4項1号は弁済期にあるもの(甲・乙)に先に充当するとしており、弁済期にない丙から先に充当されるわけではありません。オは誤りで、488条1項はAの指定権を定めますが、Aの指定に対してBが異議を述べることができるという規定はありません。
イが正しい理由を確認します。民法490条は「前二条の規定にかかわらず、弁済をする者と弁済を受領する者との間に弁済の充当の順序に関する合意があるときは、その順序に従い、その弁済を充当する」として合意充当の優先を認めます。合意による充当は488条(指定充当・法定充当)・489条に優先するため、イは正しい。アについて、488条1項は弁済をする者(A)が給付の時に充当すべき債務を指定できるとし、Aが指定しないときは2項により弁済を受領する者(B)が受領の時に指定できますが、同項ただし書は「弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない」としており、「Aの意思と無関係に」とするアは誤り。ウについて、489条1項は「債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」に「順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない」と定めており、「元本→利息→費用」は順序が逆で誤り。エについて、488条4項1号は「債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する」と定めます。6月1日時点で甲・乙は弁済期にあり丙は弁済期にないため、丙から先に充当されるとするエは誤り。
【理論的背景】
弁済の充当は、債務者が複数の債務を一人の債権者に負担する場合に、弁済が全ての債務を消滅させるには不足する場合の処理ルールです。民法488条〜490条は次の優先順位で充当を定めています。①合意充当(490条・当事者の合意が最優先)、②指定充当(488条1項〜3項・弁済をする者の指定、受領する者の指定の順)、③法定充当(488条4項・弁済期にあるものを先に、次いで債務者のために弁済の利益が多いものを先に等)の三段階構造です。元本のほか利息及び費用を支払うべき場合は、489条により費用→利息→元本の順に充当します(一個の債務でも数個の債務でも同じ)。充当制度は当事者の意思・利益を最大限尊重しつつ、合意・指定がない場合のデフォルトルールとして法定充当を機能させる仕組みです。
【条文構造の精密な理解】
- 488条1項: 弁済をする者(債務者)の充当指定権→給付の時に指定可。
- 488条2項: 弁済をする者が指定しない場合→弁済を受領する者(債権者)が受領の時に指定可(弁済をする者が直ちに異議を述べたときを除く)。
- 488条3項: 充当の指定は相手方に対する意思表示によってする。
- 488条4項: 法定充当→(1)弁済期にあるものを先に、(2)全て弁済期にある・ないときは債務者のために弁済の利益が多いものを先に、(3)利益が相等しいときは弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものを先に、(4)以上が相等しいときは各債務の額に応じて充当→エの根拠。
- 489条: 一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合→費用→利息→元本の順に充当→ウの根拠。
- 490条: 合意充当(当事者の合意が488条・489条に優先)→イの根拠。
- 491条: 一個の債務の弁済として数個の給付をすべき場合→前三条を準用。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における弁済の充当の典型的な出題パターンは、(a)充当の優先順位(合意充当>指定充当>法定充当・イのような問題)、(b)弁済者(A)の指定権と弁済受領者(B)の指定権の関係(アのような問題)、(c)元本・利息・費用の充当順序「費用→利息→元本」(489条・ウのような問題)、(d)法定充当の具体的基準(488条4項の「弁済期にあるもの」と「債務者のために弁済の利益が多いもの」の判断・エのような問題)の4パターンです。特に(a)の優先順位と(c)の「費用→利息→元本」の順序(489条は数個の債務にも適用)は混同されやすいため注意が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。充当指定権は一次的に弁済者(A)にある(488条1項)。弁済者が指定しない場合に受領者(B)が指定できる(488条2項)が、弁済をする者が直ちに異議を述べたときはこの限りでなく(同項ただし書)、「Aの意思と無関係に任意に」という表現は488条の構造に合わない。
- イ: 正しい(正答)。490条の合意充当。当事者(AとB)が合意で充当先を定めた場合は、その合意が488条(指定充当・法定充当)・489条に優先する。ただし合意は弁済時またはその前に行われることが通常。
- ウ: 誤り。489条1項は「債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合」に「順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない」と定める。本問では甲・丙が利息付きであり、充当順序は費用→利息→元本であって、「元本→利息→費用」は逆である。
- エ: 誤り。488条4項1号は「債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する」と定める。2026年6月1日の段階で甲(弁済期3月1日・100万円)と乙(弁済期5月1日・50万円)は弁済期にあり、丙(弁済期7月1日)は弁済期にないため、法定充当では甲・乙が丙より先に充当される。甲・乙の間では、488条4項2号により債務者のために弁済の利益が多いものが先になる。弁済期にない丙から先に充当されるとするエは誤り。
- オ: 誤り(一部正確だが全体として誤り)。Aが充当先を指定する権利(488条1項)は正しいが、「BがAの指定が不当な場合に異議を述べることができる」という内容は488条2項ただし書の文脈(Bが指定した場合にAが直ちに異議を述べる)とは逆であり、488条1項の弁済者指定に対してBが異議を述べる制度は民法に規定されていない。
【根拠条文】
民法 第488条第1項〜第3項(指定充当・弁済者の指定権・受領者の指定権)
民法 第488条第4項(法定充当・弁済期にあるものを先に)
民法 第489条第1項(元本・利息・費用の充当順序:費用→利息→元本)
民法 第490条(合意充当・当事者の合意が最優先)
【参照判例】
(本論点は主に条文問題として整理)
【補足】
充当の優先順位:①合意充当(490条)②弁済者の指定(488条1項)③受領者の指定(488条2項)④法定充当(488条4項)の四段階。489条「費用→利息→元本」は一個の債務でも数個の債務でも適用される充当順序であり、債務間の充当(488条)と区別すること。
- 民法第490条・第488条・第489条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第488条・第489条・第490条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

