行政書士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

行政書士 民法 問58|相殺の禁止・不法行為債権を受働債権とする相殺

問題

行政書士 | 民法

相殺の禁止に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は エ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

エが正しい記述です。民法509条は、「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」(1号)と「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」(2号)の債務者は、相殺をもって債権者に対抗できないと定めます。エの人身損害の賠償債務は、加害者の主観を問わず1号又は2号にあたり、Aは相殺できません。アは誤りで、悪意による不法行為の賠償債務は509条1号により相殺できません。イは誤りで、相殺禁止の意思表示は、第三者が知っていたときは対抗できます(505条2項)。ウは誤りで、差押え後に他人の債権を取得した場合は相殺を対抗できません(511条)。オは誤りで、差押禁止債権の債務者は相殺を対抗できません(510条)。

エが正しい根拠を509条で確認します。509条は「次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」として、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務(1号)と、人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(2号・前号に掲げるものを除く)を挙げています。2号は加害者の主観を限定していないため、故意による人身損害の賠償債務は、少なくとも1号又は2号のいずれかに必ずあたり、Aは相殺できません(エは正しい)。なお同条ただし書は、債権者がその債権を他人から譲り受けたときは除外していますが、本肢は被害者B自身の請求権であり該当しません。

ア:誤りです。「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」は509条1号にそのまま該当し、Aは相殺をもってBに対抗できません。

イ:誤りです。505条2項は、相殺を禁止し又は制限する意思表示は「第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる」と規定しています。第三者が知っていたときは対抗できます。

ウ:誤りです。511条1項は、差押え後に取得した債権による相殺は差押債権者に対抗できないとし、2項本文で差押え前の原因に基づいて生じた債権は例外としつつ、同項ただし書で「第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない」と定めています。差押え後に他人から取得した債権では、どの場合でも対抗できません。

オ:誤りです。510条は「債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」と規定しています。

【理論的背景】

相殺は、互いに同種の目的を有する債務を負担する二人が、対当額で債務を免れる制度です(505条1項)。簡易な決済と、相手方の資力が悪化した場合の担保的な機能を持ちます。しかし相殺を自由に認めると不都合な場面があるため、民法は相殺の禁止・制限を定めています。

①当事者の意思表示による禁止・制限(505条2項)は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗できます。②不法行為等による債務(509条)は、被害者に現実の賠償を受けさせるため、加害者側からの相殺が禁止されます。③差押禁止債権(510条)は、生活の保障などのために債権者に現実の給付を受けさせる必要があるため、相殺が禁止されます。④差押えを受けた債権(511条)は、差押債権者と第三債務者の利益を調整するため、差押えとの先後で相殺の可否が決まります。

【条文構造の精密な理解】

  • 505条1項: 相殺の要件(同種の目的・双方の債務が弁済期にあること)。ただし債務の性質が許さないときは相殺できない。
  • 505条2項: 相殺を禁止・制限する意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗できる。
  • 509条柱書: 次の債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗できない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
  • 509条1号: 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務。
  • 509条2号: 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(1号に掲げるものを除く)。
  • 510条: 債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は相殺をもって債権者に対抗できない。
  • 511条1項: 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺を差押債権者に対抗できないが、差押え前に取得した債権による相殺は対抗できる。
  • 511条2項: 差押え後に取得した債権でも、差押え前の原因に基づいて生じたものであれば対抗できる。ただし、差押え後に他人の債権を取得したときは除く。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における相殺の禁止の典型的な出題パターンは、(a)509条1号・2号の区別(悪意による不法行為/生命・身体の侵害)、(b)509条ただし書(債権を他人から譲り受けた債権者に対しては相殺可)、(c)相殺禁止の意思表示と第三者(505条2項・悪意又は重過失の第三者に限り対抗可)、(d)差押禁止債権(510条)、(e)差押えと相殺の優劣(511条1項・2項)です。いずれも条文の文言で正誤が決まるため、条文の主語と限定の言葉を正確に覚えることが得点の近道です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務は509条1号にあたり、債務者Aは相殺をもって債権者Bに対抗できない。加害者が反対債権を理由に賠償の支払を免れることを防ぐ趣旨。
  • イ: 誤り。505条2項により、相殺禁止の意思表示は、第三者が知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り対抗できる。逆にいえば、知っていた第三者には対抗できるので、「知っていたときであっても対抗できない」は誤り。
  • ウ: 誤り。511条2項ただし書は「第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない」とし、差押え前の原因に基づく債権であっても、差押え後に他人から取得した債権による相殺は対抗できない。1項の原則と合わせ、差押え後に他人から取得した債権による相殺はどの場合も対抗できない。
  • エ: 正しい(正答)。故意による人身損害の賠償債務は、509条1号(悪意による不法行為)又は2号(生命・身体の侵害)のいずれかに必ずあたるため、Aは相殺をもってBに対抗できない。
  • オ: 誤り。510条は差押禁止債権の債務者による相殺を禁止している。差押禁止債権の債権者に現実の給付を受けさせる趣旨。

【根拠条文】

民法 第505条第1項・第2項(相殺の要件等)

民法 第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)

民法 第510条(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)

民法 第511条第1項・第2項(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)

【補足】

相殺の禁止は「505条2項:意思表示による禁止(悪意・重過失の第三者に対抗可)」「509条:悪意の不法行為・生命身体の侵害(ただし書あり)」「510条:差押禁止債権」「511条:差押え後取得の債権(2項の例外とそのただし書)」の4つを条文の文言で整理すること。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第505条・第509条・第510条・第511条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

この問題の関連トピック

  • 相殺の禁止・不法行為債権を受働債権とする相殺
  • 頻出度B

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