行政書士 民法 問75:離婚・協議離婚・裁判離婚
離婚に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア協議離婚は、夫婦の合意と離婚届の提出によって成立し、家庭裁判所の関与を必要としない。
- イ裁判上の離婚原因として、配偶者に不貞行為があった場合が規定されているが、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合も離婚原因となる。
- ウ有責配偶者からの離婚請求は、いかなる場合も認められない。正答
- エ離婚した父母の一方を子の親権者と定め、監護養育をしない他方は、子に対する扶養義務を免れない。
- オ離婚した者は、婚姻によって改めた氏を称していた場合、離婚の日から3か月以内に届け出ることで、離婚後も引き続きその氏を称することができる。
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有責配偶者(不貞行為など離婚原因を作った側)からの離婚請求については、最高裁判所が「原則として認められないが、一定の条件を満たす場合に例外的に認められる」と判示しています(最大判昭62.9.2)。ウは「いかなる場合も認められない」としており、これは誤りです。アは正しく(民法763条・協議離婚は届出で成立)、イは正しく(民法770条1項1号・5号)、エは正しく(非親権者も扶養義務は継続・民法877条)、オは正しく(民法767条2項・3か月以内に届出で婚姻氏の続称可)です。
正答はウです。有責配偶者(離婚原因を作った方の配偶者)からの離婚請求に関して、最高裁大法廷は昭和62年判決(最大判昭62.9.2)において判例を変更し、「原則として信義誠実の原則(民法1条2項)に照らして許されないが、①別居期間が相当長期間に及ぶ、②未成熟の子が存在しない、③相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれるなどの特段の事情がない、という要件を全て満たす場合は例外的に認められる」と判示しました。「いかなる場合も認められない」とするウは、この判例変更後の判例に反します。
各選択肢を確認します。ア(正):民法763条(協議離婚)・民法764条・765条。届出受理により成立。イ(正):民法770条1項1号(不貞行為)・2号(悪意の遺棄)・3号(3年以上の生死不明)・4号(回復の見込みのない精神病)・5号(婚姻を継続し難い重大な事由)。エ(正):親権を失っても扶養義務は残る。オ(正):民法767条2項の「離婚の際に称していた氏を称する届」(婚氏続称)の制度。
【理論的背景】
離婚制度は、婚姻の解消を法的に認める制度です。日本では協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種があります。協議離婚は世界的にも珍しい届出のみによる離婚制度であり、日本の離婚の約90%を占めます。裁判離婚(民法770条)では法定離婚原因(770条1項各号)が必要であり、とりわけ「婚姻を継続し難い重大な事由」(同条1項5号)は包括的な要件として、性格の不一致・DV・モラハラ等の事案に適用されます。有責配偶者からの離婚請求については、戦前の判例が「全面的に否定」していたところを、昭和62年の最高裁大法廷判決が「一定要件の下で例外的に認める」に判例変更した点が重要です。
【実務・条文構造】
離婚に関する主要条文を整理します。民法763条:協議離婚(届出による成立)。民法770条1項:裁判離婚の原因(1号不貞行為・2号悪意の遺棄・3号3年以上の生死不明・4号強度の精神病(回復の見込みなし)・5号婚姻を継続し難い重大な事由)。民法770条2項:1〜4号の事由があっても、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認める場合は離婚請求を棄却できる(有責配偶者請求への影響あり)。民法767条1項:離婚後は婚姻前の氏に戻る(復氏の原則)。民法767条2項:離婚の際に称していた氏の続称(3か月以内の届出)。民法819条:離婚に際して親権者の指定が必要。民法877条:扶養義務は親族関係に基づき、離婚で法律上の婚姻関係は解消するが直系血族・血族関係は消滅しないため子への扶養義務は継続。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での離婚の論点は、(1)協議離婚の成立要件、(2)法定離婚原因(特に1号・5号)、(3)有責配偶者からの離婚請求(昭和62年判例変更)、(4)離婚後の氏(婚氏続称制度)、(5)離婚と親権・扶養義務の関係です。ウの「いかなる場合も認められない」は昭和62年以前の判例の立場であり、現在は否定されています。法改正ではなく判例変更による重要転換点として押さえる必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。民法763条・765条が根拠。協議離婚は当事者の合意と届出(戸籍法の要件)だけで成立し、家庭裁判所の関与は不要。ただし未成年の子がいる場合は親権者の指定が必須(民法765条・819条1項)。この点を欠く離婚届は受理されない。
- イ: 正しい。民法770条1項の5つの離婚原因が根拠。5号「婚姻を継続し難い重大な事由」は残余的・包括的な要件として機能し、不貞行為以外の事由(DV・モラハラ・性的不一致等)のほか、有責配偶者以外の当事者からの主張も可能。
- ウ: 誤り(正答)。最大判昭62.9.2が「一定要件の下で有責配偶者からの離婚請求も認められる」と判例変更した点が根拠。①相当長期の別居、②未成熟子の不存在、③相手方への苛酷な状況がないこと、という3要件をすべて満たす場合に限り例外的に認められる。
- エ: 正しい。民法877条は「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養する義務を負う」と規定し、離婚によって婚姻関係は解消されるが、親と子は直系血族であり続けるため扶養義務は継続する。非親権者であっても子への扶養義務(養育費支払義務)は消滅しない。
- オ: 正しい。民法767条2項・戸籍法77条の2が根拠。「離婚の際に称していた氏を称する旨の届出」(婚氏続称)は離婚後3か月以内に行う必要がある。3か月を超えると家庭裁判所の許可が必要となる。
【根拠条文】
民法 第763条(協議離婚)、第767条第2項(婚氏続称)、第770条第1項(裁判離婚の原因)、第819条(離婚後の親権者)、第877条(扶養義務)
【参照判例】
有責配偶者からの離婚請求(最大判 昭和62年9月2日・判例変更)
【補足】
有責配偶者からの離婚請求は「昭和62年判例変更で例外的に可能」という点が最重要。婚氏続称の届出期限(3か月以内)・協議離婚に子の親権者指定が必要(民法819条)は細部まで確認のこと。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第770条・第771条・第790条・第819条・第767条・第877条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。