民法95民法物権・担保物権

行政書士 民法 問95:民法物権・担保物権

根抵当権に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 根抵当権は不特定の債権を担保するものであるため、元本確定前であれば根抵当権者が変わっても、債権者が変わらない限り根抵当権は消滅しない。
  • 根抵当権の元本は、根抵当権者または設定者が一方的に確定を請求することができるが、その請求は相手方に到達した時ではなく、相手方が同意した時から効力を生じる。
  • 根抵当権の元本が確定した後は、根抵当権は通常の抵当権と同様の性質を持ち、確定した元本とその利息・損害金についてのみ優先弁済権が及ぶ。正答
  • 根抵当権の設定においては、被担保債権の範囲と債務者、および極度額のすべてを登記しなければ効力を生じない。
  • 根抵当権の元本確定前に根抵当権者が死亡した場合、相続人が根抵当権を取得し、その死亡の時に存する債権のみが担保される。
正答:根抵当権の元本が確定した後は、根抵当権は通常の抵当権と同様の性質を持ち、確定した元本とその利息・損害金についてのみ優先弁済権が及ぶ。

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ウが正しいです。根抵当権の元本が確定した後は、その根抵当権は通常の抵当権と同様に確定した元本と利息・損害金についての優先弁済権となり(民398条の3第1項)、付従性も生じて普通抵当権に近い性質を持ちます。アは誤りで、元本確定前であっても根抵当権者が変わると原則として根抵当権は移転します(元本確定前の譲渡には制限がある)。イは誤りで、元本確定請求は相手方への通知が到達した時から効力を生じます(請求の到達主義)。エは誤りで、被担保債権の範囲・債務者・極度額は必要ですが、「登記がなければ効力を生じない」ではなく、登記が第三者対抗要件となります。

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ウが正解です。民法398条の3第1項は「根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる」と規定しています。元本確定後の根抵当権は普通抵当権と同様の性質を持ち、確定した元本・利息・損害金についての優先弁済権となります(被担保債権の特定)。

アは誤りです。根抵当権の元本確定前における根抵当権の移転については、民法398条の12以下に厳格な規定があり、全部譲渡・一部譲渡・共有等の方式によります。「根抵当権者が変わっても自動的に根抵当権が維持される」という記述は誤りです。

イは誤りです。民法398条の19(根抵当権者による元本確定請求)は到達による効力発生を前提としており、「相手方が同意した時」ではありません。元本確定請求は到達主義(相手方への到達で効力発生)です。

エは誤りです。根抵当権の設定は当事者間の合意で効力を生じ(登記は第三者対抗要件)、被担保債権の範囲・債務者・極度額は登記事項ですが、登記がなければ「効力を生じない」ではなく「第三者に対抗できない」が正確です。

オは誤りです。根抵当権者が死亡した場合、民法398条の8(相続による元本確定)の規定により、相続開始時に存する債権は当然に担保されますが、相続開始後6か月以内に「指定根抵当権者」を定める合意の登記をすれば、相続開始後に指定根抵当権者が取得する債権も引き続き担保されます(民398条の8第1項・第4項)。6か月以内に合意の登記をしないときは、相続開始の時に元本が確定したものとみなされます(同条4項)。したがって「死亡の時に存する債権のみが担保される」というオの記述は、6か月以内の合意登記による継続担保の例外を欠いており、不正確です。

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【理論的背景】

根抵当権(民398条の2〜398条の22)は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保するために設定される担保物権です。継続的な取引関係(銀行と取引先企業の継続的融資等)において、毎回の取引ごとに新たに抵当権を設定する煩雑さを避けるため、1971年(昭和46年)に導入されました。根抵当権の最大の特徴は「付従性・随伴性の排除」(元本確定前)です。通常の抵当権は被担保債権が消滅すれば担保権も消滅する(付従性)のに対し、根抵当権は元本確定前であれば担保される債権額がゼロになっても消滅せず、再び取引が生じれば担保としての機能を再開します。

【条文構造】

根抵当権の核心条文を整理します。

民398条の2:根抵当権の意義(不特定の債権・極度額)。被担保債権の範囲(一定の種類の取引・一定の原因)を定める必要がある。

民398条の3:元本確定後の優先弁済権(確定元本+利息+損害金を極度額の限度で行使可)。

民398条の4〜6:変更(被担保債権の範囲・債務者・極度額の変更)。極度額の変更には後順位権利者の同意が必要。

民398条の7:元本確定前の根抵当権の譲渡(全部譲渡・一部譲渡・共有分割)。

民398条の8:相続と根抵当権(相続開始時の債権は当然担保。相続開始後6か月以内に指定根抵当権者の合意の登記をすれば相続後の債権も担保。登記しないと相続開始時に元本確定とみなす)。

民398条の19:元本確定請求(根抵当権者から:いつでも可・設定者から:設定後3年を経過した後)。

民398条の20:元本の確定事由(競売申立・差押え等)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における根抵当権からの出題は頻度は低め(頻出度B)ですが、抵当権との比較問題が出されます。比較ポイント:①付従性・随伴性の有無(通常抵当権=あり、根抵当権元本確定前=なし・確定後=あり)、②被担保債権の特定性(通常抵当権=特定・根抵当権元本確定前=不特定)、③相続発生時の処理(根抵当権は6か月以内に合意の登記をしないと元本確定)、④極度額の機能(根抵当権者の優先弁済の上限)。「元本確定前」と「確定後」で性質が大きく異なる点が出題の核心です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。根抵当権の元本確定前における根抵当権の移転(民398条の12)は厳格な要件を要する特殊な手続きが必要。特に「元本確定前」は付従性・随伴性がないため、被担保債権だけを譲渡しても根抵当権は随伴せず、根抵当権の移転には別途合意・登記が必要。
  • イ: 誤り。元本確定請求(民398条の19)は到達主義。設定者からの確定請求は「設定から3年経過後に可能で、請求から2週間後に元本確定」という特殊な規律(設定後3年でいつでも設定者は確定を求めることができる点は重要)。
  • ウ: 正答。元本確定後は付従性・随伴性が復活し、通常抵当権に類似した性質となる。確定した元本・利息・損害金が極度額の限度で担保される。
  • エ: 誤り(正確には)。根抵当権設定契約は当事者間の合意(書面不要・登記は対抗要件)で成立する。しかし登記は抵当権設定の第三者対抗要件(民177条)であり、登記なしでは第三者に対抗できない。
  • オ: 誤り。民398条の8の相続規定では、相続開始時に存する債権は当然に担保され(相続人が根抵当権を承継)、相続開始後6か月以内に「指定根抵当権者」を定める合意の登記をすれば、指定根抵当権者が相続後に取得する債権も引き続き担保される(同条1項・4項)。6か月以内に登記しないと相続開始時に元本確定とみなされ(同条4項)、相続開始時の債権額が固定される。「死亡の時に存する債権のみが担保される」は、6か月内の合意登記で継続的担保機能を維持できる例外を欠くため不正確であり、誤りとして扱う。

【根拠条文】

民法 第398条の2(根抵当権の意義)、第398条の3(根抵当権の優先弁済権)、第398条の8(相続と根抵当権)、第398条の19(元本確定請求)

【補足】

根抵当権は「元本確定前」(付従性なし・不特定債権担保)と「元本確定後」(通常抵当権に類似)で性質が大きく異なる。この区別が出題の核心。極度額は第三者対抗要件として登記が必要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第398条の2(根抵当権の意義)、第398条の5(根抵当権の変更)、第398条の19(根抵当権者による元本確定請求)、第398条の20(元本の確定事由) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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