行政書士 民法 問62:嫡出推定の現行規律
嫡出推定に関する次のア〜オの記述のうち、2024年4月1日施行の改正民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されるが、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子には嫡出推定は及ばない。
- イ女性が離婚後300日以内に子を出産した場合、前夫の子と推定されるが、離婚後に再婚していたとしても同じである。
- ウ嫡出の推定を否認できるのは夫のみであり、子自身は嫡出否認の訴えを提起することができない。
- エ女性が離婚後300日以内に子を出産した場合であっても、その子の出生前に再婚していたときは、再婚後の夫の子と推定される。正答
- オ嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から2年以内に提起しなければならない。
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2024年4月1日施行の民法改正(親子法制改正)により、嫡出推定規定が大きく見直されました。改正後の民法772条は、女性が離婚後300日以内に子を出産した場合であっても、その子の出生前に再婚していたときは、再婚後の夫の子と推定するとしています。これがエの根拠であり正答です。イは誤りで、再婚している場合は再婚後の夫の推定が優先されます。ウは誤りで、改正後は子自身も嫡出否認の訴えを提起できます。オは誤りで、期間は1年から3年以内に変更されています(夫・子・母それぞれ異なる)。
2024年4月1日施行の親子法制改正の核心は、嫡出推定の見直しにあります。改正後民法772条のポイントは次のとおりです。
第1に、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます(1項)。婚姻の成立から200日経過後・婚姻解消から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したと推定されます(2項)。第2に、再婚後の嫡出推定の調整として、女性が離婚後300日以内に子を出産した場合でも、出生前に再婚していたときは再婚後の夫の子と推定されます(3項)。これがエの根拠です。イはこの点で誤りです。
嫡出否認の訴えについて、改正前は夫のみが提起でき、1年以内でしたが、改正後は父・子・母・前夫が提起権者となり(民法774条)、出訴期間も原則3年に延長されています(民法777条。父・前夫は子の出生を知った時から3年、子・母は子の出生の時から3年)。ウの「子は提起できない」とオの「2年以内」はいずれも誤りです。アは「200日以内に生まれた子は推定が及ばない」とする点が誤りで、推定は及びうる(前婚の婚姻中に懐胎したものとされうる)形になっています。
【理論的背景】
嫡出推定制度(民法772条)は、子の父を早期かつ画一的に確定させ、子の身分の安定と家族関係の秩序を守るための制度です。従来の規律では「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子」と推定する一方で「婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は推定が及ばない」とされていました。しかし、この規律は再婚後に前夫の子と推定されるという「300日問題」を生み出し、出生届を躊躇するケースが社会問題となりました。2024年4月1日施行の改正はこの問題に対応するものです。
【実務・条文構造】
改正後民法772条の構造を整理します。まず、婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定される点は改正前後で変わりません(1項)。婚姻成立から200日経過後・婚姻解消から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したと推定される点も同様です(2項)。大きな改正点は3項で、女が婚姻中に懐胎した子について、出生前に前婚が解消された場合は現在の夫の子と推定するとともに、離婚後300日以内でも再婚後は再婚後の夫の子と推定するという優先関係を明文化しました。嫡出否認の訴えについては、否認権者が夫のみから父・子・母・前夫に拡大され(民法774条)、出訴期間も原則3年に延長されました。具体的には、父および前夫は「子の出生を知った時から3年」、子および母は「子の出生の時から3年」以内に提起しなければなりません(民法777条)。
【試験での位置づけ】
本論点は「旧法の規律を現行法と誤認させる」引っかけが頻出です。具体的には、「再婚しても前夫の子と推定される(旧規律)」「子は否認訴訟を提起できない(旧規律)」「期間1年(旧規律)」が典型です。2024年4月1日施行の改正は行政書士試験の基準日(通常4月1日)と重なるため、2024年度以降の試験では確実に現行法で出題されます。再婚禁止期間廃止(同日施行)とあわせて、2024年4月1日施行の二つの改正(嫡出推定見直し・再婚禁止期間廃止)をセットで押さえることが重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「婚姻成立の日から200日以内に生まれた子」については、婚姻前から懐胎していた可能性があり、改正後は前夫の有無・再婚の有無に応じて嫡出推定が及ぶ場合もある。「推定が及ばない」と断定する旧来の理解は改正後の条文構造とずれがある。
- イ: 誤り。離婚後300日以内の出生でも、出生前に再婚していれば再婚後の夫の子と推定される(民法772条3項)。
- ウ: 誤り。改正後は子も嫡出否認の訴えの否認権者に追加された(民法774条1項・3項)。子の利益を保護するために認められた改正点。
- エ: 正答。民法772条3項の現行規律を正確に表現している。
- オ: 誤り。改正前は「夫が子の出生を知った時から1年以内」だったが、改正後は出訴期間が原則3年に延長された(父・前夫は子の出生を知った時から3年、子・母は子の出生の時から3年・民法777条)。「2年以内」は現行法に存在しない誤った数字。
【根拠条文】
民法 第772条(嫡出の推定・2024年4月1日施行改正後)、第774条・第775条(嫡出の否認)、第777条(嫡出否認の訴えの出訴期間)
【補足】
本問は2024年4月1日施行の親子法制改正の核心論点。再婚禁止期間廃止と同日施行であり、セットで押さえること。嫡出否認の出訴期間(民法777条)は原則3年(父・前夫=子の出生を知った時から、子・母=子の出生の時から)で確定。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第772条・第774条・第775条・第777条(2024年4月1日施行の改正後) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。