問題
AはインターネットのSNS上に、B(会社員)の実名と住所を掲載したうえで「Bは詐欺師だ」という虚偽の情報を継続的に投稿している。BのAに対する法的請求に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定および判例の趣旨に照らして正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
ウが正しい記述です。民法723条は「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と規定します。謝罪広告の掲載はその典型例とされ、ウは正しい。アは誤りで、名誉を侵害した場合も財産以外の損害の賠償が必要です(710条)。イは誤りで、不法行為の成立には「故意又は過失」が必要です(709条)。エは誤りで、刑事責任と民事責任は別の制度であり、どちらか一方だけになるという定めはありません。オは誤りで、短い方の時効期間は「三年間」です(724条1号)。
ウが正しい根拠を確認します。723条は「他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる」と規定します。不法行為による損害賠償は、別段の意思表示がない限り金銭で定めるのが原則ですが(722条1項による417条の準用)、名誉毀損については、金銭賠償とは別に、あるいはそれに代えて「名誉を回復するのに適当な処分」を命じることができます。謝罪広告の掲載はその典型例とされます。
アについて、710条は「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合…財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」と規定しています。名誉毀損の被害者は精神的損害(慰謝料)の賠償を請求できるため、アは誤りです。
イについて、709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。故意も過失もない場合に責任を負うとするイは誤りです。
エについて、刑事責任(刑罰)と民事責任(損害賠償)は目的の異なる別個の制度であり、一方が問われると他方が問われなくなるという定めはありません。エは誤りです。
オについて、724条は、不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から「三年間」行使しないとき(1号)、不法行為の時から「二十年間」行使しないとき(2号)に時効によって消滅すると定めます。「1年間」とするオは誤りです。
【理論的背景】
名誉毀損に関する民法上の救済は、(1)金銭による損害賠償(709条・710条)と、(2)名誉回復処分(723条)の二本立てで理解します。不法行為による損害賠償は、別段の意思表示がないときは金銭でその額を定めるのが原則です(722条1項による417条の準用)。しかし名誉は、いったん傷つけられると金銭だけでは回復しにくい利益です。そこで723条は、名誉毀損に限って、裁判所が「名誉を回復するのに適当な処分」を命じることを認めています。
また、名誉の侵害による損害は精神的なものが中心です。710条は、名誉を侵害した場合にも「財産以外の損害」の賠償義務があることを明記しています。インターネット上の投稿は拡散が速く、被害が継続しやすいため、賠償請求の期間制限(724条)も含めて、早期に権利行使することが実務上重要です。
【条文構造の精密な理解】
- 709条: 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
- 710条: 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、709条の責任を負う者は財産以外の損害に対しても賠償しなければならない。
- 722条1項: 417条(金銭賠償の原則)・417条の2を不法行為に準用。
- 723条: 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
- 724条: 不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間(1号)、不法行為の時から20年間(2号)行使しないときは、時効によって消滅する。
- 724条の2: 人の生命又は身体を害する不法行為では、1号の「三年間」が「五年間」となる(名誉毀損には適用されない)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における名誉毀損の典型的な出題パターンは、(a)723条の名誉回復処分(「損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに」の両方が可能)、(b)710条の財産以外の損害(慰謝料)、(c)709条の主観的要件(故意又は過失)、(d)724条・724条の2の消滅時効の期間です。特に724条の期間(3年・20年、生命・身体の侵害は5年)は数字の入れ替えで問われやすく、条文の数字をそのまま覚えておく必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。710条は名誉を侵害した場合にも財産以外の損害の賠償を認める。財産的損害しか請求できないとする点が誤り。
- イ: 誤り。709条は「故意又は過失によって」と規定しており、不法行為責任は過失責任が原則。故意も過失もない場合に責任を負うとする点が誤り。
- ウ: 正しい(正答)。723条は、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができると定める。謝罪広告の掲載はその典型例とされる。
- エ: 誤り。刑事責任と民事責任は目的の異なる別個の制度であり、一方が問われれば他方が問われないという定めはない。
- オ: 誤り。724条1号の期間は「三年間」。名誉毀損は生命・身体の侵害ではないため、724条の2の「五年間」も適用されない。「1年間」はどちらにも当たらない。
【根拠条文】
民法 第709条(不法行為による損害賠償)
民法 第710条(財産以外の損害の賠償)
民法 第722条第1項(損害賠償の方法)
民法 第723条(名誉毀損における原状回復)
民法 第724条・第724条の2(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
【補足】
723条は名誉毀損に特有の「名誉回復処分(謝罪広告等)」を認める規定。710条(財産以外の損害)・709条(故意又は過失)・724条(3年/20年、生命身体は724条の2で5年)とセットで押さえること。
- 民法第709条・第723条・第710条・第722条・第724条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第709条・第710条・第723条・第724条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

