ITパスポート 令和3年度 問50:プロジェクトマネジメントに関する問題
自分のデスクにあるPCと共有スペースにあるプリンタの起動を1人で行う。PCとプリンタの起動は図の条件で行い,それぞれの作業・処理は逐次実行する必要がある。自動処理の間は,移動やもう片方の作業を並行して行うことができる。自分のデスクにいる状態でPCの起動を開始し,移動してプリンタを起動した上で自分のデスクに戻り,PCの起動を終了するまでに必要な時間は,最短で何秒か。 PC起動: A電源を入れる3秒(手作業), Bログイン画面起動処理150秒(自動), Cログイン操作10秒(手作業), Dログイン後アプリケーション起動処理60秒(自動) プリンタ起動: E電源を入れる3秒(手作業), F起動処理60秒(自動) 移動:片道60秒
- a223正答
- b256
- c286
- d406
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答えは a「223秒」 です。
この問題のコツは「自動で動いている待ち時間に、別のことをする」こと。
まずPCの電源を入れ(3秒)、PCが自動で立ち上がる150秒の間にプリンタまで歩いて行って起動します。
料理でたとえると、お湯が沸くのを待つ間に野菜を切るのと同じ。待ち時間をムダにしないのがポイント。
👉 覚え方:自動処理の間は“ながら作業”でOK!
こうして無駄なく動くと、合計で最短223秒になります。bやcは待ち時間に何もせず足し算してしまった答え、dはほぼ全部を順番に足した一番遅い答えです。
なぜこれが正解か
正解は a「223」。自動処理中は移動や別作業を並行できる点を使い、待ち時間を有効活用する。最短経路は次の通り。
1. A 電源ON 3秒(手作業)→ ここからB自動150秒が走り始める
2. Bの150秒の間に移動60秒+E プリンタ電源ON 3秒(計63秒)を消化、Fの60秒もこの間に開始・完了
3. デスクに戻る移動60秒。経過は3+63+60=126秒で、Bの開始(3秒時点)から150秒経過=153秒時点でBが完了
4. 戻った126秒時点ではまだBが終わっていないので153秒まで待機 → C ログイン操作10秒 → D 自動起動60秒
合計:153 + 10 + 60 = 223秒。
覚え方・ひっかけ注意
この種の問題は「手作業は逐次・自動処理中は並行可」が鉄則。bやcは並行を一部しか使わず加算、dは並行を全く使わず単純合計した最遅値。図の依存関係(A→B→C→D、E→F)を時系列に並べ、最後に終わるルート=クリティカルパスを追うこと。
理論的背景
この問題は、プロジェクトマネジメントの「クリティカルパス法(CPM: Critical Path Method)」の縮小版として理解できる。CPM はアローダイアグラム(PERT 図)上で最も時間のかかる経路(クリティカルパス)を特定する手法で、1950年代に米軍の PERT プログラム管理から発展した。
本問の特徴は「人という単一資源の制約」にある点だ。純粋な CPM は資源制約を持たない(無限に人がいる前提)が、本問では人が1人しかおらず、手作業ノードは同時実行不可という資源制約スケジューリング問題になっている。
タスクの依存構造を整理すると:
- PC ライン: A(3秒・手)→B(150秒・自動)→C(10秒・手)→D(60秒・自動)
- プリンタライン: E(3秒・手)→F(60秒・自動)
- 移動: 片道60秒(手作業相当)
手作業の合計は A+移動+E+移動+C = 3+60+3+60+10 = 136秒、自動処理は B=150秒・D=60秒・F=60秒。B の自動150秒という時間枠の中に移動往復120秒+E3秒=123秒を完全に吸収でき、F の60秒も B の中に収まる。よって B の終了(開始3秒後から150秒後=153秒時点)が律速となり、最終的に 153+C(10)+D(60)=223秒となる。
実務での使われ方
資源制約スケジューリングの考え方はプロジェクト計画の実務で広く使われる。人員が限られているプロジェクトで「自動ビルドの待ち時間に別の作業を詰め込む」「並列テストを走らせながらドキュメントを書く」といった最適化が、まさにこの問題と同一の考え方だ。PM ツール(Microsoft Project・JIRA・Wrike 等)では「資源平準化(Resource Leveling)」機能として、ひとりの担当者への過負荷を検知し、スケジュールを自動調整する機能が標準装備されている。また製造業の「段取り改善(SMED: Single Minute Exchange of Die)」も、段取り作業を「内段取り(機械停止中のみ実施)」と「外段取り(機械稼働中に前もって実施可能)」に分類し、外段取りに移動させることでダウンタイムを短縮する──この問題の構造そのものだ。
試験での位置づけ
ITパスポートではこうした「並行作業の最短時間計算」問題が計算問題として出題される傾向が強まっている。問題の型は「手作業は逐次・自動処理中は別作業が可能」という前提が与えられ、最短経路を問うもの。アローダイアグラム・クリティカルパス・フロート(余裕時間)の考え方が背景にある。基本情報技術者ではアローダイアグラムでクリティカルパスを求め、特定作業の所要日数短縮が全体工期に与える影響(TE: 最早結合点時刻、TL: 最遅結合点時刻、フロート=TL−TE)まで計算させる問題が定番。
選択肢の発展補足
選択肢 b「256秒」 は B の終了後に改めてプリンタへ移動し E を行うという、並行を一部しか活用しない計算の結果と推定される。
選択肢 c「286秒」 は移動とプリンタ起動を B の自動処理に含めず、A終了後に全て逐次実行した場合に近い値。
選択肢 d「406秒」 は全ての処理を直列に並べた場合(3+150+10+60+3+60+120=406秒)──並行処理を一切考慮しない最遅値。これは「自動処理でも待っている」状態で、実際には誰もそのような作業をしない。
誤答はいずれも「並行可能な区間を逐次に計算してしまった」ミスから生まれる。計算問題では必ず「自動処理は人を解放する」というルールを最初に確認し、時刻軸に図示してから解くのが確実な手順だ。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和3年度 問50/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。