行政書士 民法 問74:特別寄与料
特別寄与料に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。
- ア特別寄与料を請求できる者は、被相続人の親族であれば全員が対象となり、相続人も含まれる。
- イ特別寄与料の請求は、相続の開始及び相続人を知った時から1年以内に行使しなければならない。
- ウ特別寄与者が特別寄与料の支払について相続人と協議が調わない場合、家庭裁判所に対して処分を請求することができる。正答
- エ特別寄与料は、相続人に対して金銭で請求するものであり、特別寄与者は相続財産から直接取得することはできない。
- オ特別寄与料の額は、相続人全員の合意がある場合に限り、家庭裁判所の審判によって定めることができる。
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特別寄与料は2019年の相続法改正で新設された制度です(民法1050条・2019年7月1日施行)。相続人ではない親族(例えば被相続人の子の配偶者など)が被相続人の療養看護等に貢献した場合、相続人に対して特別寄与料の支払を請求できます。協議が調わない場合は家庭裁判所に処分を請求できます(民法1050条2項)。これがウの根拠で正答です。アは誤りで、相続人は対象外です(民法1050条1項)。イは誤りで、期間は「相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内」です(民法1050条2項ただし書)。エは、特別寄与者は相続人に対して金銭で請求するため概ね正しいですが、オは誤りで、協議が調わない場合の審判は相続人全員の合意を要件としません。
正答はウです。民法1050条2項は「前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる」と規定します。
各選択肢を確認します。ア(誤):民法1050条1項は「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は…」と定め、相続人は除外されています。イ(誤):民法1050条2項ただし書は「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したとき」は請求できないと規定しており、短い方は6か月です。ウ(正・正答):上記の通り家庭裁判所への処分請求が可能。エ(概ね正):民法1050条1項は「相続人に対し、特別寄与料の支払を請求することができる」と規定しており、金銭請求権という性質は正しい。オ(誤):家庭裁判所は協議が調わない場合に処分を行えるのであり、相続人全員の合意は要件とされていません。
【理論的背景】
特別寄与料制度(民法1050条)は2019年の相続法改正で新設された制度です(2019年7月1日施行)。改正前の問題意識として、相続人以外の親族(特に被相続人の子の配偶者:嫁・婿など)が実際に療養看護に多大な貢献をしても、相続人ではないため遺産の分け前を得られないという不公平が長年指摘されていました。改正前は相続人の寄与分(民法904条の2)という制度が存在しましたが、相続人以外はこれを利用できませんでした。特別寄与料制度は、この不公平を解消するために、相続人以外の親族が相続人に対して金銭の支払を請求できる権利を新設したものです。
【実務・条文構造】
民法1050条の構造を詳細に整理します。1項:特別寄与者の定義(相続人以外の被相続人の親族で、無償で療養看護等の労務を提供し被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者)。1項の除外者:相続人・相続放棄者・欠格者・廃除により相続権を失った者は対象外。2項:まず特別寄与者と相続人間の協議で決定。協議が調わないとき・できないときは家庭裁判所に処分を請求できる(「処分」という用語に注意:「審判」ではなく「処分」と条文上規定されているが実質的に審判による)。2項ただし書:相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始から1年以内に限り請求可(除斥期間)。3項:家庭裁判所は特別寄与料の額を定めるにあたり「寄与の時期・方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」行う。4項:相続人が複数いる場合、各相続人は法定相続分・指定相続分に応じて特別寄与料を支払う義務を負う。5項:受け取る特別寄与料の額は遺留分算定の基礎となる財産に算入しない。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では特別寄与料は比較的新しい制度(2019年)として出題されています。頻出の論点は、(1)請求権者の範囲(相続人以外の親族・相続人は除外)、(2)除斥期間(6か月・1年の二重期間)、(3)協議が調わない場合の家庭裁判所への処分請求、(4)各相続人が法定相続分に応じて分担することです。「相続人も含まれる」(ア)と「6か月」を「1年」にした引っかけが定番です。また、寄与分(民法904条の2・相続人のみ)との比較で問われることもあります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。民法1050条1項は相続人を明示的に除外している。相続人は寄与分(民法904条の2)の制度を使うのであり、特別寄与料の請求権者には含まれない。
- イ: 誤り。「1年以内」は誤りで、正確には「6か月以内(相続開始及び相続人を知った時から)」かつ「1年以内(相続開始から)」の短い方で除斥期間が切れる(民法1050条2項ただし書)。「1年」は相続開始からの起算であり、相続人を知った時からではない。
- ウ: 正しい(正答)。民法1050条2項本文が根拠。家庭裁判所への処分請求(調停・審判)が認められる。
- エ: 概ね正しい。民法1050条1項の通り、特別寄与者は相続財産から直接権利を取得するのではなく、各相続人に対して金銭の支払を請求する。相続人が複数いる場合は各自が法定相続分等に応じて分担する(民法1050条4項)。
- オ: 誤り。家庭裁判所が処分を行うのは協議が調わない場合であり、相続人全員の合意は要件ではない。合意があれば協議で決まるので審判は不要。
【根拠条文】
民法 第1050条第1項(特別寄与者の定義と請求権)、第1050条第2項(家庭裁判所への処分請求・除斥期間)、第1050条第4項(各相続人の分担)
【補足】
特別寄与料(2019年新設)と寄与分(民法904条の2・相続人のみが対象)の対比は頻出。除斥期間「6か月(相続開始及び相続人を知った時から)or 1年(相続開始から)」の二重期間の構造を正確に押さえること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第1050条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。