民法76相続欠格・廃除

行政書士 民法 問76:相続欠格・廃除

相続欠格及び推定相続人の廃除に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 相続欠格は、相続人が一定の行為をした場合に、被相続人の意思にかかわらず当然に相続権を失う効果を持つ。正答
  • 相続欠格事由として、被相続人を詐欺・強迫によって遺言の取消しを妨害した場合は該当しないが、遺言書を偽造した場合は該当する。
  • 推定相続人の廃除は、被相続人が生前に家庭裁判所に請求することによってのみ行うことができ、遺言によることはできない。
  • 廃除された推定相続人には、廃除の取消しを求める申立権があり、家庭裁判所に取消しを申し立てることができる。
  • 相続欠格の宥恕(ゆうじょ)とは、被相続人が欠格事由を知りながら生前に欠格者を許すことで相続欠格の効果を消滅させるものであり、民法上明文の規定がある。
正答:相続欠格は、相続人が一定の行為をした場合に、被相続人の意思にかかわらず当然に相続権を失う効果を持つ。

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相続欠格とは、一定の行為(被相続人の殺害・遺言書の偽造等)をした場合に、法律上当然に相続権を失う制度です(民法891条)。被相続人の意思や裁判所の審判は不要で、欠格事由に該当した段階で自動的に相続権を失います。これがアの正しい内容で正答です。イは誤りで、民法891条5号は「詐欺又は強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、若しくは撤回させ、若しくは取り消させ、又はその変更をさせた者」も欠格事由とされており、妨害した場合(被相続人を強迫して遺言させた等)も含まれます。ウは誤りで、遺言による廃除も認められます(民法893条)。エは誤りで、廃除取消しの申立権は廃除された者(相続人側)には付与されておらず、被相続人または被相続人の申立てに応じた家庭裁判所が廃除の取消し審判をする形です。

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正答はアです。民法891条は「次に掲げる者は、相続人となることができない」として5つの欠格事由を列挙し、これに該当した者は当然に(被相続人の意思や裁判所の審判なしに)相続権を失います。「法律上当然に」という点が廃除(家庭裁判所への申立てが必要・民法892条)との最大の違いです。

各選択肢を確認します。イ(誤):民法891条5号は「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、若しくは撤回させ、若しくは取り消させ、又はその変更をさせた者」を欠格事由とします。また同条4号は「詐欺又は強迫によって被相続人が相続に関する遺言をすること、撤回すること、取り消すこと又は変更することを妨げた者」も欠格事由です。よって妨害も対象となります。ウ(誤):民法893条は「被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない」と定め、遺言による廃除も認められています。エ(誤):廃除の取消しは被相続人が請求できる(民法894条1項)ものですが、廃除された者自身に家庭裁判所への申立権はありません。オ(誤):相続欠格の宥恕(被相続人が欠格者を許すことで欠格の効果を消滅させること)は、学説・裁判例(広島家裁呉支部 平成22年10月5日審判など)で認められる傾向にありますが、民法には宥恕についての明文規定は存在しません。したがって「民法上明文の規定がある」とするオは誤りです。

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【理論的背景】

相続欠格と廃除は、相続人から相続権を剥奪する制度ですが、機能が異なります。欠格は法律上当然の効果であり、被相続人の意思や裁判所の判断を要しません。廃除は被相続人の主観的な意思(虐待・侮辱・著しい非行)を要件とし、家庭裁判所の審判によります。欠格は重大な違法行為への制裁として機能し(被相続人を殺した者が遺産を相続することは許されない、遺言書を偽造した者も同様)、廃除は人間関係上のトラブルへの対応として機能します。宥恕(ゆうじょ)とは、被相続人が欠格者を許すことで欠格の効果を消滅させることをいいます。民法には宥恕の明文規定はなく、解釈上認められるかについて学説は分かれていますが、被相続人の財産処分の自由と整合的であるとして肯定するのが多数説であり、これを認めた裁判例(広島家裁呉支部 平成22年10月5日審判)もあります。

【実務・条文構造】

民法891条(欠格事由):1号(故意に被相続人・先順位者を死亡させ刑に処せられた者)、2号(被相続人が殺される危険を知りながら告発・告訴しなかった者)、3号(詐欺・強迫により被相続人の遺言の妨害をした者)、4号(詐欺・強迫により被相続人に遺言をさせるなどした者)、5号(遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿をした者)。民法892条:廃除(虐待・重大な侮辱・著しい非行)の要件と家庭裁判所への申立て。民法893条:遺言による廃除(遺言執行者が請求)。民法894条:廃除の取消し(被相続人が請求・遺言による取消しも可)。廃除された推定相続人の相続権回復は被相続人の取消し申立てによる。廃除された者本人が申立権を持つという規定はない。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では、欠格と廃除の比較(欠格=当然失権・廃除=審判による失権)が頻出です。欠格事由の各号(特に遺言書の偽造・強迫による遺言妨害)と、廃除の要件(虐待・重大な侮辱・著しい非行)の区別も問われます。ウの「遺言による廃除は不可」は典型的な誤りであり、民法893条を確認していれば正誤判断できます。また、欠格・廃除された者の子に代襲相続が発生する(民法887条2項・相続放棄の場合と異なり代襲相続が発生する)点も重要な周辺論点です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(正答)。民法891条の欠格制度の本質。「被相続人の意思にかかわらず」「当然に」という2点が正確に表現されている。廃除との対比(廃除は被相続人の意思と審判が必要)を整理するための最重要論点。
  • イ: 誤り。民法891条3号・4号はいずれも「詐欺又は強迫による遺言妨害」を欠格事由としており、妨害も対象に含まれる。また5号の遺言書偽造に加え、「変造・破棄・隠匿」も欠格事由。
  • ウ: 誤り。民法893条が明文で遺言による廃除を認める。「遺言執行者が遺言発効後に遅滞なく家庭裁判所に請求する」という手続き構造も確認しておくこと。
  • エ: 誤り。廃除の取消しは被相続人が申し立てるものであり(民法894条1項)、廃除された者本人には取消申立権がない。被相続人が死亡後に廃除の取消しを争う手段は基本的に存在しない(相続開始後の廃除は遺言のみ)。
  • オ: 誤り。相続欠格の宥恕は民法上の明文規定がない解釈上の概念。多数説・裁判例(広島家裁呉支部 平成22年10月5日審判)は宥恕を認める傾向にあるが、「民法上明文の規定がある」とする本肢は誤り。なお宥恕に方式(遺言等)が必要かについても見解が分かれる。

【根拠条文】

民法 第891条(相続欠格事由)、第892条(推定相続人の廃除)、第893条(遺言による廃除)、第894条(廃除の取消し)

【補足】

欠格(法律上当然)vs 廃除(被相続人の意思+審判)の対比が最重要。欠格・廃除された者の子には代襲相続が発生する点(相続放棄との区別)も必ず確認。相続欠格の宥恕は民法に明文規定がなく、学説・裁判例上の概念である点を押さえること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第891条(相続欠格事由)・第892条・第893条・第894条(廃除とその取消し)。なお相続欠格の宥恕(ゆうじょ)については民法上の明文規定はなく、学説・裁判例上の概念である。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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