民法96民法物権・担保物権

行政書士 民法 問96:民法物権・担保物権

抵当権の消滅に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 代価弁済は、抵当不動産の買受人や譲受人が抵当権者に代価を弁済する制度であり、抵当権者が代価を承諾して受領すれば、その抵当権は消滅する。
  • 抵当権消滅請求は、抵当不動産の第三取得者(買受人等)が抵当権者に対して一定の価額を提示し、抵当権者が一定期間内に競売の申立てをしなければ、提示額を弁済することで抵当権を消滅させることができる。
  • 抵当権は、被担保債権が弁済・相殺等によって消滅した場合にも独立して存続し得るため、付従性は認められない。正答
  • 抵当権の消滅は、主たる債務者による弁済によってのみ生じるものではなく、物上保証人が弁済した場合も抵当権は消滅する。
  • 抵当権は、その目的物である不動産について先順位抵当権者が優先弁済を受けた後、なお残額がある場合に後順位抵当権者が弁済を受けることができる。
正答:抵当権は、被担保債権が弁済・相殺等によって消滅した場合にも独立して存続し得るため、付従性は認められない。

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ウが誤りです。抵当権には付従性があり(付従性の原則)、被担保債権が弁済・相殺等によって消滅すれば、抵当権も消滅します(担保物権の通有性としての付従性)。「付従性は認められない」という記述は誤りです。アは正しく(代価弁済の効果・民378条)、イは正しく(抵当権消滅請求の概要・民379条〜386条)、エは正しく(物上保証人の弁済による抵当権消滅)、オは正しく(後順位抵当権者の優先弁済・民373条)。

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ウが誤りです。抵当権には「付従性」があり、被担保債権が弁済・相殺・免除等によって消滅した場合は、抵当権も当然に消滅します。付従性とは担保物権の根本的性質であり、「担保権は被担保債権の存在に付従する」という原則です。「付従性は認められない」とするウは根本的に誤りです。なお根抵当権(民398条の2以下)は元本確定前は付従性が排除されていますが、これは例外的規律です。

アは正しいです。代価弁済(民378条)は、抵当不動産の第三取得者・買受人が抵当権者の請求に応じて代価を弁済した場合に抵当権が消滅する制度です。「抵当権者の請求に応じて」代価を弁済すること(抵当権者の主導・関与)が必要です。

イは正しいです。抵当権消滅請求(民379条〜386条)は、第三取得者が自ら提示した価額でもって抵当権の消滅を求める制度です。抵当権者が2か月以内に競売の申立てをしなければ、提示額を弁済することで抵当権が消滅します。

エは正しいです。物上保証人(他人の債務のために自己の財産に抵当権を設定した者)が被担保債務を弁済した場合、債権・抵当権ともに消滅します(物上保証人は債務者への求償権を取得)。

オは正しいです(民373条)。複数の抵当権が設定されている場合、先順位(第1順位)の抵当権者が優先弁済を受けた後、残余金から後順位抵当権者が弁済を受けます。

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【理論的背景】

抵当権の消滅原因は多様です。①被担保債権の消滅(付従性による消滅)、②目的物の滅失(物権の消滅)、③混同(民179条・抵当権者と所有者の同一)、④代価弁済(民378条・第三取得者等の弁済)、⑤抵当権消滅請求(民379条以下・第三取得者の提示額弁済)、⑥競売による消滅(競落により抵当権消滅)、⑦時効(被担保債権の消滅時効・担保物権は附従性で消滅)等があります。2003年の民法改正で旧制度の「滌除(てきじょ)」が廃止され、「抵当権消滅請求」(民379条)に変更されました。

【条文構造】

抵当権の消滅に関する主要条文を整理します。

民378条(代価弁済):抵当不動産の第三取得者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者に代価(売買代金等)を弁済することで、抵当権はその第三取得者のために消滅する。抵当権者からの請求(主導)が前提。

民379条〜386条(抵当権消滅請求):第三取得者が一定額を提示→抵当権者が2か月以内に競売申立てをしない→提示額を弁済することで消滅。抵当権者の同意不要(第三取得者の一方的意思で消滅させられる)。

民396条(抵当権の消滅時効):被担保債権が時効消滅した場合の抵当権の処理。

民179条(混同):所有権と抵当権が同一人に帰属した場合、抵当権は消滅(原則)。例外:その抵当権が第三者の権利の目的である場合。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における抵当権消滅の典型論点は、①付従性による消滅(被担保債権消滅→抵当権消滅)、②代価弁済と抵当権消滅請求の区別(代価弁済=抵当権者の同意必要・抵当権消滅請求=抵当権者の同意不要)、③2003年改正で滌除が廃止され抵当権消滅請求に変更された事実、④根抵当権の元本確定前の付従性排除(例外規律)の4点です。特に②の代価弁済と抵当権消滅請求の違いは、「抵当権者の同意の有無」が決定的な区別ポイントとして頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(民378条)。代価弁済の手続:①抵当権者が第三取得者に対して代価の弁済を請求→②第三取得者がその代価を弁済→③抵当権が第三取得者のために消滅。「抵当権者の請求(主導)」が前提という点が、第三取得者の側から起こす抵当権消滅請求との大きな違い。代価(売買代金等)が対象。
  • イ: 正しい(民379条以下)。抵当権消滅請求の手続:①第三取得者が提示額を書面で通知→②抵当権者が2か月以内に競売申立てをしなければ提示額で抵当権が消滅(民386条)。抵当権者は不服があれば2か月以内に競売申立てで対抗できる。旧滌除(てきじょ:2003年廃止)の代替制度。
  • ウ: 誤り(正答)。付従性は担保物権の根本原則。抵当権は被担保債権に付従する(被担保債権消滅→抵当権消滅)。ただし根抵当権(元本確定前)はこの例外として付従性が排除されており、被担保債権額がゼロになっても抵当権は存続する。
  • エ: 正しい。物上保証人(自己の不動産に他人の債務のための抵当権を設定した者)が弁済すると、被担保債権が消滅し、付従性により抵当権も消滅する。物上保証人は弁済により主たる債務者への求償権(民351条・500条参照)を取得する。
  • オ: 正しい(民373条)。複数抵当権の順位に従った優先弁済の原則。競売代金が先順位抵当権者の優先弁済後に残余額がある場合、後順位抵当権者が順次弁済を受ける。

【根拠条文】

民法 第378条(代価弁済)、第179条(混同)、第379条(抵当権消滅請求)、第386条(抵当権消滅請求の効果)

【補足】

2003年改正で旧「滌除」廃止→「抵当権消滅請求」(民379条)に変更。代価弁済(民378条・抵当権者の請求が前提)と抵当権消滅請求(民379条・第三取得者が主導/抵当権者の承諾不要)の区別が最重要。付従性(被担保債権消滅→抵当権消滅)は担保物権の根本原則。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第378条(代価弁済)、第379条(抵当権消滅請求)、第396条(抵当権の消滅時効) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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